セルフプロデュース力を駆使して、仕事につなげる方法

DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.22

編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが実際に出会い、影響を受けたフォトグラファーとのエピソードを明かします。今回は、業界で活躍するプロや、SNSで人気のフォトグラファーが多数在籍するCreators Base (powerd by CURBON)からフリーランスフォトグラファーの方を招き、写真をテーマにオンライン座談会を行いました。

前回までの記事

#01 個性のあるフォトグラファーが求められる、その理由とは?
#02 「対応力」がプロフェッショナルとアマチュアを大きく分ける鍵になる
#03 知識と技術の間を埋めていくのは「数」
#04 実績の少ない人がとるべき行動とは?
#05 セルフプロデュース力を駆使して、仕事につなげる方法

高木:駆け出しのフォトグラファーさんたちが自分をアピールするにはインスタグラムだけだと難しいですか?

クロカワ:僕の場合は、Twitterをメインに活動しているのですが、まず1万人くらいはフォロワーを持たないと話が始まらないなって独立する前に思ったんです。それは単純に数の暴力で、例えばフォロワー内に1%くらいクライアント候補がいるとしても、フォロワーが100人だったら1人ですし、フォロワーが1万人いれば100人となりますし。
それと、写真以外のことはアウトプットせずに、僕の写真を好きなファンを1万人集めるというのも決めていたことでした。プレゼントキャンペーンやバズるネタっぽいことをしてもそれで増えたフォロワーは僕の写真のファンではないですし、お仕事につながると思えませんし。そして、独立1ヶ月前にnoteを書いて、独立するのでお仕事くださいとプロモートしたところ、ありがたいことに独立初月は全部予定が埋まりました。ラッキーだったのは、その中に世界的な大手企業さんのお仕事があり、アートディレクションから携わることが出来まして、実績としても公開がOKだったので、それが大きい実績となってさらにその次につながったと思います。

高木:noteを書いたときに、Twitterのフォロワーは1万人いたんですか?

クロカワ:1万人いました。

高木:すごいですね。フォトグラファーさんってインスタグラムをメインに活動しそうなイメージですが、Twitterが主戦場の理由は何ですか?

クロカワ:僕はインスタグラムと相性が悪いんですよ。

高木:写真の相性が、という意味ですか?

クロカワ:SNSの更新サイクルが、ですね。インスタグラムってかなり頻度高くやらないとダメなのですが、スタジオで撮った写真を3日に1回とか2日に1回とかUPしていくのは無理なんですよね。ゆっくりレタッチもしたいですし。そうなるとインスタグラムとは相性が悪くて。Twitterは、数というより、1つのコンテンツの力によってバズったりするので、僕の場合はTwitterの方が相性が良いなという印象でした。なのでTwitterを続けています。
おかげでお仕事をご一緒させていただくクライアントさんでも、実はTwitter見てますとか、言ってくださることもあったりして、僕の出来ること、出来ないことを既に把握してくださっている方が多いという感じですね。noteは独立する前に書いたのですが、その前の2年間、カラーバックのスタジオ写真しかUPしなかったんです。その2年間で何百枚という数を上げて、完全にスタイルを絞って数の暴力で、見てくれている人が「あのカラフルな写真の人ね」って覚えてくれるくらいまでやりきった上でのことだったので、しっかり土台を固めてからスタートできたかなと思っています。

高木:なるほど、計算してここまでやってきたんですね。

クロカワリュートさんの作品

クロカワ:人間って名前で覚えられないじゃないですか。例えば「あのメガネをかけた金髪の人」とか言ったりして。クリエイティブだったら、「あのカラフルな写真の人」とか「富士山ばっかり撮っている人」とか、そういう覚え方をするなって思っているので、自分のことも他人から「カラフルな写真を撮る人」って言ってくれるように、それだけに集中してやった結果が今かなと思っています。

加藤:まさにそれで僕はクロカワさんのことを知りました。カラフルな作品の人っていう印象で。

高木:早速ここに一人居ましたね、笑。

クロカワ:キャラをつけるというか。でもそれはあくまでも表向きで、撮影の現場とかお打ち合わせの場では、違った一面や魅力をプレゼンテーションするようにしています。ディレクターとかプロデューサーも経験しているので、提案や資料作りもできますし、ライティングも含めスタジオワークも円滑に進めることができますし、ナチュラルもいけますし、ポップもいけますし、かっこいいも、可愛いもいけます、というのは内向けの提案として入れるようにしています。外向きはわかりやすい形でアピールして記憶に残りやすいようにして、コミュニケーションを取るときはビジネス的な提案だったりをするようにしています。

高橋:客観視して、どうやって自分を伝えていけるかってすごい考えていらっしゃいますよね。

高木:プロデューサーの視点ですね。

クロカワ:もうあの手この手ですよ、笑。30代で独立してフォトグラファーの業界に入り込むのは、ずっとフォトグラファーの道を歩んできた人からしたらある種の横入りだと思っているので、横入りするんだったら、あの手この手をやらないと。今までフォトグラファーの道でずっと積み上げてきた人たちと比べられたら無難にやってても絶対に勝てないですから。写真のスキルは日々頑張って磨いているものの、それ以外の今まで社会人として培ってきたものも武器にして社会の荒波と戦っていくしかないなと思っています。

高木:なるほど。すごいです。

高橋:そろそろお時間が近づいてきました。あっという間でしたね。最後に何か聞きたいことはございますか?

