1枚の写真から仕事につなげる。現役デザイナーが語るフォトグラファーの探し方(後編)
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.02
編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが、プロジェクトに応じたフォトグラファーの探し方やポイントを実際のエピソードとともに明かします。
前回の記事
>>>1枚の写真から仕事につなげる。現役デザイナーが語るフォトグラファーの探し方 (前編)
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.01
Webで探してTwitter、インスタをたどる。SNS時代の出会い方。
水流:フォトグラファーを探す仕事を入社してからまだ2回しかやったことないんですが、一つは「新建築2021年10月別冊号 AZUSA SEKKEI 75th Anniversary Issue」で、もう一つは大阪芸大の大学案内パンフレットの案件です。
「新建築」では、建築だけ撮影している建築フォトグラファーではなく、広告の仕事をしていたり、センスがあって新しいニュアンスで撮れたりする人というオーダーがアートディレクターからありました。だから、有名な建築家の専属フォトグラファーはもちろんですが、建築フォトグラファーだけでなく、建築をメインに撮ってない人も提案に入れました。建築写真を一度も撮ったことがない人はさすがに厳しいけど、建築もポートフォリオにある人を中心に集めましたね。
高橋:それはどうやって探したの?
水流:例えば、「BRUTUS」のお寺特集とかを見て、ディテールをきれいに撮れる人を選びました。あとはTwitterで自分がフォローしているフォトグラファーのフォロワーのプロフィールを見て、「建築」「人物」とかのキーワードがあると、その人のサイトを見たり、そこからどんどん紐づいているものを辿っていったり、という方法で探しました。
高橋:ということは、フォトグラファーは自分のプロフィール欄に、自分の撮っているジャンルを載せた方が発見されやすい?
水流:すぐ発見されるとは思いますけど、そうしている人はビギナーの人が多いのかな!?(笑)。
全員:(笑)
水流:フォロワー5,000人くらいの有料出張するような人がヒットしやすくて、プロを目指しているビギナーの方という印象が個人的には強いです。でも、カメラ専用アカウントで、その人がフォローしている人がまた有名フォトグラファーだったりするから、情報の宝庫だなとは思います。私たちがサイトで探すよりも、その人がフォローしている人をチェックするほうが、まとまっていて探しやすいと思います。
高橋:そのフォロワー5,000人くらいの人がフォローしているのは、自分と同じようなスキルの人もいるし、著名な人もいる。ミックスされてるってことだね。
前川:大阪芸大の案件ではどうやって探したの?
水流:そのときはコロナで移動規制があったから、大阪在住で、シャープでシンプルな写真というよりは大阪の「熱気」みたいなものを撮れる人、ボリュームも多かったのでそういう写真を撮り慣れている人という条件がある中で探しました。逆にTwitterでは探しやすかったですね。関西出身のフォトグラファーは関西のフォトグラファーをフォローしていることが本当に多いので。
高木:コミュニティーだよね。
水流:たとえば「カメラ倶楽部」とかそういう名前でチームを組んで撮っている人も多くて、そのコミュニティーサイトを見たり、Twitterメインで探したりしましたね。
高橋:インスタは違うの?
水流:私の印象ですが、インスタよりTwitterを稼働させている人のほうが多いイメージです。若い人はインスタメインの人が多いですが、30代半ばのプロのフォトグラファーは、Twitterが根付いている人が多いように思います。
WebとTwitterには最新の作品を載せているのに、インスタの更新は半年前というアカウントをよく見ます。インスタはTwitterより後発だから、30~40代の人たちはTwitterのほうが使いやすいのかなと勝手に分析しています。だから、まずはTwitterを見て、インスタもやっている人はURLをプロフィール欄に載せているからそこに飛ぶという流れですね。
高橋:ひと昔前はFacebookに作品を載せることがあったけど、それがTwitterになり、最新だとインスタになったってことだね。ホームページを見るとかググるとかじゃなくて、Twitterとかインスタのプラットフォームの中で探すってこと?
水流:まずはググりますよ。いきなりTwitterにはいかないようにしています。
高橋:どうして?最終的にはTwitterを見るのに?
水流:どうしてだろう・・・。
高木:うん、なんかわかる。Twitterで探すって、ある意味宝探しのようなものだよね。
水流:そうなんです。キリがないというか膨大なので、まずWebで探して、それからTwitterですね。
プロフィール欄よりも作品。作品が最も重要な判断基準。
高橋:Webで探して良いフォトグラファーが見つかることも当然あるよね?
