アカデミア書店とカフェ・アアルトへ|コーヒールンバ平岡の北欧新婚旅行記〜カメラとコーヒーと嫁〜 #5

PHOTOGRAPHER PROFILE

コーヒールンバ 平岡佐智男

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コーヒールンバ 平岡佐智男

松竹芸能所属のお笑いコンビ コーヒールンバとして活動。コーヒー芸人としてテレビ・ラジオに出演する傍ら、自身のカフェブランド SACHIOPIA COFFEE (サチオピアコーヒー)」をオープン。現在、猿田彦珈琲の広報として参画。また、 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」 (バリスタ日本一を決める大会)の司会も務めるなど全身コーヒーまみれの芸人。コーヒー芸人としての出演歴 日本テレビ ヒルナンデス!」 ぐるナイ」、TBS マツコの知らない世界」、MBS 林先生の初耳学」、TBS ラジオ ジューンスー 生活は踊る」 他多数

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写真好きのコーヒー芸人・コーヒールンバ平岡さんによる連載「北欧新婚旅行記」。今回は前回に引き続き、2023年6月にフィンランドとスウェーデンを訪れた北欧新婚旅行の模様を、撮り下ろしのフィルム写真でお届けします。

北欧新婚旅行14:ビュッフェが遠い

ヘルシンキ滞在の最終日。午前中にフィンランドの古都トゥルクへ向かうことになっていた。私はヘルシンキに心残りがあってはいけないと、早起きしてカフェを巡ることにした。

まず最初に訪れたのは、絶対に行きたかったカフェの一つであるEKBERG(エクベリ)だ。

コーヒー・ルンバ平岡さんの作品3
コーヒー・ルンバ平岡さんの作品4

EKBERGは、1852年から営業しているというヘルシンキ最古のカフェ。バスやトラムでアパートに帰る際にいつも見えるこのカフェに行かずにヘルシンキを去ることは考えられなかった。

コーヒーを注文したらポットで届いた。1.5杯分ぐらい入っているだろうか。最古のカフェのおもてなしに、なんだか特別感があった。店内には地元の方も、観光客も来ていたが、地元風の方はみんな、ビュッフェスタイルで朝食を食べていた。

コーヒー・ルンバ平岡さんの作品9

私も、ビュッフェスタイルの朝食を食べたい。でも、注文の仕方がわからない。しかも、白夜で生活リズムを狂わされているので、胃もたれしていて、とても好きな料理を自由に選んで食べようというコンディションではなかった。悔しい限りだ。

参考:北欧新婚旅行5:白夜には気をつけたほうがいい

注文もしていない俺に、ビュッフェ料理の数々をフィルムに収める資格はない……と思っていたのだが、デジタルならいいかという不思議な基準で、店員さんに聞いて撮影した。

コーヒー・ルンバ平岡さんの作品1
GR3撮影 F2.8  ISO1/125  焦点距離18.3mm

ビュッフェは、かなり豪華な内容だ。フルーツやデザートも充実している。あとで調べたらこれで2000円ぐらいらしい。旅行の時ぐらいは歴史を感じながら朝食を食べるのもいいかもしれない。今度来る時はお腹のコンディションを合わせること、「朝食ビュッフェをください」の英語を話せるようにしておいた方がいい。

朝食への想いは抑えて、結局いっつもこれかいと思いつつ、シナモンロールをこれが好きですねんという顔で食べた。嘘じゃないし、とも思った。

コーヒー・ルンバ平岡さんの作品7
コーヒー・ルンバ平岡さんの作品8

北欧新婚旅行15:時間を大切にしているおじさんがカフェにいた

ヘルシンキを発つ時間が迫ってきていた。私は、エクベリでコーヒーを飲んだ後、アアルトがデザインしたアカデミア図書館の中にあるアアルトカフェに行った。かもめ食堂にも出てくる有名なカフェで、どの旅行ガイドブックにも載っているので一度は行ってみたかったのだ。

アカデミア図書館のオープンまで5分間、入り口の前で待ち、オープンと同時にアカデミア図書館に入り、直行で2階にあるアアルトカフェに入ると、どういうイリュージョンを使ったのか、もうおじさんが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。

コーヒー・ルンバ平岡さんの作品11
コーヒー・ルンバ平岡さんの作品5
コーヒー・ルンバ平岡さんの作品10
コーヒー・ルンバ平岡さんの作品6

ヘルシンキを離れるまでの時間を有効に使おうとして早起きしてカフェ巡りしていたが、そんなレベルじゃない次元で、カフェを楽しんでいる人がヘルシンキにはいる。世界の広さを感じざるを得なかった。

ヘルシンキのカフェで気がついたが、店員さんが結構喋る。日本では「私語はダメ」って言われることがあるが、店員さんがしゃべっている感じが、なぜか心地よかった。接客の自然体な感じや店員さんの会話が──会話の内容がわからないからかもしれないが──お店の雰囲気を作っているような気がした。

アカデミア図書館でノートとボールペンを買って、この日から旅の日記をつけ出した。

北欧新婚旅行16:しっかりとNOを言う

コーヒー・ルンバ平岡さんの作品12

11:36ヘルシンキ中央駅発のフィンランド鉄道(VR)に乗って、トゥルク近くのkupitta駅には13:35着のスケジュールだ。

早めに行動しようと、11時にはヘルシンキ駅についた。妻にはお土産の買い漏れや行っておきたいところがあるかもしれない、と思い「荷物番しておくから好きなところへ行っていいよ」と伝えて駅に残った。

しばらくすると、お家がなくて危ない薬をやってそうだが、服はそれほどボロボロではない若めの男性がふらふらと歩いてきて手当たり次第に駅中の人に話しかけてくるではないか。

だんだん近づいてくる……このままでは確実に、平岡まで来る。確実に。

みんなは言葉を交わさず、ススっと去っていくが、平岡は20kg超えトランクケース4個の荷物番をしているので逃げられない。とか思っているうちに、ふらふら男がやってきてフィンランド語で話しかけてきた。

私は心の底からの「NO」を人生で一番低音の声を腹式呼吸で発声した。

彼がなんて言っているかは分からない。「お前のこと殴っちゃダメだよね?」と言われていたとしたら「NO(なぐっていい)」ということになる可能性は十分にあったが、人生で一番の低音を腹の底から出していたので、気持ちや思いが伝わったのか、永遠とも思える目線の交換を経て、うんと頷いて、男はまたぶつぶつと言いながら去っていった。

これがヘルシンキ最後の思い出かぁとも思ったけど、ヘルシンキは最高だった。

ヘルシンキを離れるのがとっても寂しいけれど、次の街トゥルクも素晴らしいはずだ。

コーヒー・ルンバ平岡さんの作品2

使用カメラ:CONTAX ARIA
レンズ:Carl Zeiss Planar 50mm F1.4、Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8
フィルム:FUJIFILM フジカラー PREMIUM 400、フジカラー SUPERIA X-TRA400、Kodak ULTRAMAX 400

── 続編に続く。