【レタッチを学ぶ】レタッチャーが新たなヴィジュアル表現をするために必要なこととは?

DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.15

編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが実際に出会い、影響を受けたフォトグラファーとのエピソードを明かします。今回は、写真のレタッチをテーマに、株式会社ヴィータに所属しているレタッチャー、志村亮さんを迎え対談を行いました。


高橋:志村さん本日はありがとうございます。まず広告レタッチの基礎的ところからお話を伺えたらと思っています。志村さんはレタッチャーとして活躍されて、現在何年目ですか?

志村:19歳からアシスタントとしてやっているのですが、それも含めると16年目になります。元々キャラクターデザインを学べる専門学校に入ってIllustratorは使っていたのですが、Photoshopは使ったことがなくて。でも興味があったので使い方を覚えたいと、色々なことをしながら可能性を探っていたら、うちの会社(ヴィータ)のアルバイト募集を見つけ、縁がありアルバイトとして採用されました。それからPhotoshopの使い方を勉強して覚えていくうちにすごく楽しくなって、そのままヴィータに正式に入りました。

高木:なるほど。では志村さんはずっとヴィータに所属していらっしゃるのですね。

志村:そうですね。今では僕が一番社歴が長いです。

高木:それはすごい。レタッチって昔からある職業ではないと思うのですが、いつぐらいから仕事として認知されてきたのでしょうか?

高橋:デジタルが主流になるくらいですかね?

志村:そうですね、広告業界で役割としてできてきたのはおそらく20年くらい前かと思いますが、僕が15~6年前にレタッチャーとしてキャリアをスタートさせた時は知名度がほとんどありませんでした。

高木:そうですよね。

志村:「画像処理」と言って、やっと仕事内容を理解してもらえる、みたいな感じでしたね。最近は、PhotoshopのTVCMが流れるくらいなので、レタッチの知名度も上がり、レタッチャーも一般的に認知されるようになってきたと感じています。

高橋:Photoshopの認知度が上がってきた流れとレタッチの潮流が重なっているんでしょうか。

志村:そうですね。今はさらに進んで、携帯のアプリでも写真加工が手軽にできますよね。写真を加工するものという意識がそこまでない人たちでも携帯のアプリで簡単に加工しています。

高木:iPhone、余計なことしないで〜って思いません?(笑)

志村:(笑)iPhoneって精度がすごいんですよ。テンプレートを使ってパパッと作ったものがすごく良かったりする時もあります。レタッチを根詰めて作業すると綺麗にはなるのですが、逆に整頓されすぎて強さがなくなってしまうこともあって…。最初の「粗さ」の中にある良さを超えられないことがあったりします。

高木:わかります。僕がアートディレクションしている『美術手帖』の最新号が五木田智央さんの特集なのですが、インタビューで「とにかく下手になりたい。」って仰っていたことを、今思い出しました。

志村:誤解を恐れずに言うなら、例えば合成の場合「綺麗に調整して切り取って…」とかではなく、精度は完璧ではなくてもとりあえずラフにパッと作ったものが、すごくカッコ良かったりする時があります。そうなると、本番のレタッチ作業をする時に、そのパッと作ったものを超えなきゃいけないというハードルが設定されます。

高木:デザインのレイアウトもとりあえずざっくり組んだ時の方が良かったりする時もあるので、わかる気がします。バッとスピーディーに一度やって、その後微調整していき、どんどん細かい部分にフォーカスして進めた後、引いた目線で見た時、「あれ?最初の時の方が良くないか?」となったりしますよね。

志村:同じですね。すごくよくわかります。レタッチャーは0から1を作るのではなく、1からプラスした何かを作る仕事なんです。自分の味だけ出そうとしても上手くいかないですし、皆さんがベースとして作ったものに何か加えていく作業なので、もともと作られたベースのクオリティが高かったら、そこも超えていかなければいけないハードルになります。

高木:それは志村さんがそのビジュアルで何を表現したいかをきちんと理解しているから、判断できることだと思います。

志村:何を表現したいのかという読み取りはするように努力しています。

髙木:そのお話を詳しく聞きたいのですが、さっき仰っていたようにレタッチャーは0から1を作るわけではない。フォトグラファーが何かしらの意図を持って撮影して、きっと商業的なものだからクライアントも当然いるわけで、そのクライアントも目的を持ってその写真を撮ってもらっている。そういうことってレタッチャーの方はどれくらい知りたいというか、消化したいのかなと気になっています。レタッチという仕事とは一見関係ない要素でもある気がするんですよね。フォトグラファーから、「ここの色味強くして」とか、「高級感出して」みたいな指示があればある意味成立する仕事というか…。

