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知識と技術の間を埋めていくのは「数」 知識と技術の間を埋めていくのは「数」

知識と技術の間を埋めていくのは「数」

DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.20

編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが実際に出会い、影響を受けたフォトグラファーとのエピソードを明かします。今回は、業界で活躍するプロや、SNSで人気のフォトグラファーが多数在籍するCreators Base (powerd by CURBON)からフリーランスフォトグラファーの方と写真をテーマに、オンライン座談会を行いました。

前回までの記事

#01 個性のあるフォトグラファーが求められる、その理由とは?
#02 「対応力」がプロフェッショナルとアマチュアを大きく分ける鍵になる
#03 知識と技術の間を埋めていくのは「数」

※前回の記事で、「アートディレクターが撮影現場で細かく全部を決めるのではなく、フォトグラファーの解釈に任せて、自由に撮ってもらえるような現場をつくっている」と言う発言からの続き。

加藤:僕も最近そういうお仕事をさせてもらった経験があって、「アート的に撮ってほしい。けど、そのアートの部分はフォトグラファーさんの感性にお任せします」という感じでした。インテリアの撮影で、そういうオーダーのされ方って今までなかったなと思いました。決まった構図で撮るっていうのはあったけど、それをアート的にとなった時に、色々考えて、自分なりの答えを出して表現しましたが、その経験はすごく面白かったですね。ある種の発見でもあったし、どう取り組むかというのをクライアントと話し合いながらやれたことは自分にとっても成長になりましたね。写真自体のクオリティも上がったのかなと勝手に思っています。

高木:いいお話ですね。

クロカワ:たまにそういうお仕事ありますよね。すごくいろんなことを任せていただける、いい意味でカロリーを大量消費する案件というか。

高木:あ、やっぱりカロリー消費するんですね!

クロカワ:そうですね。枠が自由な分、アッパーが試されるというか。僕は前に、バイクの会社さんのパーツの部門の方から撮影依頼がありました。自分達の作っているものは実用性のあるものでもあり、芸術でもあるというマインドを持った会社さんだったのですが、僕に与えられた縛りは、背景色は指定されていたうえで、商品撮影っぽく撮らないでください とのことでした。アートピースとしてお任せします、と。しかも撮るモノも現場に行かないとわからないという状況で。

全員:えー!

クロカワ:当日現場に行ったら、まるでマグロの解体ショーみたいにバイクが次々バラされていって、そのパーツをその場でどう撮るか考えて撮影していくみたいな、アドリブ力やフォトグラファーとしての引き出しの数が試される経験をした思い出があります。それは事前の打ち合わせをたくさんさせていただいて、僕のリファレンスなどもみていただいて、信頼関係も構築できましたし、濃密な撮影体験でしたね。たまにご自由に撮影してくださいみたいな案件がありますが、フォトグラファー冥利に尽きます。こういう案件って引き出しが枯渇していく感覚になって、笑。それも「試されているな」と思いながらやります。フォトグラファーとしてはアートディレクターの方が絵コンテでガチガチに詰めてくる感じだとインプットの場になって引き出しが溜まっていく感覚になります。自分にないものが溜まっていって、「ご自由に」の案件の時にその引き出しから取り出してやっていくみたいな「循環」は面白いなぁと思いました。

高木:広告の場合は決まっていることが多いですもんね。

クロカワ:8割9割決まっていますね。現場では決まっていますが、事前の打ち合わせに参加させていただける場合はそこでディスカッションできるのでそういうのも面白いなと思います。

高木:なるほど、どちらも面白味がありますよね。先ほどのバイクのお話は面白いですね。

クロカワ:撮影の真横でバイクがどんどんバラされていくっていうマグロの解体ショーみたいなのはなかなかない経験でしたね。

加藤:そういうのってフォトグラファーの瞬発力も試されますよね。どれだけ日々インプットしていて、それを瞬時に出すってなったら、撮影時間も限られているし、考える時間も十分になさそうですね。

クロカワ:撮影のブースが2つあったのですが、バラされていくパーツに対してこう撮っていくから、こう組んでくださいみたいな指示をアシスタントに出して、空いているブースで組んでもらって、もう一つのブースで自分はどんどん撮影して、それをぐるぐる繰り返していました。ある種、ファッションの撮影に少し近いのかもと思いました。そういう瞬発力が試されるお仕事も面白いですね。

クロカワリュートさんの作品

高木:お二人は、師匠についたことはなく、独学で学んでこられたということでしたが、そんな中で引き出しというかインプットというか、技術的なことを含め、何をみてどう学んでいったのですか?