加藤:今って動画の需要が増えている中で、写真を起用する意図というか意味はどのようなものだと思われますか?それプラス、ディレクションする上で、これからは写真より動画をメインにしていこうみたいな考えってありますか?

高木:クライアントさんが既に決めていることが多いですかね。もちろん、だったらスチールで十分とか、せっかくなら動画にしてインスタグラムにも使いましょうよ。みたいな会話というか提案は、よくあります。でも、個人的に思うことは、動画はたった数秒でも見続けてもらわないといけないので、そこの工夫が写真とは違うなと思います。

例えばそのブランドのファンとか、待ってくれている人には有効だと思うんですよ。でも、写真には決定的瞬間って言葉がありますが、ファンじゃない人や、ブランドを知らない人にもまさに一瞬で伝えることが出来ると思っています。動画は時間をかけて伝えるけど、写真は一瞬でメッセージできる。そのプロジェクトのゴールとか、メディアとしての違いをちゃんと理解した上で、使い分けることが大事だと思っています。需要は確かに増えているので、個人的にも動画のディレクションは勉強中です。

加藤幸秀さんの作品

加藤:動画と写真の違いって、情報量の部分が大きいかなと思っています。良さってそれぞれあると思うんですけど、写真を起用する時って一瞬を撮るわけじゃないですか。その一瞬を撮って、それを消費者が見た時に、余白というか動画より逆にイメージしやすくなるかなと思いました。動画だとわかりやすいから逆に考える幅が狭まるというか…。そういった面でも写真って情報量が少ないからこそ、印象に残るというか、考えるというのが強いと思ったりしました。

高木:なるほどです。僕がデザインにときめいたのは、一瞬で刺す力があるという部分で、学生の時にそこに惹かれたんですよね。デザインと一言でいってもいろんな分野がある中で、グラフィックデザインは一瞬で伝わるというか、瞬間的に印象に残すことが、当時かっこいいなと思っていて。だから写真が一発で伝わって、余白もあって、印象を残すという部分は似ているなと思いました。

加藤:写真とデザインって似ている部分が多いかもしれませんね。

高木:動画の依頼は増えましたが、クライアントさんも、何がいいのか、まだ手探りでやっているような感覚があると思います。どこで流すのか決まっていなくて、画角の比率も、何秒の尺かも、明確に答えを持ってオーダーできるクライアントさんはあまりいないように思います。そこは我々がリードしなくてはいけない部分でもあると思います。

加藤:なるほど、まだ手探りなんですね。

高橋:クロカワさんは何かありますか?

クロカワ:今日はたくさん質問させていただきました。一緒にお仕事したら楽しそうなので、ぜひよろしくお願いします!笑。

高木:こちらこそです。本日はありがとうございました。

クロカワ:ありがとうございました。

加藤:ありがとうございました。

対談を終えて….

加藤幸秀さん
非常に面白かったです。僕自身、こういった座談会は初でしたが、参加者それぞれの経験談や考え方に触れることができ、勉強になったと同時に刺激にもなりました。貴重な機会を設けて頂き、ありがとうございました!

クロカワリュートさん
発注する側と受注する側のリアルな部分が垣間見えて僕自身も勉強になる対談でした。こういう機会がないとなかなか聞けないお話がたくさん聞けてとても楽しかったです。
みなさま、貴重なご機会ありがとうございます!

TOP PHOTO by :クロカワリュート, 加藤幸秀

座談会の連載一覧

#01 個性のあるフォトグラファーが求められる、その理由とは?
#02 「対応力」がプロフェッショナルとアマチュアを大きく分ける鍵になる
#03 知識と技術の間を埋めていくのは「数」
#04 実績の少ない人がとるべき行動とは?
#05 セルフプロデュース力を駆使して、仕事につなげる方法

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DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.23
言葉にならない“微妙な何か”を伝え、ものの見方を共有する。フォトグラファーの師弟関係


■SPEAKER

高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR

高橋 梢 TAKAHASHI KOZUE
CHIEF PROJECT MANAGER


■GUEST

クロカワリュート Twitter : @ryuto_kurokawa

加藤幸秀 Instagram : @yukihide_


株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

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高木 裕次 Twitter : @takagiyuji1