志村:基本的には撮影の打ち合わせには参加しないので、撮影されたものが届いてからスタートします。でもたまに撮影現場に行かせてもらうと、現場の空気感や、皆さんが大事にされているものが共有でき、一歩先に進んだ状態でスタートできると感じます。現場を共有できるといろんな気づきもあるし気を回せるので、より良いものが作れるのではないかなと思います。
レタッチの仕事って、「何でこういう撮り方しているのだろう?」と考えることからスタートするのですが、撮影現場に行くと撮り方の過程や現場にいる人たちの交流も見えますし、どういう部分で撮影がつまずいたか、なども自然と知ることができるので、レタッチ作業する際に自分が意識するところも同じ場所に向いてスムーズに作業ができたりします。

高橋:ビジュアルの最後の仕上げ部分を担う役割としてレタッチャーさんの力って大きいと思います。だから現場にいていただくことも重要だなと改めて理解できました。

高木:現場に立ち会いに来ることは、レタッチャーさんにとって無駄なことなのでは?という意見がデザイナーから持ち上がったことがあります。現場ではやることがあまり多くないと思うので、そんな中で長時間の撮影に付き合わせているのは申し訳ない、という意味だと思うのですが。実際のところレタッチャーさんってどう思っているんですかね、って話をしていたところでした。丸一日ずっと現場にいるのはしんどいかもしれませんが、今のお話を聞く限り、現場の立ち会いは意味があるということですよね。

志村:人にもよるかもしれませんが、僕の場合はコミュニケーションを取りながらやっていきたいタイプです。ちょっとした会話からでも好き嫌いや、趣味嗜好が垣間見える時がありますし、それをベースに、多分こういう感じが好きかなとイメージしながら、いくつか作ってみたりします。逆にコミュニケーションをとったことないフォトグラファーやアートディレクターの方と初めて仕事する時はかなり緊張します。事前に自分なりに情報を調べたりなど準備を心掛けます。

高木:そこで傾向というか、求められていることを考える、ということですか?

志村:はい、そうです。初めてのお仕事をするには、少しでも情報があった方がいいなと思って。

高橋:私たちが広告撮影の案件を進める際は、求められる世界観とかクリエイティブに沿ってフォトグラファーをキャスティングするのですが、その先のレタッチャーまで毎回直接関与できていなかったりします。お仕事の依頼はどのようにくるのでしょうか?

高木:想像ですけど、広告業界はレタッチャーの指定もありそうですけど…。

志村:最初のきっかけはフォトグラファーの方が多くて、そのフォトグラファーを起点にいろんなアートディレクターの方とお仕事をご一緒させていただきながら広がっていく感じです。例えば、以前やったことのある案件で、フォトグラファーは違うけれど、お願いできますか?というような依頼が来ることもありますが、基本はフォトグラファーからですね。一番距離が近いですしね。

高橋:なるほど。志村さんがレタッチ作業をする際に気を付けていることやこだわりなどももっと聞いてみたいです。

※次回へ続く

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DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.16
黒子に徹するレタッチャーの仕事術とは。

【レタッチャー対談/連載記事】

#01 【レタッチを学ぶ】レタッチャーが新たなヴィジュアル表現をするために必要なこととは?
#02 【レタッチを学ぶ】黒子に徹するレタッチャーの仕事術とは。
#03 【レタッチを学ぶ】レタッチャーの写真との向き合い方。

Photo by : Tameki Oshiro


■SPEAKER

高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR

高橋 梢 TAKAHASHI KOZUE
CHIEF PROJECT MANAGER


株式会社 ヴィータ

従来のレタッチ=画像処理にとどまらず、デジタルを使ったアナログ的な表現や、より洗練された手法で、新たなビジュアル表現の制作を行なっている。現在16周年目も迎え、業界でもトップクラスのレタッチャーが所属するクリエイティブカンパニー。

http://vita-inc.com/


株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

HP : https://d-b-s.co.jp

高木 裕次 Twitter : @takagiyuji1