TOKYO ART BOOK FAIR 2024で編集部が買った本
11月28日(木)〜12月1日(日)の4日間、東京現代美術館で開催された「第14回 TOKYO ART BOOK FAIR (以下、TABF)」。今年は国内外から約300組の出版社、ギャラリー、アーティストが集結し、アートブックの祭典は大きな盛り上がりを見せました。
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今回、ENCOUNTER MAGAZINE編集部では、会場で出会った魅力的なアートブックの数々を実際に手に取り、気になった本を購入してきました。編集部メンバーによる読後レビューとともに、TBAFで買った本をご紹介します。
①Chien-Wen Lin ハンドメイドZINE
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出店者:Homopleasure
作者:Chien-Wen Lin / @poorboyneverock
ブース:EN-043
国:台湾
写真家のChieh Linによる手作りのZINE作品。2017年〜2018年のアイルランド滞在時に撮影した写真を用いて制作されています。期限切れのフィルムを使用して撮影された写真には独特のぼけ感が生まれており、それが記憶の儚さを物語っているかのよう。
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本作は、パスポートをモチーフにデザインされており、工程表や日々の支出記録、旅のチケットなどが写真とともに収められています。さらに、折り畳まれた写真を広げると、ポスターサイズの写真になるという仕掛けも!丁寧な手縫いによって仕上げられた精巧な作りと、ページをめくるたびに新しい発見がある構成に、胸を打たれました。
②Sara Lorusso『AS A FLOWER』
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出店者:Witty Books
作者:Sara Lorusso / @loruponyo
ブース:EX-429
国:イタリア
イタリア北部のエミリア・ロマーニャ地方出身の写真家・サラ・ロルッソ。アナログ写真を駆使し、柔らかな光と親密な視点で捉えた“身体”を通じて、現実を映し出す彼女の作品には、誰もが自分らしく在ることができる権利を表現したいという思いが込められているのだそう。
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この本では、花と人物の写真が交互に配置されています。花の写真には、種類も色も異なるさまざまな花が、人物の写真には、性別やセクシャリティを超えた多様な愛の形が収められています。見開きで並ぶ写真からは、それぞれの個性を持つ花と人の姿が重なり合い、新たな視点を与えてくれます。鮮やかな色彩も印象的で、思わず見入ってしまう魅力的な一冊です。
③KIGI『all is graphics』
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出店者:KIGI
作者:KIGI / @kigi.info
ブース:EN-017
国:日本
植原亮輔と渡邉良重によるクリエイティブユニット・KIGIは、企業やブランドのアートディレクションや、東京・池尻にあるギャラリー&ショップ運営を通じて、ジャンルの枠を超えた新しいクリエイションの可能性を追求しています。2022年11月に開催されたKIGI 10周年展覧会で発刊された「all is graphics」は、二人がこれまで手がけてきた数々のアートワークが収められている図録です。
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本作品は、付属のクリップを左側につけると渡邉の作品を、右側につけると植原の作品を楽しめるという独創的な作り。収録作品のクオリティの高さはもちろんのこと、「この本はどのような仕組みになっているのだろう」と好奇心をかきたてる構造が魅力です。コンテンツを楽しむだけでなく、”読む“という行為自体を楽しめるアイディアに驚きました。
④Spinning books『GIRL.』
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出店者:Spinning books
出版:Spinning books / @spinning_books
撮影者:Jerry Hsu / Chad Moore / Yasumasa Yonehara / Nate Walton / Coley Brown / Richard Kern
ブース:ZM-516
国:日本
『GIRL.』は、Spinning booksが手がけたオリジナルの写真集。6人の写真家が集結し、”ガール(女の子)”をテーマに、それぞれの感性で撮影した作品が収められています。一人の女性を継続的に撮影する作家から、多様な女性たちを捉える作家まで、撮影手法や被写体の選定方法も写真家によってさまざま。
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本作には数多くのヌード作品が収められており、中には大胆なショットもちらほら。でもそれらは官能的というよりも、彼女たちがヌードを通して等身大の姿をぶつけてくれているかのよう。被写体と撮影者との関係性を想像させる独特の視点も、この写真集の魅力です。
⑤onnacodomo『Another World』
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出店者:onnnacodomo
作者:onnnacodomo / @onnnacodomo
ブース:ZM-553
国:日本
onnacodomoは、グラフィックアーティスト・野口路加と映像作家・せきやすこによるクリエイティブユニット。コラージュやコマ撮りなどのアナログ手法を使ったビジュアル表現で、独自の世界観を築いています。2024年の東京近郊の風景の上にコラージュを施した本作には、「争いの絶えない現代社会を力強く生きていこう」というメッセージが込められています。
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作品には、ベトナム戦争を嘆いて作られた曲「What a Wonderful World」の歌詞が引用されています。また、人間の欲望のままに開発された東京近郊の街並みの上には、その土地で過ごしてきた魂や亡霊のような存在が表現され、平和とは逆行する世界の現状に警鐘を鳴らしています。近年、コラージュ技法はポップなアート表現として広く用いられていますが、本作はその技法を通じて「平和とは何か」を考えさせる意欲作となっています。
⑥YOU ARE HERE『Lost your phone number』
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出店者:YOU ARE HERE
出版:YOU ARE HERE / @youareherejp
撮影・執筆:Ahlum Kim / @ahlumkim
ブース:EN-005
国:日本
韓国生まれで東京在住の写真家・キム・アルムによる本作品は、親しい人々のポートレートから市場の果物まで、日本・韓国・中国といったアジアのさまざまな情景が織りなす写真集です。そこには写真のネガフィルムやプリントされた証明写真、作家自身の思い出が詰まった場所のレシートなどが収められており、まるで人生の記憶を早送りしながら見ているかのよう。
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タイトルの『Lost your phone number』には、来日後、韓国の幼馴染や旧友との関係が突如途切れてしまった写真家自身の体験が投影されています。写真集に収められたエッセイでは、その体験談が綴られており、かつて人々が電話番号だけで繋がっていた時期があったこと、そして現代社会ではいかにわたしたちがネットに依存しているかに気付かされます。誰かと出会うこと、そして忘れていくことについて深く考えさせられる一冊となっています。
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世界中から個性豊かなアートブックが集結したTABF。数々の魅力的な本の中から「どれをしようか」と悩み、一冊一冊を手に取って過ごした時間は、とても幸せでした。気になった作品はありましたか?