【川島海荷×増田彩来 対談】
2年間で少し強くなった姿を見て感じて欲しい
写真展「直線のうみ」インタビュー

2024年3月29日(金)〜4月1日(月)目黒区のOFFICE C/Oにて開催される、女優・川島海荷と写真家/映像作家・増田彩来による写真展「直線のうみ」。およそ2年間にわたるプロジェクトはどのように生まれ、どのような想いが込められているのか……写真展を目前に控えた二人に「直線のうみ」への想いを詳しく伺った。

>《3月29日より》女優・川島海荷を増田彩来が2年間撮り続けた写真展“直線のうみ” @目黒「OFFICE C/O」

PROFILE

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川島海荷

俳優。1994年3月3日生まれ。埼玉県出身。
2006年、ドラマ『誰よりもママを愛す』で子役デビュー。07年のドラマ『役者魂!』でもレギュラー出演し、注目を集める。同年、映画初出演。ドラマ『ブラッディ・マンデイ』(08年)、NHK大河ドラマ『天地人』(09年)など話題のドラマに出演。『カルピスウォーター』や『フレッツ光』のCMでも活躍。09年のドラマ『アイシテル~海容~』で新人賞を受賞。10年、映画『私の優しくない先輩』で主演。ガールズユニット・9nineのメンバーとしても活動し、16年7月に脱退。16年10月から19年3月まで情報番組「ZIP!」の総合司会を務めた。

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増田彩来

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増田彩来

写真家 / 映像作家。2001年9月12日生まれ。東京都在住。
企業広告、アーティスト写真、CDジャケットなどのスチール撮影担当。
2021年に個展「écran [エクラン]」を開催し、同年11月には「渋谷芸術祭」の公式プログラム「渋谷ストリートギャラリー」にて、渋谷各所のデジタルサイネージに、作品「深呼吸の在処」を掲載。
「写真を通して、もっとあなたを知りたい」をコンセプトに、Photo relay project「so much more」を開始。
映像作家としてもアーティストのミュージックビデオの監督・カメラマンを務めるなど、活動の幅を広げている。

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——お二人の出会いは2021年の増田さんの写真プロジェクト「so much more」の撮影と伺いましたが、初めて会った時のお互いの第一印象を教えてください。

川島 彩来ちゃんの第一印象は刺激的というか、自分にとってすごく刺激になる人だなと思いました。何事に対しても好奇心が旺盛で、一緒にいると自分も刺激されるし、当時二十歳だった彩来ちゃんのフレッシュさがすごく印象的でした。
最初はなんかもう吸い取られるんじゃないかと思うくらいすごくパワフルでびっくりしたのですが、そのうちに自分も感化されて、「私も負けないぞ」という気持ちが芽生えましたね。

増田 嬉しいですね。

——逆に増田さんから見た川島さんの第一印象はどうだったのでしょうか?

増田 もちろん元々“川島海荷”という存在は知っていて、撮りたい、会ってみたい、 話してみたい、何かをしてみたいと思っていました。実際にお会いした第一印象は、一言で言うと、すごくエネルギッシュな方だなと感じました。

川島 お互いエネルギッシュだと思ってたんだ。

増田 海荷さんは想像の100倍喋るので(笑)。

川島 確かにそれはよく言われる!

増田 テレビや写真で見ている印象だと、少しおとなしめな雰囲気をされているじゃないですか。でも実際に会った時のその元気さが私はすごく好きだったんですよ。私自身も元気なタイプだとは思うんですけど、私が持っている元気さとは違う種類の、まるで太陽みたいなエネルギッシュさが魅力的で、そこにとても惹かれたのを覚えています。
また、海荷さんは一つ一つをすごく真っ直ぐに見つめている、不思議な真っ直ぐさを持った人だなと感じました。だから、「so much more」の撮影終わりに、「また撮りたい、もっと知りたいな」と思ったのを覚えています。

川島 なんか照れくさいですね。

——「直線のうみ」というプロジェクトはどのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

川島 私が20代後半の時に、周りの人達が「30歳に向けて何かやりたいね」と言ってくれていて、その中で彩来ちゃんも協力してくれることになり、じゃあ写真を撮り続けようと、しっかりと時間をかけて、20代後半の変化を写真で残しましょうと言ってくれたので、そこから始まりました。

増田 ちょうど海荷さんが28歳になったあたりのタイミングでしたね。

——「直線のうみ」という言葉は、2022年の9月頃にはすでに使われていたかと思うのですが、この「直線のうみ」というタイトルはいつ、どんなタイミングで生まれたのでしょうか。