加藤:僕はほとんどYouTubeからですね。

高木:今っぽい!!

全員:笑

加藤:僕のやり方なので、これが正解なのかわからないですが、とにかく周りに写真を教えてくれる人がいなかったんですよ。上手くなりたいのに、どうしよう〜と。色々試しましたが、YouTubeが一番わかりやすかったです。例えば、ライティングのやり方をあげているYouTuberさんもたくさんいらっしゃって、それを全て見ていって、そのやり方を模倣しつつ撮るという感じです。それ以外だと、とにかく自分で撮ってトライ&エラーを繰り返すことですかね。例えば世にある広告写真とかを見て、どういうふうなライティングなのだろうと写真を細分化するように見ていって、こういうグラデーションはどうやったら出るのかとか自分で疑問を持って、それを再現するために撮って、の繰り返しを自分でずっとやっていく感じです。それは今の自分に結構役に立っているかなという感じですね。自分で考える力というのはそこで身についたかもしれません。

高木:なるほど。

加藤:お師匠さんがどういうスタンスでやっているのか、僕にはわかりませんが、よく聞くのが、お師匠さんに教えてもらったけど、いざそれを自分でやろうとすると出来ない、と。それは自分で何度も試していないから出来ないのではないかと。そういうのを聞くと、最終的にはやはり自分で疑問を持ってやるのが一番いいのだろうなと、聞いていて思いました。

高木:最初からプロのフォトグラファーとしてやっていこうと思って、自分で撮り始めたのですか?

加藤:そうです。初めは副業として始めましたけど、ゆくゆくはプロでやりたいと思っていました。

高木:誰かに付くと副業って形だと難しいので、一人でやられていたのですか?

加藤:それもありますが、自分でどこまで出来るのだろうって単純に思ったというか。自分の中で大きな挑戦というか。写真にすごく詳しい訳ではなかったけど、まずは一度一人でやってみて、自分でやることに限界を感じたら師匠につこうかなと思っていました。今はまだ限界を感じていないので、一人でやっています。あとは経験ですかね。経験積んで、技術磨いている最中です。そんな状況なので、自分の住んでいるところにスタジオを作りました。朝起きたらすぐに撮影できるように。

高木:笑。ストイックですね。

加藤:人とかだと、朝呼び出すのも厳しいじゃないですか。でも物撮りって自分がやろうと思えば真夜中でも早朝でもいくらでも出来るので、そういう理由から物撮りを始めたっていうのもあるかもしれません。

高木:モデル撮影よりやりやすいですよね。

加藤:そうですね。周りを気にしないで出来るので。

高木:デザインと似ていますね。元々デザインもやられていたんですもんね。

加藤:そうですね、似ていますね。細分化するっていう意味で言うとすごく似ていると思います。それまではなんとなく写真や世の中に出ているものを見ていたのですが、そこの意識を変えたって言うのは大きな変化だったかもしれません。

高木:この写真すごいって思った写真ってありますか?

加藤幸秀さんの作品

加藤:いっぱいありますけど、海外の写真が好きですね。海外の写真のグラデーションの滑らかさとか、ひとつひとつを細分化しないとなかなか見えてこない部分が違うなと。あとはインパクトの強さとかはもちろんありますよね。繊細だけど、力強いみたいな部分とか。海外の写真を見て学んでいます。

高木:わかる気がします。

加藤:SNSも海外のアカウントを見ることが多いですね。もちろん日本のデザインや写真も素晴らしいものがたくさんあって見ますけど。

高木:海外の写真って、何か違いますよね。強さとか、グラデーションの階調の出し具合って、気になりますよね。

加藤:気になりますし、綺麗ですよね。プロダクトに対してきちんと表現されているし、プラスで高級感がきちんと演出されているし、そういう部分がすごいなと思います。

高木:ありがとうございます。クロカワさんはどうでしょうか?

