《shanai / #写真家の視る働く空間 》株式会社シグマ篇|光と緑につつまれた最高のものづくり空間

オフィスとは、多様な働き方の最前線。

写真家の目に映るオフィスの魅力とは、どんなものだろう。

オフィスのあり方が問われる今、細部まで工夫を凝らされたオフィス空間を写真家が切り取ることで「これからのオフィス」を考える。

今回は、神奈川県川崎市にある、株式会社シグマ(以下シグマ)の本社を訪問した。

シグマは1961年の創業以来、一貫して“撮影の道具”に向き合い、デジタルカメラ、交換レンズ、各種アクセサリーの製造・販売をおこなっているメーカーだ。

シグマは国内一貫生産体制にこだわることで、独自かつ高品質な製品を作ることを可能にしている。本社と工場が同じ国に存在することでできる Face to face のコミュニケーションを大切にすることによって、経験や知識を積み重ね、さらに新たなアイデアを生んでいるのだ。

特筆すべきは、シグマ社員の多くが自身も「写真愛好家」であり、常に撮影者の視点で「最高」のクオリティを追求しているということ。

そんなものづくりへの情熱を生み出しているのは、一体どんな場所なのだろうか。

気鋭の写真家による撮り下ろしカットと共に、シグマの「shanai」を探訪する。

PHOTOGRAPHER PROFILE

トナカイ

PHOTOGRAPHER PROFILE

トナカイ

静岡県生まれ。写真家、詩人。映像制作会社に勤めた後、撮影業で独立。おもに人の肖像を撮ることを生業にしている。

instagramのアイコン @tonakaii 別のタブで開く @tonakai 別のタブで開く

2022年5月に完成した新社屋は樹々に囲まれ、景観に馴染んでいる。上品な輝きをたたえるシルバーの外壁は、天候や時間帯によっては青空や緑を映し、その表情を変えるという。

シグマ本社
シグマ本社

エントランスから続く通路は自然光がたっぷりと差し込んで明るい。突きあたりに見える屋外の緑が、まるで飾られた絵画のようだ。

シグマ本社

訪れた人を最初に出迎えるのは、このレンズセラー。

シグマ本社

実際にカメラとレンズを手にとって使用するときの向きで展示するため、さまざまな大きさのレンズが宙に浮いているかのように固定されている。2012年以降に作られたレンズが、芸術作品のように配置され、その美しさに驚く。

シグマ本社

足を進めると、コーヒーのいい香りが漂ってきた。コーヒー好きな社員が自由に使えるキッチンカウンターを囲んで、コーヒーを淹れていたのだ。

シグマ本社

これは趣味の集まりなのだそう。シグマには「趣味に打ち込める人はきっと仕事に対してもこだわりを持って打ち込んでくれる」という考えがある。そんなわけでこだわりのある社員が多い。この日のコーヒーも豆を挽いて淹れる本格派だった。

シグマ本社

窓いっぱいに緑が広がるカフェテリアでは、女性社員たちが談笑していた。厨房があり、毎日できたてのランチを楽しめる。

shanai SIGMA 202307

窓際で社長もランチタイム。社長と社員との距離感が近く、気軽に声をかけられる関係だという。この開放感あふれる空間ならそれも納得だ。社長が社員の姿を写真に撮り、ブログにアップすることもあるんだとか。

シグマ本社

カフェテリアの脇には中庭が。

シグマ本社

中庭も緑が豊かだ。ホッと一息ついてくつろげる空間。

シグマ本社

こちらは2階にある広い休憩室。社内の随所にリラックスできる空気が流れ、もはや会社であることを忘れそう。「お昼寝」を楽しむ社員も少なくないのだとか。

シグマ本社

屋上も庭園となっており、緑が溢れている。花壇や観葉植物があるだけのありきたりな庭園ではない。植物の自然な姿を表現して丁寧に作り込まれており、周囲の雑木林の借景もあってまるで森のようだ。

シグマ本社

植物は季節ごとに入れ替えるなど定期的に手入れされており、イベントなども開催されるという。

シグマ本社

屋上では写真撮影をする社員の姿がよく見られる。自社製品の試し撮りの場合もあれば、他社のレンズなども使って写りの違いを確かめる人も。会社の屋上に絶好の撮影スポットがあるのだから、写真好きの社員にはたまらない環境だ。

シグマ本社

心地よく美しい環境を徹底的に追求した屋上庭園。この庭園は社員にリラックスできる空間を提供しているが、ただそれだけではない。日常的に美しいものに触れることが、よいものづくりにも通じる……そんな考えで作られた庭園なのだ。

シグマ本社

会議室も明るく開放的。

シグマ本社

特徴的なのがこちらの会議室。ラフなミーティングや海外のゲストを迎えるのにうってつけで、よく利用されている。

シグマ本社

会議室の名前にも注目。写真にまつわる分野の学者や写真家たちの名前がつけられているのだ。

シグマ本社

フォントはシグマ製品専用開発したオリジナルフォント、新社屋サインシステムにもシグマフォントを使っている。本社のサインシステムでは膨らみや艶にもこだわってデザインされ、 細かいところまで妥協がない。

シグマ本社

高層棟の会議室は少し趣向を変え、示唆に富んだドイツのファンタジー作品『モモ』(ミヒャエル・エンデ作)の登場人物の名前も。

シグマ本社

2~4階の執務フロアは共通して白いデスクとチェアで統一され、クリーンな印象だ。席の間隔が広く、ちょっと誰かと相談したい、というときにはチェアを移動して、隣に座れるゆとりがある。

シグマ本社

ゆったりとしたスペースがあるデスクでは、エンジニアが機器や部品を広げて作業することも可能だ。

2階の執務スペースでは若手社員のミーティングが行われていた。社内では服装に関する厳密なルールはないとのことで、ラフな服装の社員も多い。

シグマ本社

2階と3階を内階段でつないでおり、他部署ともコミュニケーションがとりやすい。一人ひとりが集中できるスペースを確保しながら、垣根のないオープンな空間を実現している。

踊り場にも植物があり、社内のどこにいても、いつでも緑が目に入る。

シグマ本社

階段下にはオープンなミーティングスペースが。白い壁にカラフルなスツールが映えて、美術館の一角のようだ。ちょっとした打ち合わせなど、会話の風通しも良くなりそうな空間。

シグマ本社

階段を生かした構造とさりげないライティングが実に魅力的なライブラリーコーナー。これまでに収集してきた写真集が年代別に整理されている。

シグマ本社

「撮影の道具」を手掛けているからこそ、誰でも、いつでも豊かな写真文化・芸術に触れあえる環境をつくっている。

明るい光に満たされたオフィスは、心も晴れやかにしてくれる。

疲れたときには、溢れんばかりの緑が安らぎを与えてくれる。

社内のあらゆるデザインが、妥協なく徹底的に美しさを追求している。

シグマ本社

品質の高いものづくりをするために、最高の環境が整えられ、常に美意識を磨けるシグマのオフィス。

シグマ本社

心地よくのびのびと働ける環境が、一人ひとりのパフォーマンスを高め、シグマの目指す仕事を実現しているのだろう。

ものづくりへの情熱を生み出しているのは、あらゆる面において、社員を大切にするということを体現したオフィスだった。