【ウエディングフォト】結婚式専門スタジオに聞いた、ウエディングフォトレタッチ術
一生の思い出となるウエディングフォト(ブライダルフォト)は、普段の自然な姿よりもさらに綺麗で美しい姿に仕上げることが求められます。そんなウエディングフォトの編集やレタッチはどのような点に気をつけながら行えば良いのでしょうか。
前回のウエディングフォト撮り方記事に続き、今回は、友人や知人からウエディングフォトの撮影を初めて依頼されたフォトグラファーや、これからウエディングフォトの撮影を仕事にしたいと考えている方に向けて、ウエディングフォトならではのレタッチ術やテクニック、事前のコミュニケーションについて、結婚式専門スタジオ『TORUTOKOYA』の後藤竜典さんに伺いました。
ウエディングフォトの撮り方についての記事はこちらから
▶︎【プロが解説】依頼主に後悔させない!初めてのウエディングフォトの撮り方
目次
ウエディングフォト編集の基本的な流れ
ウエディングにおける、写真の納品形態として、「1枚だけを納品する」といったケースはほとんどありません。撮影プランやボリュームによっても変わりますが「数百枚以上のデータを納品」するケースがほとんどでしょう。
そのため、効率的に高いクオリティを生み出す現像作業が求められます。
私の編集工程は下記のとおりです。
1.セレクト(Lightroom)
大量の撮影データの中から納品するデータと納品から除外するデータをセレクト。
Lightroom(写真編集ソフト)上では、「レーティング」「カラーラベル」「フラグ」と3種類の区別方法があり本件では「フラグ」を使用しています。アルバムなどにも対応できるよう、同じシーン・表情において、縦写真と横写真があるのが望ましいです。
2.トリミング(Lightroom)
セレクト工程で納品データとして選んだ写真をトリミング。また建築物等を生かして撮影する場合はジオメトリの補正もかける。
3.色補正(Lightroom)
トリミングが完了したデータの色を作りこむ。決まった色がある場合はプリセットをあててWBと露出を調整し同じシーンは同期させる。
4.追加補正(Photoshop)
書き出しが完了したjpegデータに対し、不要物の除去や光の加工、肌のレタッチなどを対応。
これらのやり方では3回も同じデータを見返すこととなります。そのため、最初のセレクトはある程度アバウトでも問題なく、2以降の工程でさらに除外データを増やし、納品セレクトの精度を高めます。
事前に確認すべきレタッチ内容
基本的なレタッチ内容は先述した部分となりますが、近年では撮影と現像作業だけでなく、下記のようなレタッチ能力もカメラマンに求められるようになってきました。
・歯並びの修正
・矯正器具を消す
・髪の毛の増減
・顔パーツの修正
・タトゥーを消す
私の所属しているTORUTOKOYAでは、基本的に上記レタッチ内容はプランに含まれておらず、オプションとして追加料金で承っています。スマホアプリの普及などにより、お客様からも「~を修正しておいてください」と当たり前のように言われてしまう時代となりました。そういったご要望にも対応できるよう、Photoshop等、編集スキルの幅を常日頃から増やしておくことも求められています。
美肌補正、フェイス・ボディラインの補正術
写真の現像作業の他、「美肌補正」や「小顔補正」、「ボディライン補正」のニーズも増えています。
美肌補正
ニキビや吹き出物など、メイクでは隠し切れない部分のレタッチ。
Photoshopの「パッチツール」を使用してこれらを簡単に削除します。
また、さらに高いクオリティで肌をレタッチする場合、「ハイパスフィルター」を使用した周波数分離(色レイヤーとテクスチャーレイヤーに分離する手法)など、繊細なレタッチが可能です。さらに、「コピースタンプツール」を全体的に柔らかく使用し、肌の粒子が無くなるほどの質感を表現することでハイライトやシャドウをなじませるようなレタッチの方法もおすすめです。
上記写真は比較を分かりやすくする為、クローズアップにトリミングしています。しかし、実際のウエディングフォトでは、ロケーションや空間を生かして撮影することが多く、また基本的に2人(新郎新婦)のカットとなる為、ここまでお顔がクローズアップされるような画像は多くありません。そのような場合には先述した「コピースタンプツール」による滑らかなレタッチが、変化も分かりやすくお勧めです。
男性の肌補正について
基本的な部分は女性と同じとなりますが、例えば髭の剃り跡等のみにコピースタンプツールでやわらかく肌になじませ、全体ではなく部分的に補正をかけたり、シャドウ部分をなじませることで陰影を強調してホリを深くして見せたりなど、男性目線でのレタッチも大事です。