クロカワ:僕も師匠はいないですが、割と加藤さんと同じマインドで、やれば出来るのでは?と思ってやっています。専門学校ではジュエリーの職人を目指してやっていたのですが、金銭的な意味であまりにも厳しい業界で食べていけないと思い始めて、その時に友達から、IT業界が盛り上がっていると聞いて、そっちに方向転換してプログラマーとして働きました。その時も知識ゼロだったのですが、現場の叩き上げで勉強してプログラミングの技術を身につけて、最終的には書籍を出すまでいけました。現在はそこからまた転身してフォトグラファーになったのですが…。
そういう経験があるので、大体は「気合い」で何とかなると思っている節があるかもしれません。最終的に、とにかくめちゃくちゃやればいいというか。YouTubeもですが、僕は書籍も結構読んだり、海外のリファレンスを見たりもそうなのですが、逆算なんですよね。そういう部分はプログラミングと近いなと思う部分で、プログラミングって答えが既にあって、それに達成するまでのプロセスを作っていくというものなので、フォトグラフィーも答えがあってその道筋にどう辿り着いたのかを分析していくみたいなことって似ているなぁと。海外の写真でも、インターネットの写真でも何でもいいのですが、これは何をどんなふうにやっているのかを分析する癖はついていますね。

ただやっぱり加藤さんと一緒で、自分の手を動かさないと身につかないなと思っています。有名な写真家さんのセミナーとかにも参加してみましたが、そういうのもやっぱり知識でしかなくて、知識と技術の間にはやっぱり実践が入らないと技術にならなくて、先程加藤さんが、師匠さんから教えてもらったとしてもいざやろうとしても出来ないというのはそういうことなのだと思います。
僕も今、アシスタントとして単発でお願いしている人が5~6人いるのですが、その人たちによく言っていることは、僕からの指示で動くことはできるけれど、まっさらの白ほりでゼロから組むことは勝手が違うからねと伝えています。知識はあくまでも知識でそれ以上でもそれ以下でもなく、やっぱり手を動かして模索しないと身につかないということですよね。僕自身も昔そうだったので。まぁ気合いっていうか、やるしかないですよね。

高木:なるほど。会社で自分の後輩に「気合い」って言葉を使っちゃうと、色々問題になりそうです…笑。

クロカワ:あ、それはダメですね、笑。

高木:クロカワさんが今、代わりに言って下さったので、ありがたかったです。

クロカワ:まぁ気合いって言い換えたら「数」ということです。僕、趣味でスケートボードやっていて、YouTubeでHow to動画などを見て真似てみるのですが、実際はそのように身体が動かないですよ。知識としては知っていますが、やっぱり100回200回やって初めて体が動いてきます。やっぱり知識と技術を埋めていくのは「数」なんだなと思います。

高木:知識と技術を埋めていくのは「数」っていいですね。

クロカワ:社内で後輩の方に接する際にぜひ使ってください、笑。

高木:デザインもやっぱり良いものを見て、真似するところからスタートしますから。僕もいろんな講座とか聞いたりしますけど、実践に勝るものはないですからね。

※次回へ続く

TOP PHOTO by :クロカワリュート, 加藤幸秀

前回までの記事

#01 個性のあるフォトグラファーが求められる、その理由とは?
#02 「対応力」がプロフェッショナルとアマチュアを大きく分ける鍵になる
#03 知識と技術の間を埋めていくのは「数」

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DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.21


■SPEAKER

高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR

高橋 梢 TAKAHASHI KOZUE
CHIEF PROJECT MANAGER


■GUEST

クロカワリュート Twitter : @ryuto_kurokawa

加藤幸秀 Instagram : @yukihide_


株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

HP : https://d-b-s.co.jp

高木 裕次 Twitter : @takagiyuji1

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