SNSフォトグラファーならではの選ばれ方がある

DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.14

編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが実際に出会い、影響を受けたフォトグラファーとのエピソードを明かします。

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>>>「SNSの次どうしよう?」迷っている人が意識すべき視点
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.13


武井:SNSで人物とかポートレート撮る人って行き着く先は、女優さんを撮りたい、広告をやってみたい、みたいな方が多いと思います。

高木:どうしたら無数のSNSフォトグラファーの中から選ばれるか。という問いですよね? まず、最初に浮かぶのは、武井さんがお話されていた水中撮影のように自分の型というかSNSの型にハマるだけではない、新しい世界観に挑戦する。それが1つ出来ることだと思います。同じように、10人のフォトグラファーが10枚ずつ撮った写真が100枚あったとして、それを全部並べた時に、この10枚だと識別してもらえる個性。そういう写真を撮らないとなかなか選ばれないと思います。
SNS上の無数のアカウントから選ばれるには、1枚の力というよりは、フィード全体を通して滲み出る個性や視点が際立っていないと難しいかなと。知ってもらうための、きっかけの1枚は大切ですが、アサインする側は、その1枚から他の写真も見て、トータルで決めると思うので。ワタナベアニさんもおっしゃっていましたが、最初はいろいろなものを撮っていいけど、「これが私の視点」というものを自分と向き合って追究して、発信していくということは大切なんだと思います。

武井:どうやったらクリエイターの方々に見つけてもらいやすいんでしょうか?

高木:昔はフォトグラファーさんを探す方法って、業界誌や雑誌のクレジットとかしかなかったと思いますが、当然今はSNSだと思うし、若いデザイナーを見ていると、フォトグラファーに限らずスタイリストやヘアメイクとか探すときもインスタグラムとかピンタレストを使っているので、対業界でも、SNS上のPDCAを回すことは大事なのではと思います。あとはリアルでもSNSでも、横のつながりですかね。スタイリングに惹かれて目に止まって、フォトグラファーのリンクを押すみたいな。

武井:となるとやはりフォロワー数も大事だということですよね。

高木:そういうことになりますね。

高橋:選ばれやすいフィールドに上がるためには、やはり一定数のフォロワーを増やすことは避けて通れないかも。でもウケる写真ばっかり撮っても差別化されづらくて目に留まりづらいですよね。あと、SNSとかYouTubeの世界で活躍されている方はその世界が中心になるというお話が前回挙がっていましたが、違う視点という意味で例えば、SNSフォトグラファーが分析した広告写真の目の付け所とか面白いんじゃないかと思います。

高木:デザイナーもポートフォリオを作る際に、架空のパッケージとか、頼まれてもいないロゴを作ったり、勝手に広告を作ったりするんですけど、そういうこともいいのかもしれない。

武井:確かに自分の好きなものを、まるで本物の広告かのように撮り続けている方いらっしゃいますよね。なるほど、そこにヒントがありそうですね。

高木:フォトグラファーのブック見せの時、クラインアントワークと思っていたら、個人作品なんですっていう事は良くありました。コマーシャル・フォトでも例えばオロナミンCみたいなお題が出されて、それをどう撮るかみたいな企画よくありますよね。そういうことかなと思います。

高橋:私は昔フォトグラファーのマネージャーとして働いていた経験があるのですが、駆け出しのフォトグラファーって当然仕事があまり無くて、当時はSNSも普及していなかったので、空いている時間でひたすら作品撮りをする。商品撮影なら見栄えがいいブランドのコスメなどを買ってきて、「どう自分なら切り取れるか」みたいなことを繰り返しやっていました。そうすると「これ、お仕事ですか?」と聞かれたりしてお仕事の依頼をいただけることもあって。PDCAを回すみたいなことはアナログだと出来なかったので、今のフォトグラファーの方々が、より有効的なやり方をご存知なのかなと思ったりもします。

武井:なるほど。そういうことをやって良いものを撮り続けていることを前提に、フォロワー増やしたり、フォロワーの多い人にリツイートしてもらったりしながら、クリエイターの人たちに見つけてもらうという方法ですね、面白い。ちなみにテーマとかジャンルとか絞った方がいいのでしょうか? 

高木:そのほうが、選びやすいかもしれませんね。

武井:一つのスタイルで出し続けていると、信頼感にもつながりますよね。

高木:どんな写真にもその人らしさは出ると思うので、いろいろなスタイルやジャンルの写真があるのはいいと思いますが、選ばれやすくなる、頼まれやすくなるという観点から見ると絞った方が、届きやすいと思います。
あと、どんなに小さくても展示会や個展を開くことは、わかりやすく目に留まるきっかけになると思います。SNSで発信してるだけだと見過ごしてしまうかもしれませんが、ギャラリーやカフェなどで個展などを開催することによって、そのギャラリーが宣伝してくれるじゃないですか。カフェとかギャラリーっていうメディアにお金を払って載せてもらうっていうか。雑誌はお金払っても載せてくれないので。

武井:アートディレクターがよく行くカフェとかギャラリーのリストが欲しいです。

全員:(笑)

高橋:普段あまり行かないような、小さくてニッチな本屋さんでもカフェでも、新しいメディアとして良いかもしれないですね。

武井:ギャラリーだと「その人の写真を見るために行く」ということになると思うので、本屋さんとかカフェの方がいいんですかね?ハードルが下がるというか。

高木:例えば僕が、たまたま入ったカフェで、たまたま写真の展示を見て、気になった。というストーリーもありますが、それよりも、そのカフェのSNSアカウントで、「今月、こんな展示します」って投稿したら、カフェのフォロワーさんがリツイートとかして拡散される。認知が広がる。それって一種のメディアに載ることと同じだと思うんですよね。リアルにそういう経緯でお願いしたイラストレーターさんとかいますよ。

武井:なるほど。貴重なお話です。

高橋:それに、クライアントの担当者が偶然、そのフォトグラファーさんを個人的にフォローしているというケースも意外と大きな後押しになります。だからSNSでセルフプロデュースをして認知を上げるって本当に大切だし、その結果が仕事に繋がることは十分ありえますよね。

高木:これも実際にあった話です。フォトグラファーさんを提案したら、クライアントさんが「あれ、この写真見たことある」って言って、調べたらインスタをフォローしたみたいで、即決でしたね。

高橋:今までのお話を伺って、武井さんのSNSの世界と広告の世界を混ぜ合わせたいという想いは、クライアントやフォトグラファーのエージェンシーなども巻き込んでいけたら、さらに新しいクリエイティブが生まれるのではと思います。

武井:そうですね。とても面白そうなのでぜひ一緒にやっていきましょう。

高橋:本日はありがとうございました。

全員:ありがとうございました。

Photo by : Hirokazu Takei


■SPEAKER

高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR

高橋 梢 TAKAHASHI KOZUE
CHIEF PROJECT MANAGER


対談ゲスト
武井宏員 TAKEI HIROKAZU

写真家/実業家 大阪生まれアメリカ育ち。2018年、広告代理と委託撮影を主とする総合クリエイティブサービスを展開する、株式会社CURBONを設立。経営者でありながら、人物や広告写真を撮影する写真家としても活躍中。

Instagram : @take1officail


株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

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高木 裕次 Twitter : @takagiyuji1