第二回|アイデアのインスピレーション – わたしのスタイリング思考|早野アレックス

こんにちは。プロップスタイリストの早野アレックスです。
普段から目にしている何気ないものを使って、面白い組み合わせをスタイリングに取り入れています。

遊び心のある空間や、ちょっと捻ったビジュアルを作るためには、やはりインプットも大事。

前回は、私のプロップスタイリングのプロセスをお見せしました。

第1回:わたしのスタイリング思考 プロップスタイリスト・早野アレックス

そのプロセスの中で、「インプットしたものを自分の引き出しとして活用する」とお伝えしましたね。スタイリングをするとき、自分のイメージを大きく膨らませられるかはその引き出しの多さに比例します。

今回は、私のインプットの方法や視点をお伝えしたいと思います。

PHOTOGRAPHER PROFILE

早野アレックス

PHOTOGRAPHER PROFILE

早野アレックス

武蔵野美術大学卒業後、ファッションスタイリストのアシスタントを経て、プロップスタイリングを学ぶため渡英。ライティングやカメラワークの重要さを知り、ロンドンでアシスタントを経験しながら写真を学ぶ。その後東京に戻りプロップや衣装のスタイリストとして意欲的に活動中。プレイフルなスタイルが定番。

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1.美術館

早野アレックスさん
作品のスケッチとワードの抜粋。展示の仕方などをメモすることもあります。

インプットといえば、真っ先に美術館を想像する方も多いのではないでしょうか?

私も、インプットが足りないと思ったとき、最初に探すのが美術館でおこなわれている展示です。

なぜ美術館がインプットするのに良いのか、インスタグラムやピンタレストではいけないのか、と思うこともありますよね。

私は、インスタグラムやピンタレストは優れたツールだと思っています。ですが、あくまでツールであるので私たちが目的を持って使うものです。

いっぽう美術館は、キュレーターの方々によってその時々でテーマを設定・選定され、ただでさえ素晴らしい芸術作品が、そのテーマに沿って、並びや空間まで編集された状態の展示をみることができます。

その展示を観て、時には感動することで、新鮮な視点や、美しい配色、知識、そしてバイブスと出会うことができるのです。

前置きが長くなりました。少し恥ずかしいのですが、実際に私が鑑賞する際にとっているメモをお見せしますね。

早野アレックス
気になった作品には丸をつけておきます。洋服の形を簡単にスケッチ。

展示の最初のほうに作品リストが置いてあるので、それをもらい鉛筆で思ったことを書き込んでいきます。ボールペンの使用が禁止されていたり、スケッチが禁止のところもあるので、ルールを守るように気をつけることも大切です。

メモすることは、気になった作品・作家・キャプションの中でもっとディグりたいと思ったワードで、スケッチは自分に伝わればいいやくらいの感覚で雑に描きます。

ここで気をつけたいのは、メモ取りに熱心にならずに、しっかりその場で鑑賞すること。そしてその作品・雰囲気に浸ることを優先することです。私は、インプットは自分の感情が動いた時にやっとできるもので、そうするほうが色々なものを吸収できるのだと気付きました。

メモしたいと思わない時もあります。入ってみたものの気分がのらない、興味が湧かないという場合は、無理はしないようにします。メモどころか、立ち止まらずサクッと鑑賞する。タイミングが悪かったなあと思って、やり過ごしてしまいましょう。
引き出しを増やすためのインプットは、これくらい気楽なほうが捗るなと思います。

2.映画

早野アレックス
何が書いてあるかわからない、映画のメモ。

映画は美術だけではなく総合芸術としてとても好きなので、色々なポイントからインスピレーションを得ることが多いです。

映画館でも作品によってはメモをとりながら鑑賞しますが、いかんせん暗い空間で手元を見ずに書くので後から見直してもなにが書いてあるかわからないことも……。それでもメモしておきたい!と思わせてくれる作品に出会えたら、その日はハッピーな気分です。

観るポイントですが、まずは、やはり構図とライティングです。映画ではストーリーによって、際立たせたいものに絞ってライトを当てるなど、ライティングに演出的な意味がより加わるので、その意味を探るように観るのが好きです。

構図に関しては、特に海外作品において、構図の美しさを実現するために美術が設計されていることも多いので、構図のキマり具合をヒントに美術に注目したりもします。

あとは、衣装と美術の関わり方や、それらのカラーの配置、カットの切り替わりで写る背景の美術にも目を向けることも。

映像作品は動く分、作り込みの範囲が広いので、細部まで意図を感じるとぞくぞくします。細部の作り込み方をみるような感覚です。

早野アレックス
早野自宅の気になった映画や展示のパンフレットを貼っておくボード。

とはいえポイントに注目しようとしても、ストーリーが面白すぎると具体的なことはなんにも覚えていないこともよくあるので、気になった作品は配信などで何度も観ることをおすすめします。

3.リサイクルショップ

早野アレックス
私のYouTube、Alex Studioから抜粋。アンティークショップをいくつか巡りました。


最後はプロップスタイリストならではかもしれません。インプット先は、街のリサイクルショップです。

色々な年代のものがごちゃごちゃに置かれている空間はインスピレーションの宝庫です。
何の気なしに置かれているものたちが、思いがけない組み合わせのヒントをもらうこともあります。

ここでいうリサイクルショップというのは、おしゃれなヴィンテージショップではなく、街の中古品を扱うお店のこと。

おしゃれなお店にある、オーナーに選び抜かれたアイテムたちはもちろん素敵ですが、そういったお店で得られるのはインスピレーションというよりはお手本に近いと思います。

美術館の展示や映画が外からの刺激だとすると、リサイクルショップは自分の中の感性を発見するイメージ。ジャンルレスな空間で自分がなにに惹かれるのか、なぜ惹かれたのかを考えることが、引き出しを増やすきっかけとなったりするのです。

早野アレックス
YouTubeから抜粋。家具だけでなく、小物ももちろん物色します。

「このリサイクルショップにあるものでスタイリングを組むとしたら」と想定して見回してみると、また別のものが気になったりして面白く、つい長居してしまうこと間違いなし。蛇足ですが、同じ観点でスーパーをウロウロしてみるのもおすすめ。

街のリサイクルショップなので、なーんにも面白いものがないこともあるのですが、単純に楽しいので、グーグルマップで「リサイクルショップ」と検索して片っ端から行ってみるのもいいと思います。

わたしのスタイリング思考

インプットについて初めて言語化してみましたが、なんだか私がものすごくインプットしている人のように見えますね……。

実際はインプットの時間をつくらないと…!といつも思っているタイプです。頑張って時間をやりくりしていきましょうね。

よいアウトプットはよいインプットから!みなさんの参考になれたら幸いです。

では次回、「撮影の必須アイテム」でお会いしましょう。チャオ〜。