水流:あります。フォトグラファーだけでなく、イラストレーターを探すときもこの手法でやっています。SNSで探すときに思うことですけど、インスタでハッシュタグを付ける人、減ってきましたよね。昔は何十個も並べるのが普通でした。「#いいね返し」、「#f4f」、「#l4l」など。BTS/ディズニー/ とか自分の好きなものをスラッシュ入れて並べて書いたりもしていたけど、今はもっとスッキリ、ミニマムかなと。
たとえば旅館の写真をアップするにも、「#旅館」って付ける人、最近いないですね。ハッシュタグを付けて投稿する友だちも減ってきた気がします。テキスト文までを一枚絵として考えているのかなと思います。情報を発信するアカウントならハッシュタグは多いけど、個人のアカウントや最近のフォトグラファーはそうしていない印象があります。
高橋:さっきの話で「プロフィール欄にいろいろ書いている人はフォロワー数5,000人くらいのビギナーの人の印象」って言っていたけど、たぶんそういう人のインスタはハッシュタグも多いかもね。
水流:そうだと思います。
高橋:そういう人たちと、ハッシュタグやプロフィール欄がシンプルな人を比べたとき、印象は違ったりする?
水流:もし私が若手のフォトグラファーだったら、自分をPRする目的でたくさんハッシュタグを付けると思います。だから、私が最初に見つける人は、そういう考えなんだろうなと思います。ハッシュタグが大量だと嫌ではないですけど、おぉってなりますね。
高木:その感じ、わかるかも。
水流:ハッシュタグの量で嫌いになることはないし、そういうのは基準を決めることではないですけど、最近のフォトグラファーはあるとしても2行くらい。全然ない人もいるくらいです。
高橋:私とか高木さんは、Twitterとかインスタで探すのが主流になる前から別の方法で依頼していたから、インスタのハッシュタグとかプロフィール欄に記載されているのを見るとまだ少し違和感を感じてしまうかな…。
私が古い考えかもしれないんだけど、ホームページがクオリティとか信頼の担保になっていたと思うんですよ。有名なエージェントのフォトグラファーで、マネージャーさんもいて、依頼する側もきちんと条件を整理した上でお仕事を依頼する流れがまだ板についてしまっていて(笑)。今はそれがインスタでDMくださいっていう気軽なやり取りになっていて、逆にDMが余計に緊張してしまうことも。高木さんはどうですか?
高木:僕は気にならないかな。
水流:私はわかります。インスタのプロフィールで第一印象は変わります。
高木:仮に、ハッシュタグやプロフィール欄を控えめにしたとすると、検索にも引っかかりにくいし埋もれる可能性も高いと思うけど、そういう人たちはどうしたら良いんだろう?
高橋:こうしたらいいよって明確に言えるものがあれば良いんですが、SNS時代といわれる今は、いろんな可能性があるので1つの回答って難しいなって思ってます。
ただ、もし今、試行錯誤している方がいるのであれば、このENCOUNTERももちろんですが、いろんなフォトグラファーの視点に出会って、私たちのようなフォトグラファーと一緒に仕事している人たちの感覚も知ってもらいながら、いろんなコミュニティを積極的に参加したりするのがいいのかなと。
Creators Baseも新しいフォトグラファーとの出会い方だよね。我流でやることも大事だけど、自分の好きなフォトグラファーや、第一線で活躍している人たちの考え方や見せ方なんかも徹底的に研究すると、だんだん見えてくる世界も、自分の見せ方も変わるかもしれないですね。
水流:ハッシュタグに関して、少し手厳しいこと言っちゃったし、実際今これ読んでて、ドキッとした方ももしかしたらいるかもしれないけど、プロフィール欄含め、「自分の見せ方」っていう部分も少しだけ気にかけてほしいなって思ったんです。
一番は作品なので、プロフィールだけで選ぶ、選ばないは判断しませんが、その人の感性というか・・・。高木さんはどうですか?
高木:プロフィールとかハッシュハグの多さに関しては、その人のスタンスというか、SNS上での雰囲気程度?な感じで見てるかな。でも、そこが一番重要な判断基準じゃないかな。
高橋:水流さんのようにSNSネイティブな人が、プロフィールやハッシュタグがいっぱいある人のことを、おぉーって思う一方で、高木さんみたいに気にしない人もいるから、結局はいろんな考えと判断基準があるってことですよね。
高木:やっぱり作品が一番だからね。
>>>NEXT
私が出会ったフォトグラファーの仕事術。現場の空気づくりにこだわる理由とは (前編)
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.03
■SPEAKER
高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR
前川 亮介 MAEKAWA RYOSUKE
DESIGNER
水流 麻美 TSURU ASAMI
ASSISTANT DESIGNER
高橋 梢 TAKAHASHI KOZUE
CHIEF PROJECT MANAGER
株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)
東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。
https://d-b-s.co.jp