私が出会ったフォトグラファーの仕事術。現場の空気づくりにこだわる理由とは (前編)

DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.03

編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが実際に出会い、影響を受けたフォトグラファーとのエピソードを明かします。 

前回の記事

>>>1枚の写真から仕事につなげる。現役デザイナーが語るフォトグラファーの探し方(後編)
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.02



その場の空気を作れるスキルも、フォトグラファー選びの理由の1 つ。 

高橋:撮影して良かった、やりやすかったフォトグラファーはいますか?

前川:直近の話では、ある商業施設のフードビジュアルを撮影したときの話なんですけど、担当アートディレクターが当日別撮影に行くことになってしまって自分1人で行くことになりプレッシャーをすごく感じていたんです。
それをフォトグラファーさんが現場で察してくださって、そのフォトグラファーさんの観点と僕の観点の重なりを探してくださっているのをすごく感じたんです。 寄り添ってくれているのが伝わって、とても心強かったです。人柄ですね。懐が大きいというか、やりたいことを察してくれて、どう思うか丁寧に聞いてくれて感動しました。

高木:僕もその同じフォトグラファーでまったく同じ経験があるよ。撮影終わった後、「どうだった?高木さんが思っている写真、ちゃんと撮れた?」っ て聞いてくれて、「もっとああしたい、こうしたいとかあったら言ってくれて いいから」って声をかけてくれた。アートディレクターやデザイナーがどうしたいかを大事にしている。そういうのが感じられて一緒に仕事できて良かったと感じました。

高橋:ほかにはどんな経験ありますか?

高木:ビューティーブランドの案件で一緒に仕事をしているフォトグラファー の方なんだけど、前もって準備してくれる人なんだよね。

高橋:私も一緒に何度かご一緒している方ですね。テストシュートとか、言わなくてもやってくれて感動しました。

高木:軽い口調で「土日のうちにやっておきますね」と言って準備してくれる。普通、アートディレクターやデザイナーが現場に行ったら撮影が始まるけど、その方の場合、スタートの時点である程度絵ができあがっていて、そこからブラッシュアップしていきましょうってなるね。

高橋:撮影当日に行ったら、もう1カットはできていて最初驚きました。

高木:プロの仕事だなと思う。マーティンさん(マーティン・ホルトカンプ  vol.1参照)は、外国の方だから日本語が流暢じゃなかったけど、隙間時間に自分なりの視点で撮影していて、いろいろ提案してくれた。本当に写真が大好きなんだなって思った。 ファッションの撮影で印象に残っているのは、スタイリストさんやヘアメイクさん含めて、その場のテンションとか空気感を作ってくれる方。
場を盛り上げ るのはアートディレクターの仕事だったりするけど、ファッションの場合やっ ぱりフォトグラファーやスタイリストの力が大きいと思う。現場の空気が写真の仕上がりにも影響するから、それを理解してくれているといいなと思う。 BGMもフォトグラファーがかけるよね。

水流:場を作る、空気を作るって大事なんですね。

高木:そういうスキルもフォトグラファーが選ばれる理由の1つかもしれない。アートディレクターやデザイナーはデザインコンセプトを考えて、ラフを作って、撮影して、それをレイアウトしたりデザインしたりっていう長い工程があるけど、フォトグラファーはもっとナマモノっていうか、ライブ感がある。
最近はレタッチ作業もあるけど、その場その瞬間が勝負だから、現場でブラッシュアップしてくれるフォトグラファーがいいなと思う。ディレクターっ てある意味、クライアントや編集の意図をどう汲み取るか、コピーライターのコピーをどう扱うか、フォトグラファーの写真をどう扱うか、っていろんな人の力を、ある程度時間をかけてまとめる仕事だから。 逆に、フォトグラファーには、その瞬間のベストをどう写真に定着させるかが大切。

高橋:クリエイティブディレクターの仕事は一言でいうと?

高木:風景を作る仕事です!(ドヤ顔)

全員:(笑)

高木:じゃなくて、何が言いたかったかというと、デザイナーはいろんな仕事をまとめ上げるのが仕事だよね。みんながいい仕事をしないと、いい結果につながらないから、それぞれの最大限を引き出したい。
フォトグラファーに写真というフィールドで最大限の力を発揮してもらいたいから、シャッターを押す前と後でも、しっかり準備する。それを共犯的に協力してくれるフォトグラファー、もしくはご自身でそれをやってくれるフォトグラファーは、良いフォトグラファーだなって思う。 BGMは大げさだけど、ロケハン、テスト撮影、事前の打ち合わせ、コミュニケーション… 出来ることはいろいろあるので。

高橋:さっき話に出たビューティーのフォトグラファーさんは事前に自分の中で咀嚼して、世界観を一枚絵で見せるために、その場で細々と作業するのではなくて、依頼から撮影まで1週間あったら、その1週間でいろんなことを考えて世界観を作る準備をしてくれるんですよね。
フォトグラファーは、アートディレクターやデザイナーが作りたい世界観を一番ダイレクトに作れる人じゃないですか。だから距離が一番近いですよね。

高木:近い。

高橋:フォトグラファー頼んだよ!って感じですよね。

高木:そうそう。極端に言うと、フォトグラファーを選んだ時点でもうその人に任せてる。飛行機で例えると、無事に着地できるかはパイロット(フォトグ ラファー)次第で、ある意味命を預けてるような感覚もある。もうお任せしますみたいな。昔は、自分が撮影してる気分だったけど。もう、ラフ通りに撮影してくれみたいな。

高橋:「アートディレクターが写真も撮った」と言えるくらいのマッチング度というか再現性ということですか?

高木:そうそう。自分がシャッターを押すわけじゃないし、レタッチするわけじゃないけど、「自分が撮った」と言える仕上がりじゃないと、ディレクションできていないみたいな…
でも今は、コンセプトや狙いを伝えて、フォトグラファーの判断や感性も生かしたい。その方が良い写真になる打率が高いし、チームで作りたいんだよね。 だから、自分に無かったアイデアを出してくれたり、クリエイティブジャンプ できる人には、頼みたくなるし、厳しいけど、その逆もあるよね。

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私が出会ったフォトグラファーの仕事術。現場の空気づくりにこだわる理由とは (後編)
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.04



■SPEAKER

高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR

前川 亮介 MAEKAWA RYOSUKE
DESIGNER

水流 麻美 TSURU ASAMI
ASSISTANT DESIGNER

高橋 梢 TAKAHASHI KOZUE
CHIEF PROJECT MANAGER



株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

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