一方お客様のニーズとして、「新婦のみ美肌補正してほしい」など、新郎に手を加えないことを希望されることもあるため、事前にヒアリングしておくことが重要となります。
フェイス、ボディラインの補正
美を司る重要な要素の一つです。和装はお顔のみが露出していますが、ドレス姿となるそうもいきません。体型にコンプレックスを抱える花嫁も少なくなく、そんな時はPhotoshopの「ゆがみツール」を使用して細部を調整していきます。例えばフェイスラインをだすために、顎のラインを上へ持ち上げたり、肩を下げることで首を長く見せることができます。ボディラインはウエストを綺麗に見せるために内側へ寄せたり、二の腕のふくらみを細く修正してあげるとより美しいシルエットに仕上がります。
美しく仕上げるためのレタッチテクニック
撮影をメインに考えるカメラマンの方々も多いと思いますが、写真を美しく仕上げるといった点において、レタッチはとても大切です。簡単にできるけど、とても大切なレタッチテクニックを3つご紹介します。
視線誘導
写真は最も明るいところへ最初に目が行きます。そのため、一番見せたいところ(ウエディングフォトでいうと新郎新婦)が一番明るくなるようレタッチしてあげるとより芸術的な写真に仕上がります。
ジオメトリ補正
ロケーションフォトなどでは、建物を生かして撮影することが多く、その際はジオメトリ補正までしっかりかけることをお勧めします。本来、直線的なものがレンズやカメラポジションによってカメラを通すと歪んでしまいます。それらの修正により、建築的な美しさも写真に加えることができます。
ドレスのレタッチ
ドレスの皺や大きさなども先述したツール(コピースタンプツールやゆがみツール)を使用してより芸術的に仕上げることができます。例えばボリューム感を変更したり、流れるような曲線を描いたりすることで、同じ写真とは思えないぐらい、よりドラマチックに仕上げることができます。これらのポイントやコツをつかんでおくと、撮影時の妥協点(ここからはレタッチでなんとかできるといった判断)を見つけられるようになり、それによって撮影効率も上がります。
レタッチといってもたくさんの要素があります。色味にはじまり、今回ご紹介した様々な内容も含め、自分の武器として備えておくと、予想外のご要望にも柔軟に対応できるようになるでしょう。
PHOTOGRAPHER PROFILE
PHOTOGRAPHER PROFILE
後藤 竜典
1996年生まれ。高校生の頃からカメラに親しみ、写真の魅力に引き込まれる。
特に人物写真に心酔し、独自の視点でライティングを駆使した光と陰の調和が印象的な絵画のような一枚を作り出すことでオリジナリティ溢れるウエディング写真を撮影。国際的な写真コンテストで2度の金賞受賞歴を持ち、その実績を通じて高い評価をいただいている。「オトナかっこいい」をコンセプトに掲げたTORUTOKOYAに所属し、技術と感性を融合させ、スタジオのトップフォトグラファーとして活動中。
【ウエディングフォトコンペ受賞歴】
2023年 AWPA competition 1st Half 2023 1st PLACE Bride & Groom Together (部門世界一位)
2023年 AWPA competition 1st Half 2023 3rd PLACE Bride or Groom Single (部門世界三位)
2023年 AWPA competition 1st Half 2023 Excellence Award Bride & Groom Together
2023年 AWPA competition 1st Half 2023 Excellence Award Bride or Groom Single
2023年 COSMOS AWARDS 2023 1st PLACE _Pre Wedding Bride Alone (部門世界一位)
2023年 COSMOS AWARDS 2023 1st PLACE _Pre Wedding Groom Alone (部門世界一位)
2023年 COSMOS AWARDS 2023 Silver Award _Pre Wedding Bride Alone
2023年 COSMOS AWARDS 2023 Silver Award _Pre Wedding Couple Together
2023年 AWPA competition 2nd Half 2023 Excellence Award Bride or Groom Single