デザイナーの目に留まりやすいポートフォリオサイトとは Part4
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.09
編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが実際に出会い、影響を受けたフォトグラファーとのエピソードを明かします。
前回の記事
>>>デザイナーの目に留まりやすいポートフォリオサイトとは Part3
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.08
「何度も頼みたくなる」フォトグラファーとは。
高木:みんな基本的には諸条件はあれど、そのプロジェクトにおけるベストなフォトグラファーをアサインすると思うのですが、何度もお願いしているフォトグラファーさんっているよね?
今回は、なぜ何度もお願いするのか、そのポイントとか気をつけてることなど聞ければ。
大脇:はい。クリエイティブってチームワークですからね。
細野:僕は「新美容」という雑誌のデザインを担当していまして、編集部にフォトグラファーが数名いるので、いつも同じ方たちと撮影しているんですが、マンネリにならないように気をつけてます。
毎回、新しいアプローチを提案してチャレンジを仕掛けるんですが、そういうのを面白がって一緒にやってくれる人たちなのでいいなと思っています。
高木:デザイナー側から仕掛ける時もあるけど、フォトグラファーからの新しいアイデアだったり、こちらのアプローチに乗ってくれると嬉しいよね。
大脇:もう5年くらいブランディングさせていただいているスキンケアブランドの物撮影は、いつも吉田健一さんにお願いしていますよね。そこでチームワークが取れているからなのか、他ブランドの案件でも候補に上がっている印象があります。技術力はもちろん、「柔軟な対応力」がある方だからかなと思います。
高木:いつも丁寧に話を聞いてくれるよね。
大脇:そうですね。
高木:僕らは写真のプロじゃないし、ライティングの細かい技術まで理解しているわけじゃないから、あくまで「イメージ」で物事を伝えることが多い。
もっと「重くしたい」とか「なんか古いな~」とか。上手く言語化できない要求を「ふむふむ」と嫌がらず聞いてくれて、こんな感じですか?って寄り添ってくれる方は本当にありがたいよね。
細野:朝7時半くらいの光のことですかね?とか具体的な例え提案してくれると「なるほど」って思う。
高木:僕たちデザイナーはもちろんなんだけど、フォトグラファーも「聞く力」が大切なのかな。別に無口だったり、愛想が良くないのがダメかというと、そういうことではなくて。
意図した写真が撮れていない時や、何らかの事情でそのイメージが実現されない時に、それを受け入れて考え直したり、別のアプローチを一緒に模索したり、ちゃんとそこで対応してくれると、聞いてくれているな、同じゴールを目指せてるなって気持ちになる。
ちょっと話が変わるけど、そういう「聞く力」がある人ほど、撮影が早い気がする。撮影時間が短いと本当にありがたいし、かなり嬉しい。
細野:撮影時間が短いのは好ポイントです。
大脇:同感です。作業の話でいうと、軽くレタッチして最終のイメージを見せてくれるフォトグラファーの方もいます。
高木:ライティングによっては商品の正確な色が出せない時があるけど、クライアントは正確な色を気にしたりするからね。その場で色のレタッチをささっと出来ちゃったりすると、クライアントは安心するっていうのはあるよね。
デザイナーが作りたいクリエイティブと、クライアントのクリアしなきゃいけない事情みたいなものをその場で解決ちゃうみたいな。
大脇:レタッチスキル、重要ですね。ページネーションが決まっているモデル撮影で、いつの間にか並べてくれていたりするのも高感度UPです(笑)
高木:ちゃんと全体を理解して撮影してくれる人は助かるよね。
大脇:ですね。隙間時間にささっと並べ直してくれて。例えば、右フリが多いから、次は左フリにしてみましょうとか、足キリ多いから引いて撮ってみましょうとか、自分が現場で気が付いていなかった部分をさりげなく助けてくれると嬉しいです。
高木:ファッションの案件は、想定していたルックと現場でモデルに着せてみた感じで、写真もデザインもどんどん変わっていくからね。
いい写真を目指して。
高木:ファッションの撮影で思い出したんだけど、昔からご一緒したいと思っていたフォトグラファーさんがいたんですけど、インスタのアイコンがちょっと怖いんですよ。それで、この案件ならピッタリかもって機会があって、依頼したんですね。アイコンのイメージしかないから、初回の打ち合わせからビビっていて… すごい怖かったらどうしようって、笑。
細野:有名な方だと初めて会う時は結構緊張しますよね。
高木:そうなの。でも、実際会ったらビックリするくらい優しくて。SNSのアイコンと実際の自分にギャップをつけるってズルいなって思った…。
大脇:それ、読者の参考になります?笑。
細野:「新建築」でお願いしたフォトグラファーの方の話しますね。建築写真って撮影日の天候にすごく左右されるんです。予定されている撮影日が悪天候かもしれない。けど天気って当日にならないともちろんわからないわけで…。そういうのを見越して、事前にロケハンしてくださっていて。
結果、ロケハンの時の天候の方が本番日より良かったので、ロケハンの時の写真を実際に使ったことがありました。こちらがロケハンをお願いしたわけではないんですが、本当に助かりました。
高木:単純なことだけど、良いものを撮るために頑張ってくれる人はまたお願いしたくなるよね。うまく撮れなかった時にどこまで粘ってやってくれるか。
細野:チームだと思っているから、そういうのって大事だよね。個人的には、1人で撮影現場に行くことが多いから、同じテンションだったり、空気を作ってくれたりするとやりやすいなって思っちゃうかな。
高木:同じようなエピソードですが、クライアントワークってデジタルで撮ることが多いじゃないですか。その場ですぐ確認できるし、レタッチもできるしで、ある意味リスクマネジメントの面もあると思うんだけど。
そんな中でも、敢えてフィルムで撮りたいって言われて。僕がドキュメンタリーな写真にしたいってお願いしたら、だったらフィルムで撮ってもいいですか?って言われたんです。結構特殊な状況で、かつ有名なタレントさんの撮影だから、時間もないし、絶対に失敗は出来ないんだけど…。
でも、良いものにするために、そういうチャレンジングなことを提案してきたくれたことは嬉しかった。結果、デジタルとフィルム両方で撮ってもらったんだけど、実際にあがったものを見るとフィルムの方が断然良かった。満場一致でみんなフィルムを選んだの。フィルムの力っていうのがあるんだなって体感したエピソードですね。
フィルムでの撮影って最近では少なくなってるから、現場でも盛り上がって、雰囲気も良い感じになってたんですよね。
大脇:良いエピソードですね。現場の雰囲気で言えば、横浪修さんのアシスタントさんって坊主頭でヘアバンドしてるんですよ。アシスタントさん2~3人いて全員同じだから、その絵面だけでシュールで面白いんです。アシスタントさんを被写体にした写真もUPしたりしていて、皆が仲良しで楽しんでいる感じが伝わってきていいなと思いました。可愛がってるんだなって。
細野:フォトグラファーさん同士で同じ現場に入ることはないから知らないことも多いかもしれないけど、僕たちみたいなにいろんなフォトグラファーさんと仕事をしていると、いろんなエピソードがあるから読者の参考になると嬉しいですね。
Top image : Kenichi Yoshida
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クリエイターとして突き抜けられない感覚をどうする?
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.10
■SPEAKER
高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR
細野 隆博 HOSONO TAKAHIRO
ART DIRECTOR
大脇初枝 OWAKI HATSUE
ART DIRECTOR
株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)
東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。
HP : https://d-b-s.co.jp
Instagram : @dynamitebrotherssyndicate
高木 裕次 Twitter : @takagiyuji1