《shanai / #写真家の視る働く空間 》株式会社ユーザベース 篇

オフィスとは、多様な働き方の最前線。
写真家の目に映るオフィスの魅力とは、どんなものだろう。

オフィスのあり方が問われる今、細部まで工夫を凝らされたオフィス空間を写真家が切り取ることで「これからのオフィス」を考える企画「shanai / 写真家の視る、働く空間」。

今回は、株式会社ユーザベース(以下、ユーザベース)の本社オフィスを訪問。

ユーザベースは、「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」をパーパスに、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」ソーシャル経済メディア「NewsPicks」など、経済情報を軸とした各種サービスを提供する企業。ビジネス版のGoogleのような存在だ。

そんなユーザベースが“日本一のビジネス街”丸の内で本格始動したのは2022年7月のこと。

「『共創』が起こる場所」、「『熱』を生む場所」、「『象徴』となる場所」の3つをコアバリューにオフィスをデザインしたという。目指したのは「街」。気鋭の写真家による撮り下ろしカットと共に「shanai」を探訪する。

Photographer

小泉なみこ / Namiko Koizumi

1985年、大阪生まれ。2008年 大阪芸術大学 写真学科 卒業。2008年 株式会社 amana入社。2021年に株式会社 amana 退社し独立。広告を中心に活動中。

HP:https://www.koizuminamiko.com/
Instagram:@koizumi735

クリエイティブな発想が生まれる、街のような拠点。

東京駅から徒歩2分。エントランスをひとたびくぐれば、そこはまるで「ユーザベース・シティ」。ついさっきオフィスに足を踏み入れたと思ったのに、まるで海外の街角を歩いているような気分にさせる内装だ。思わず“異空間”という言葉がこぼれ落ちる。

その中でも一際目を引くのが、巨大なデジタルサイネージ。経済情報が絶えず映し出され、水が流れるようなアニメーションとともに画面が切り替わる。

ユーザベースのPRチームの髙田さんに話を伺った。

「円柱型のデジタルサイネージはおそらく世界初なのでは?と社内で言われています。オフィスを訪れるゲストの方の目にすぐ触れる“象徴”ですね。やはりインパクトがあるので、『すごいね!』と話が盛り上がります。ここに流れている情報はダミーではなく、リアルタイムにレンダリングして最新の情報を表示させています」

元は銀行跡地だったというこちらのオフィス。その面影はどこからも感じられないほどのイメージチェンジだ。この場所自体も、ボタンを上まで留めるようなきちっとした堅実なファッションから、配管剥き出しの無骨なファッションに装いを新たにすることになろうとは思いもしなかっただろう。

髙田さん「オフィスのキーカラーは赤。オフィスのすぐそばにある東京駅の赤レンガから着想を得ています。赤はこのオフィスにとって大事なアクセントですね」

“赤”であふれる書庫には、メンバーが各々持ち寄った本がたくさん。

「熱」が生まれるスケルトンな会議室。

ユーザベースのどこを見渡せど、壁やブラインドなど視界を遮るものが見当たらない。仕切りがあったとしても、壁はクリアで中の様子が伺える。

髙田さん「ユーザベースのメンバー全員が大切にするのは 『オープンコミュニケーション』のカルチャー。ここに移転する前は六本木にオフィスがあったんですが、そこも壁がなく開放的な空間でした。今回もその流れを汲んでいます。フリーアドレス制なのでメンバー同士の共創も生まれやすい環境ですね」

重役専用の会議室でさえもスケルトンだ。会議中に思わず立ち上がる姿など、白熱した議論が可視化されることで「共創」の熱が損なわれない。
アイデアが浮かんだらすぐ、いつでもどこでも気軽にミーティングできるように。オフィス内の至る所に作業スペースやホワイトボードが点在している。
社内にはイベントスペースが3つあり、社内の懇親会から外部登壇者を招いたセミナーまで多種多様なイベントが毎日のように開かれている。そのうちの一つである「Park」は約100人を収容できるスペース。この日はスクリーンを使いながら社内会議を行っていた。

窓の外には青々と生い茂る丸の内の並木が、オフィスのそこかしこにはグリーンが配置されている。オフィスのどこにいても常に自然を身近に感じられる。

高田さん「オフィス内の観葉植物は専任の植栽業者さんにメンテナンスしてもらってます。オフィスの中って息がつまりやすくなる場所だと思うんですけど、グリーンが視界に常に入ってくることで自然と心が癒されますね。私はリモート勤務の方が多いくらいですが、オフィス勤務の日に『やっぱりいいオフィスだな』と感じるのは緑が豊かだから、というのもひとつの理由かもしれません。オフィスの周りには多種多様な飲食店がありますが、オフィスがあまりにも心地よいせいかメンバーの多くはイートインよりも、テイクアウトしたお弁当を社内に持ち帰り、各々好きな場所で食べている印象です」

全長100メートルの“道路”があるオフィス。

オフィスの探索中、目を奪われたのが長い通路だ。全長はなんと約100メートルで、“ストリート”と呼ばれている。

髙田さん「道路があることでより“街らしさ”が出ますよね。通路が長いこともあり、移動にはキックボードを使うことも。オフィス内だけで8000歩くらい歩く日もあるほど。ストリートはさまざまな部署の人が行き交うのでコミュニケーションが生まれやすい場所ですね」

髙田さん「ストリートの両脇には、実際の道路に使用される縁石を配置しています。工事業者さんには『オフィスの内装に縁石を使ったのは初めて!』と驚かれました(笑)。ストリート沿いには電話ボックスを模したミーティングブースや、雑談できるバス停など、本物の街さながらのデザインに使い心地の良さをミックスさせています」

バス停とオフィスエリアを仕切る壁も、もちろんスケルトン。ホワイトボードとして使うこともできる。

髙田さん「執務エリアの一番奥は集中ブース。ここだけは本当にとても静かです」

ユーザベースが考えるオフィスとは?

髙田さん「ユーザベースのメンバーの国籍は16に及ぶなど国際色も豊か。全社ミーティングには必ず通訳さんが同席します。業務における責任を全うできるのであれば服装・労働時間帯・働く場所が自由という、自律性の高い組織ですね。もともと働き方が自由だったこともあり、地方在住のメンバーも多いです。現在は特に出社日数の制限はないですが、出社率は現在30%程度でしょうか」

「袖触れ合うも多生の縁」ということわざがあるが、ことわざ通りにオンライン上で袖が触れ合うなど絶対に起こらない事象のひとつ。日々のちょっとしたあいさつや、何気ない身振り手振り、何でもない雑談。これからのオフィスは今一度、偶発的なコミュニケーションとの出会いの場となっていくのだろう。いつも同じメンバーと居合わせないオフィスになったからこそ、決して触れ合うことのなかった袖と袖が触れ合っていく。リモートという概念にもあまりにも慣れすぎていたが、ユーザベースの新オフィスは「オフィスの本来あるべき姿」を思い出させた。