個性のあるフォトグラファーが求められる、その理由とは?

DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.18

編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが実際に出会い、影響を受けたフォトグラファーとのエピソードを明かします。今回は、業界で活躍するプロや、SNSで人気のフォトグラファーが多数在籍するCreators Base (powerd by CURBON)からフリーランスフォトグラファーの方と写真をテーマに、オンライン座談会を行いました。

この座談会の記事

#01 個性のあるフォトグラファーが求められる、その理由とは?
#02 「対応力」がプロフェッショナルとアマチュアを大きく分ける鍵になる
#03 知識と技術の間を埋めていくのは「数」

オンライン座談会の様子

高橋:これまでのDESIGNER MEETS PHOTOGRAPHERは対談形式でやっていましたが、今回は少し形を変えまして、座談会という形でできたらと思っております。よろしくお願いいたします。

高木:まずは自己紹介から始めましょうか。ダイナマイトブラザーズシンジケート、クリエイティブディレクターの高木です。キャリアとしては印刷会社のデザイナーからスタートしました。クライアントワークの中には百貨店の仕事もあったので写真撮影の仕事も結構やりました。その後、ブランディングと広告の仕事が多いグッドデザインカンパニーでの経験を経てこの会社に入社し、現在10年目になります。撮影のディレクションは、ファッションが多いですが、フードや化粧品などのプロダクトから著名人のインタビューやアーティスト撮影まで、幅広く行なっています。

クロカワ:クロカワリュートです。フリーランスのフォトグラファーです。独立して4年目になります。経歴としては、ジュエリーを作る職人の専門学校を卒業後、プログラマーやディレクター職を経験し、独立する直前は広告代理店でプロデューサーをやっていました。インターネット業界を渡り歩いてきたうえでのフォトグラファーという感じです。撮影の領域としては、広告関係をメインにやらせてもらっています。本日はよろしくお願いいたします。

加藤:加藤幸秀と申します。私はフリーランスフォトグラファーになってまだ1年目なので歴は浅いのですが、写真の歴で言うと5〜6年になります。現在は大阪に住んで活動しています。以前は化粧品のパッケージメーカーに勤めており、そこでデザイン関係や商品撮影を担当しておりました。そこから写真にのめり込んでいき、1年前に独立したという流れになります。現在の撮影領域は、化粧品の商品撮影を中心に、その他インテリア、フード、プロフィール撮影などもやらせて頂いております。よろしくお願いいたします。

高木:クロカワさんも加藤さんも色々な経験されて、フォトグラファーに転身されていて、経歴が面白いですね。そしてお二人とも師匠についたりなどはせず、独学で学ばれてここまできているというのがすごいです。クロカワさんは広告代理店でプロデューサーとして働かれていたということで、クライアントの気持ちやニーズを深く理解していらっしゃるのではないでしょうか?

クロカワ:広告代理店でのプロデューサー職の他に、オウンドメディア全盛期の時にコンテンツディレクターなどもやっていたので、広告主(大元のクライアント)への提案や、どういう流れでフォトグラファーに仕事がくるのかなど、そういうことはわかります。さらに、フォトグラファーに発注する立場にもいたことがあるので、発注する人の目線もなんとなくわかったりします。

クロカワリュートさん

高木:そうですよね。では早速ですが、本日のテーマ「フォトグラファーに求めるものについて」という話に入っていきましょうか。

最初の質問「この先、生き残れるフォトグラファーは、スキルはマルチだが尖った個性はあまりないフォトグラファーか、個性的で得手不得手のはっきりしているフォトグラファーか?」というのがありましたが、これはクロカワさんからの質問ですか?

クロカワ:多分僕かな?言いたいこととしては、職人気質で何でも撮れるというスキル重視なフォトグラファーって昔から一定数いらっしゃると思うのですが、僕なんかは作風を絞って、SNSで活動している最中です。得意不得意や自分の作風がはっきりしている、尖ったスタンスの方がSNSでは多いし増えていると思います。フォトグラファーを発注する方の目線として、実際のお仕事の現場では、作風などよりもマルチに何でも一定数任せられるような方が助かるのか、それとも時代の流れと共に、作風が強いとか得手不得手がはっきりしている方が、クライアント提案の際なども含めて、アサインしやすいのか、フォトグラファーの尖り方という意味でどういうふうにお考えですか?

高木:僕は個性がある方がいいかなと思っています。そっちの方が楽しめるというか…より刺さる表現をしてくれると思うので。ただ、僕としてはその個性を本当に活かせるのか、ちゃんと見極めないといけないなとも思っていて。
コンセプトはもちろん、何をしたいのかをクライアントとしっかり握ったうえで、「この世界観なら〇〇さんにお願いしたら、きっとこういう表現してくれそうだ」みたいなことを見極めて正しく判断しないといけないと思います。そこが握れていないと、実際の撮影現場で失礼なお願いをすることになってしまうので。ただ、1日の撮影で全然表現の違う撮影を複数しなくてはいけない場合は、引き出しのたくさんあるフォトグラファーに頼むこともあると思います。それができるというのも個性の1つだし、技術の高さゆえだと思います。
他のアートディレクターの案件ですが、世界中のゴルフ場を撮影していることで有名なフォトグラファーとの仕事があって、撮ってもらいたいクラブからの依頼も多いみたいです。

高橋:ゴルフ場写真の開拓者ですね。

クロカワ:すごいですね。

高木:なので、作風を絞るというのもありますが、被写体と絞ると言うのもアリかもですね。生き残る/生き残らないと言う表現が適切とは思いませんが、個性の出し方としてすごく面白いなと思いました。

クロカワ:「〇〇と言ったらこの人」みたいになった方がいいのでしょうか?