増田 撮影が始まって1年ぐらい経ってから、プロジェクトの名前を決めようという会を開いたんです。その時色々な案が出てきて、その中の一つが海荷さんから出てきた「直線のうみ」ですね。

川島 最初に提案した時はまさか採用されるとも思ってなくて、 撮影で海に行ったことが印象的だったのと、私の名前にも「海」が入っていることもあり、こんなのもあったら面白いなっていうくらいの気持ちで言ってみたんです 。海が直線なんてありえないけど、直線のうみとかどう?みたいな感じで、そしたらみんなから「いいじゃん」という反応をもらえて。あとは、自分としても真っ直ぐいろんなことを見たい、生き方として真っ直ぐいたいという気持ちを持っていたので、そういった意味も込めることができて良いかなと思いました。

増田 その話もすごく素敵だと思いましたし、海は今まで撮ってきた中でのキーワードにもあったので、とても良いタイトルだなと思いました。

川島 あまり手応えはなかったんですけど、みんなが良いって言ってくれたので「直線のうみ」に決まりました。ありがたいですね。

——今回、その「直線のうみ」の発表の場を写真展にした理由っていうのはどこにあるのでしょうか。

増田 アウトプットは何がいいのかというのを話し合う中で写真展が出てきたという形ですね。

川島 写真展は初めてですし、特に今回は自分から動いて「こういうのがやりたい」というイメージをみんなで共有しながら作り上げるというので、自分の中でもチャレンジングな取り組みでした。私自身も30歳という節目で新しいことに挑戦したいという気持ちがあったので、彩来ちゃんが普段写真家としてやっていることに参加させてもらうことをすごく嬉しく思います。写真集も作るのですが、見てくれた方の中に何か残るものにしたいなと。

増田 今回の写真集は2冊で1つという形にしようと思っているんですけど、1冊がこの2年間撮り続けた写真をまとめたもの。もう1冊が「直線のうみ」の1つの答えとして、最後に北海道の知床半島に行って撮った写真たちをまとめたもの。この2冊を組み合わせて、「直線のうみ」という写真集になる予定です。

川島 いいものを作りたいという、メンバー全員の熱量がすごくあるので、それが形に残るっていうのは、すごく嬉しいですし、見てくれた方の反応も今からとても楽しみですね。

——今回のプロジェクトで撮影された中で1番心に残っているエピソードやお写真を教えていただけますでしょうか。

川島 私は福岡の糸島で写真を撮った時がすごく印象に残っています。初めてしっかり旅の写真を撮ってもらったんですね。私が運転席で彩来ちゃんが助手席に座って喋ったりしながら撮影に向かって。海でも撮ったのですが、彩来ちゃんから「5分ぐらい喋らないで撮りましょう」みたいな提案があって、5分ぐらい喋らないでただただ歩くという姿を撮ってもらったんですよね。 

川島 いつもだったらどこか少し繕っている部分があったのですが、 その瞬間は本当にフラットな状態でいられたと思っていて、この時くらいから自分の中で彩来ちゃんとの距離が近くなったというか、信頼関係ができてきたと感じるようになりました。すごく印象的な撮影だったと思います。

増田 嬉しい。本当に綺麗でしたよね。

川島 ここで撮った写真も印象的で、夕方なのに流れ星みたいなのが見える素敵な写真なんですよ。え、これ描いてないよね?(笑)

増田:描いてないですよ(笑)映像にも写っています。

——増田さんはいかがでしょう?

増田 「直線のうみ」の答えとして、最後に撮影に行った北海道の知床が一番印象ですね。今まで海荷さんとたくさんの作品を残してきて、最後2年が終わる時に、じゃあ何を撮るべきなんだろうと考えました。私は何かを演じている海荷さんではなく、ありのままの海荷さんを撮りたいなと思ったんですよね。撮影の度にどんどん海荷さんのことを好きになっていくし、リスペクトする気持ちも高まってきて、川島海荷という人間をそのまま残したいなと強く思ったんです。そう思った時に、テーマは旅だなと思って。

“人生を撮る”って、私は旅がすごく近いことだと思っているので、旅の時間を切り取ることで海荷さんを伝えられるんじゃないかなと。海荷さんにこの時間で何を残したいか聞いたところ「見てくれた方に強さを感じてもらいたい、そこをちゃんと写真に残せたらいいな」って言ってくれたんですよ。私はすごくそれにびっくりしたというか、今までの海荷さんだったら多分言わなかったから。

