《shanai / #写真家の視る働く空間 》株式会社スープストックトーキョー 篇

株式会社スープストックトーキョーのオフィス

オフィスとは、多様な働き方の最前線。
写真家の目に映るオフィスの魅力とは、どんなものだろう。

オフィスのあり方が問われる今、細部まで工夫を凝らされたオフィス空間を写真家が切り取ることで「これからのオフィス」を考える。

今回は、株式会社スープストックトーキョーの本社オフィスを訪問。Soup Stock Tokyoは「世の中の体温をあげる」を企業理念に掲げ、“いつでも、誰にでも、おいしいスープを”という想いのもと、全国に約60店舗を展開する食べるスープの専門店。

Soup Stock Tokyoといえば、誰もが彩り豊かなスープを想像するだろう。しかも、20年で300種類以上のスープを作ってきた。季節ごと、店舗ごとにメニューが変わる。味も食材も異なるので、飽きることがない。それらのユニークなスープは、どのように生まれているのだろうか。

株式会社スープストックトーキョーのオフィス

shanaiを訪ねて明らかになったのは、ユニークなスープを生む秘訣は社内で育まれたアーティスト思考によって創られているということ。

気鋭の写真家による撮り下ろしカットと共に「shanai」を探訪する。

Photographer

加藤 新作 / Shinsaku Kato

兵庫県生まれ。アシスタントを経て2001年よりフリーランス。
雑誌や書籍、広告を中心にファッションから風景までジャンルにとらわれず写真を撮る。

HP:https://katoshinsaku.com/

お店のようなオフィス

株式会社スープストックトーキョーのオフィス
一見店舗のカウンターにも見える
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作業や打ち合わせに使われているフリースペース。
椅子はアルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)がデザインしたアントチェア。

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予約制の個人ブースも完備されている。オンライン会議をするのに便利な空間。

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個人ブースの奥にあるのは、まるでファミリーレストランのような「ファミレスエリア」。

中目黒のオフィスに移転するときに、4~6人がけのMTGスペースが必要だった。
ところがどうにもこうにも、空間に4~6人がけのMTGスペースが入らない。社内の設計チームがどうしようかとファミリーレストランで悩んでいたときに、ファミレスのスタイルを閃いたという。

新しいスープを生みだすテストキッチン

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テストキッチン。写真左はSoup Stock Tokyo商品開発担当シェフ・須山 裕之さん
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お皿も充実しているのはスタジオを兼ねているから。スープの撮影をおこなうこともしばしば。

テストキッチンでは日々新商品の開発や商品決定会がおこなわれている。 

編集部を迎えてくれたのは、Soup Stock Tokyo商品開発担当シェフ・須山 裕之さん、商品部 開発管理担当・佐久間菜央さん。

通年・季節メニューの開発だけではなく、「オマール海老のビスク」などの長年親しまれている定番商品のブラッシュアップも担当。フェルメール展(上野の森美術館)とのコラボレーンション企画「フェルメールの“牛乳を注ぐ女”のスープ」の開発や、フリーズドライスープの開発など、Soup Stock Tokyoにおける商品開発の中核を担っている。

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お客さんを呼んで料理教室をしたり、研修したり、社内コミュニケーションの場。

食材には一切妥協しないのも、Soup Stock Tokyo のこだわり。

Soup Stock Tokyo のスープは食材選びにもこだわり、その特性を活かして調理する。

株式会社スープストックトーキョーのオフィス
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試作したスープの香りに、自然と社員たちが集ってくる。ゆえに同社の社員は日常的にスープを食べるという。

「おいしいスープを食べてもらいたい」「素材本来のおいしさを届けたい」
その想いが、商品を作る判断基準。

産地まで訪ねて生産者の思いに向き合い、信頼できる食材をスープに使う。
300種類以上のスープはテストキッチンから生まれてきたのだ。

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点在するアート作品が醸成する社風、ユニークなスープを生む秘密

ユニークなスープは、いかにして生まれているのだろうか。

同社のオフィスの類を見ない特徴は、オフィスに点在しているアート作品だ。

株式会社スープストックトーキョーのオフィス
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例えばそれは、タイルアート。

全店舗ごとに異なるタイルアートは、創業者の遠山正道さんが描いた作品。店舗にはそれぞれまったく方向性の異なるタイルアートが飾られており、新店舗をオープンするたびに創業者の遠山正道さんが描いているという。

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不思議なオブジェのような作品「OTM(On the time machine)」
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創業者の遠山正道さん自身 Soup Stock Tokyo創業時には店長を務め店頭に立っていた。冷たい水での炊事場の仕事も含めてはじめてお客様にスープをお届けできる。オフィスに勤務するメンバーも毎日店舗に立っている仲間たちの仕事に敬意を払う気持ちを込めて作られた作品。

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すごくリアルなバナナが、頭に乗っている高級感のある石像。じつはバナナの部分はブロンズでできていて、優れた技術で作られた作品だ。

細部までこだわる心をスタッフにも感じて欲しい──。

こういったアート作品を通じて「ここまで自分の仕事にこだわって、やりきっていますか?」という問いを投げかけている。

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左にあるのは大西伸明さんの作品。レジンという素材を使い、それを塗装・エイジング加工して、リアルに仕上げている。花を生けているのが「KIGI」さんの作品。
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大西伸明さんのドラム缶

どう見ても鉄製のドラム缶にしか見えないが、これはドラム缶ではない。
ドラム缶を型をとって、樹脂で作って、そこに塗装してドラム缶を描いている。

「作品を通じて皆さんにお届けしたいのは『基本と、オリジナリティと、存在感』ということです。この作品は、彼の超絶な「技術」があって実現しています。そして、単にキャンバスの平面に細密に描く、というのではなく、立体として出現させた「オリジナリティ」がある。そして、見ての通り、作品としての「存在感」がある。 皆さんにも、こうなってほしいわけです。技術という基本を身に着けて、しかしそれだけで満足せず、一人ひとりの個性やオリジナリティ、得意技、経験やネットワークや興味などがあって、だから誰でもよくない、この人じゃなきゃだめ、と言われてほしい。」

引用:http://toyama.smiles.co.jp/archives/2458791.html
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エントランスに飾られているパズルのピースが欠けたシルバーの壁はChim↑Pomによるコミッションワーク
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Soup Stock Tokyoのスープには彩りがあるので“余計な色は使わない”というコンセプトが根底にあり、ロゴも黒一色で統一している。

オフィスも同じ考え方で設計しているので色数は少なく、木やモルタルなどの素材そのままの色を活かす。唯一、オフィスに点在する現代アートの作品たちが色を使っているため目を惹かれる。

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キッチンと同じ階にある会議などをするスタッフルーム

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絵画のみならず、写真、立体、パフォーマンス、インスタレーション、小説、漫画、都市計画を手掛けるなど表現領域は国内外多岐にわたる現代美術家・会田誠さんのアート作品

さいごに

株式会社スープストックトーキョーのオフィス
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今回は、株式会社スープストックトーキョーの本社オフィスを訪問した。
彩り豊かでユニークなスープは、どのように生まれているのか。それは、社内で育まれたアーティスト思考によって創られていると言えるだろう。細部までこだわる心、基本とオリジナリティと、存在感……。

さまざまなメッセージや価値観を発するアート作品から日々刺激を受け、オフィスから店頭へ。そして、私たちの暮らしに寄り添っているスープ。

「いつでも、誰にでも、おいしいスープを。」心のあたたまる一杯のスープは、shanaiから生まれている。