高木:仕事以前にそのモチーフが好きだとか、こういう写真が好きという純粋な話かなと思います。以前にもENCOUNTER magazineの記事に書いたのですが、ポートフォリオの中に、クライアントワーク以外に入っているプライベートワークは、特に気にして見てしまいます。プライベートワークにその人のオリジナリティが表れるので、そのノリでクライアントワークもやってもらったら、表現がジャンプしそうな気がしています。なので、いつかそういうお仕事をお願いできないかなという目線で見ています。

クロカワ:なるほど。ではフォトグラファー目線として、ポートフォリオを作る際は、個性の見えるプライベートワークは必須と言うことですね。

高木:僕は興味がありますね。プライベートワークにリンクする仕事をした方が、フォトグラファーもテンション上がると思うんですよ。

クロカワ:得意なの、来た!みたいな。

高木:ですね。そういう仕事をアサインできるといいなと思っています。自分の昔の経験談ですが、仕事ではポートレートを多く撮っている方ですが、プライベートワークでは山の写真を多く撮っている方がいらっしゃって。話を聞くと、趣味が登山らしく、雪山にも頻繁に登っていて。ちょうどその時アウトドアブランドの仕事があって、山の奥深くでのファッションシューティングをイメージしていました。それで、これはピッタリだと思い、お願いしたらとても喜んでくれました。ロケハンも積極的に行ってくれて。そういう座組みができるといい仕事ができると思っています。

クロカワ:加藤さんも得手不得手があるとは思いますが、得意な表現を尖らせようというマインドなのか、マルチにいこうなのか、どういうふうに考えていらっしゃいますか?

加藤幸秀さん

加藤:僕の場合は、1つを極める方向にいっています。化粧品撮影とかのライティングの技術を今は伸ばしている最中です。そこを軸にしつつ、他の案件が入ればそれもさせていただくという感じですね。1つ突き抜けていると、そこで話題になって、この人はライティングがしっかりできるなら、被写体を人物に変えたらどうなるだろうとか、そういう需要というか、別のベクトルに派生することもあるのかなと思いました。
僕から聞きたい質問は、料理撮ってる人が人物を撮ったらどうなるんだろう?って、興味を持って起用するみたいなことはありますか?

高木:ありますよ。それが出来るADっていいなと思います。「この人がこのモチーフを撮ったら面白くなるぞ」って想像できるアートディレクターは優れたアートディレクターだと思っていて、それは「新しい引き出しを出す=まだ世の中に出ていない、新しい表現や新しいコミュニケーションになる」ということだから、見た人に新鮮な印象を残せると思うんですよね。逆にやっちゃいけないことは、その人の過去の作品をなぞって、「こういうのが撮りたいです」というのがアートディレクターとしてはダサいというか、面白味がないなと思います。その時点で世の中にとっては、古いコミュニケーションになるので、フォトグラファーがどれだけ自由に遊べるか、遊んでくれるかを意識しています。

加藤:なるほど。過去にやったことをもう一度再現したとて、という感じになると。

高木:そうですね。さっきの話と逆になるのですが、そうするとフォトグラファーさんにとってもあまり面白くないと思います。新しいチャレンジがそこにはないわけだし。

クロカワ:昔、そういうチャレンジ系のお仕事が来たことがあります。普段は、人物や商品をスタジオでライティングを組んで撮影してその写真をUPしていたんですが、ある時某大手の会社さんから、温泉宿を撮る話を頂きまして。その旅館とクライアントさんに、「僕、そういうの撮ったことないですけど大丈夫ですか?」と聞いたら、普段そういう撮影をしない人が、温泉をどう切り取るのか見てみたいとのことでした。その依頼は自分の中でも驚きでしたね。

加藤:やっぱりそういうことがあるんですね。

クロカワ:レアなケースかもしれませんが、ありましたね。

高木:全然あると思いますし、そういう視点で探しているというのはありますね。

※次回へ続く

TOP PHOTO by :クロカワリュート, 加藤幸秀

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「対応力」がプロフェッショナルとアマチュアを大きく分ける鍵になる

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#01 個性のあるフォトグラファーが求められる、その理由とは?
#02 「対応力」がプロフェッショナルとアマチュアを大きく分ける鍵になる
#03 知識と技術の間を埋めていくのは「数」

■SPEAKER

高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR

高橋 梢 TAKAHASHI KOZUE
CHIEF PROJECT MANAGER


■GUEST

クロカワリュート Twitter : @ryuto_kurokawa

加藤幸秀 Instagram : @yukihide_


株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

HP : https://d-b-s.co.jp

高木 裕次 Twitter : @takagiyuji1