川島 確かにね。2年前だったら、全然そんな言葉出てきてないかもしれない。結果その時の写真がメインビジュアルになったもんね。

増田 そうなんです。基本的には“写らないまま写る”をして撮影したのですが、1回だけ“写る”をして撮ろう、その撮影を「強さ」をテーマにやろうという話をしたんです。 それで、その時に撮った写真がメインビジュアルの写真です。知床の3日間だけでもすごく表情が変わっていって。その流れも見て欲しいなと思いますね。

川島 この時はもう制作メンバー全員の「いい作品をみんなで作ろう」っていう想いの強さもあったし、本当に景色の素晴らしいところに行って、天気も良くて、だからこそ景色に負けないというか、自分がそこでちゃんと負けずに立ってなきゃいけないなみたいな気持ちもあって……知床の写真はそういったみんなのパワーの相乗効果でできた写真が多いと思います。

——2年間撮り続ける中で増田さんが感じた川島さんの変化などはありましたか?

増田 1番変化があったのは写真の写り方かなと思います。
海荷さんが北海道で「最近自分に自信を持てたというか、マインドがちょっと変わった」と話してくださったじゃないですか。それがすごく写真にも出ていると思っていて。

最初の頃は“整った瞬間”を見せるのがすごく上手だったんですよ。 でも私はその後のちょっと抜けた感じの表情とか、人間らしいところがすごく海荷さんの魅力だなと思っていたんです。 その瞬間を撮りたいなと思っていたのですが、それが今はすごく自然に撮れるんですよね。

これって私の技術とかそういう話ではなくて、海荷さんの気持ちの話だと思うんですね。自分の愛し方が少しだけ変わったのかな?今の海荷さんが出会った頃の海荷さんより、より素敵だなっていうのが撮りながら一番感じていることかもしれません。

川島 そうですね。2年前の自分と今の自分はなんか感覚が違うなというところがあって、何か決定的なタイミングがあったという訳ではないんですけど、多分徐々に変わっていったことがあるんだと写真を見て改めて思いました。彩来ちゃんって、20代後半で突然現れた人物なんですけど、最初はちょっとオフィシャルっぽい自分しか見せられてなかったのかなと自分でも思っていて。

でも、私の人間らしさだったりを撮りたいって思ってくれていたり、なんか彩来ちゃんに撮ってもらうときって、探られるというか、探ってくれるので、なんか自分と向き合う瞬間なのかもなと思うこともあって、最初より今の方が自分と向き合えているのかなって思いますね。説明が難しいのですが、成長とも違う感じで、これを変化って言うんですかね。

最初は自分をさらけ出すことの怖さがあったのかもしれないですが、徐々に自分はこれでいいんだって、信じられるようになりました。

——最後に、写真展に来てくれた方にどんなことを感じて欲しいですか?

川島 「直線のうみ」という、彩来ちゃんが 2年かけて撮ってくれた作品の集大成、彩来ちゃんの写真の世界観をぜひ見て欲しいですし、写真を見て何か感じ取ってもらえたらと思っています。そして、一番は集大成として行う写真展なんですが、見終わった後に「続きがまた見たいな」って思ってくれたら嬉しいです。

増田 海荷さんが「見てくれた人に生き方に共感してほしいし、作品を見て元気になってもらえたら嬉しい。私も頑張ろうって思ってもらえたらいいな」ということを不意に言っていた時があって、その言葉が結構私の中で印象に残っているんです。そして、その考えを今回展示を作る上では大事にしています。

私個人としては、すごく愛している作品だから、ただ見てほしいという素直な感情なんですよね。私はこういう瞬間が好きだから、写真撮っていると思うし、人間を撮っていると思うんです。それをただ、よければ受け取ってくれたら嬉しいなという気持ちでいます。

川島 彩来ちゃんの写真って眩しさがあるというか、パワーがあると思うので、ぜひそれを見てもらって、それぞれで何かを感じてもらえたら嬉しいなと思います。

▼Information

Umika Kawashima × Sara Masuda Photo Exhibition
“直線のうみ”

【日時】2024年3月29日(金)〜4月1日(月) 10:00-20:00
【会場】OFFICE C/O 〒153-0042 東京都目黒区青葉台1丁目11−19 ヴィラ青葉台 3F(中目黒駅、代官山駅から徒歩10分)
【入場料】500円(税込)