《shanai / #写真家の視る働く空間 》ピクシブ株式会社 篇|フランクな対話が育むクリエイティブな環境
オフィスとは、多様な働き方の最前線。
写真家の目に映るオフィスの魅力とは、どんなものだろう。
オフィスのあり方が問われる今、細部まで工夫を凝らされたオフィス空間を写真家が切り取ることで「これからのオフィス」を考える。
今回は、ピクシブ株式会社(以下ピクシブ)の東京オフィスを訪問した。
ピクシブは、pixivやBOOTH、pixivFANBOXなど、世界中のクリエイターにとって創作活動が楽しくなるためのプラットフォーム・コンテンツサービスを提供している会社だ。
代表的なサービスであるpixivは、クリエイターがイラスト、マンガ、小説などの作品を投稿する場で、ファンは作品を閲覧してブックマークやコメントする「作品を介したコミュニケーション」にフォーカスしているSNSである。2007年にサービスを開始して以降、15年間で累計登録ユーザー数は9000万人を超え、投稿された累計作品数は1億2700万作品にのぼる。
クリエイターたちの「楽しい」「うれしい」が循環するSNSは、どんな場所で生まれているのだろうか。気鋭の写真家による撮り下ろしカットと共に、ピクシブの「shanai」を探訪する。
ピクシブ株式会社HP:https://www.pixiv.co.jp/
PHOTOGRAPHER PROFILE
PHOTOGRAPHER PROFILE
上村 窓
北海道生まれ。構成作家、テレビCM制作を経て、2018年よりフィルム写真を撮りはじめる。
@uemura_mado https://www.uemuramado.com/ピクシブのオフィスを訪ねて驚いたのは、エレベーターホールを出てすぐのところにある巨大な絵馬。
これらの絵馬は、本社に毎年年始のタイミングでイラストレーターが訪れ、 数日間をかけて中で完成させたもの。一度に描かれたわけではなく、1年ごとに1つずつ増えてきた。
驚きはまだ続いた。オフィス入口前の待機するスペースでも床から天井まで壁一面にずらりと並ぶ絵馬が目に飛び込んできた。本社に迎え入れてもらえるまでに、アイドルや漫画家、イラストレーターなど、これまでにピクシブを訪れた様々な人々が描いた個性豊かな絵馬を眺めながら過ごすことができる。
社員専用スペースである5階。コロナウイルスの世界的な流行前は、ここで毎週水曜日に全社員が参加する全体会議とランチ会を実施してきた。
現在はリモートワークも採用しており、出社は個人の裁量に任せている。
「オフィスのほうが集中できる」
「近くに住んでいるので気分転換も兼ねて会社にきている」
リラックスして仕事がしたいときに、ここで足を伸ばしたり、寝転がったりしながら仕事をするメンバーもいるのだそう。
執務エリアは、その日の気分にあわせて仕事をする場所を自由に選べるフリーアドレス制だ。
オンラインミーティングをする時等に利用できる個室ブースも完備。
執務スペースの特徴は、切れ目のない円状の木製デスク。逆Uの字に迫り上がっている入り口から、執務スペースに出入りする。
「社長室を撮影していいかちょっと聞いてみますね」
取材中、許可がとれたので社長室も撮影することができた。社長にも気軽に連絡をする社員の姿から、風通しがよくフラットな環境であることが伝わってくる。
2〜3人の会議に適したミニ会議室は、お客様との商談や少数チームでのミーティングで使われているという。それぞれに「春」「夏」「秋」「冬」と名付けられた部屋にある机は、クリエイターに特注で描いてもらったイラストデザインが施されている。
6階の執務エリアの手前はオープンスペースとなっており、一つ一つのデスクはクリエイターとともに作り上げたオリジナルデザインだ。
精巧な技術で折り曲げられた入り口の向こう側で、実際に仕事をする社員の姿が見える。 執務室の中に入ってみよう。
ピクシブの執務室は、とにかく見通しがいい。そしてカラフルだ。執務室のキャラクターは、なんといってもきのこ机だろう。立ったまま作業できるスタンディングデスクなのだ。
続いて、オフィスのあらゆるところにクリエイティブと遊び心が表現された同社のミーティングに潜入してきた。 なんとこの会議室の名前は「全力」だという。後ろに見える屏風は、実はpixivFACTORYというサービスを使って作成したものだそう。
テーブルの天板もクリエイターと共に作り上げたもの。まさに全力を感じられる空間ではないだろうか。
何やら3色のカラーがかわいい空間がお出ましだ。
この本棚は仕事に必要な資料や、ピクシブがきっかけで漫画家になったクリエイターや出版社とコラボして作り上げた作品たちが並んでおり、ピクシブの歴史を感じさせてくれる。
普段は社員が仕事の合間に休憩したり資料を探したりすることが自由にできる場所として使われている。
「余白的な空間を意識して作り上げた」という同社のオフィスで最も余白的な空間は、カラフルなマス目が気分を上げてくれるバーカウンターだろう。
ピクシブ社の部活動や歓送迎会、また仕事終わりに社員同士で交流する憩いの場となっている。取材中、広報の高橋さんはこんなふうに語ってくれた。
「オフィスのいいところは、やっぱりバーカウンターですね」
このような設備がただあるだけではなく、実際に多くの社員がバーカウンターに集っているという。 バーカウンターについては、同社のブログも引用させていただこう。
「バーカウンターで楽しそうなことをやっている人達がいると、自然と集まっている様に感じますね。 以前のオフィスもそうでしたが、視界を遮る壁を少なくしているので、その場に立つと誰が何をしているかを把握できるのも一役買っているのかと思います。」
取材中、若い社員からベテラン社員の方々まで撮影に協力してくれたが、誰もが年齢に関係なくフランクに話していた姿も印象的だった。イラストや漫画が好きな人が集まっているのが特徴だという。
そういったメンバーが、興味のある分野で好きなクリエイターを応援し、クリエイターに支えられながら働いている。
クリエイターたちの「楽しい」「うれしい」が循環する環は、そんな関係性から生まれているのだろう。