《shanai / #写真家の視る働く空間 》株式会社スペースマーケット 篇
オフィスとは、多様な働き方の最前線。
写真家の目に映るオフィスの魅力とは、どんなものだろう。
オフィスのあり方が問われる今、細部まで工夫を凝らされたオフィス空間を写真家が切り取ることで「これからのオフィス」を考える企画「shanai / 写真家の視る、働く空間」。
今回は、株式会社スペースマーケット(以下、スペースマーケット)の本社オフィスを訪問。
スペースマーケットは、「スペースシェアをあたりまえに」をミッションに掲げ、あらゆるスペースを時間単位で貸し借りするプラットフォームサービス「スペースマーケット」を運営する企業。様々な場所をネットで1時間以上15分単位から簡単に貸し借りできる「時間貸し」のマーケットプレイスとして、2014年にサービスをスタート。会議室、住宅、撮影スタジオ、カフェ、ビルの屋上など、2万を超えるさまざまなスペースが掲載されている。
そんな「スペース」を売りにするスペースマーケットが自らのオフィススペースを移転したのは、2021年6月のこと。テレワークという言葉が世の中に浸透していくさなかで、スペースマーケットはオフィスの在り方をどう捉えたのか?気鋭の写真家による撮り下ろしカットと共に「shanai」を探訪する。
Photographer
塩川雄也 / Yuya Shiokawa
1988年、福岡県北九州市生まれ。山口大学医学部保健学科卒業後、附属の大学病院で看護師として勤務。山口県宇部市にある山本写真機店との出会いから、人生を記録することの大切さを学び、写真の魅力に惹かれていく。写真家を志して上京後、青山裕企氏に師事。 2017年 写真家として独立。現在は東京を拠点とし、写真・映像に携わる。ライフワークとして自らの旅路を作品とし、国内外で制作発表を行っている。
HP : https://www.yuyashiokawa.com/biography
Instagram : @yuyashiokawa
Twitter : @yuyashiokawa
オフィス運用モデルもニューノーマルな時代へ。
まず迎えてくれるのはキッチン付きのラウンジスペース。新オフィスはこのラウンジスペースと執務スペースの2つで構成される。全体面積は旧オフィスの2倍に増床。
アパレルメーカーで使用されていた跡地をリノベーション。最大の特徴は天井の高さが4mもあること。開放感があって、そこにいるだけでも清々しい気持ちになる。
特筆すべきは、ラウンジスペース全体や各個室が実際にスペースマーケット上で借りることができるということ。ワークスペースは1席から借りることができ、ミーティングスペースやテレワークブースも併設。おまけに明治神宮駅から徒歩5分の好立地だ。
目をつけたのはオフィスの“遊休時間”だった。早朝や深夜だけでなく、出社率が下がったオフィスの会議室や座席が収益化するモデルを構築することで、移転前よりもさらに便利なロケーションが実現した。オフィスそのものがスペースマーケットの名刺のよう。
この場所の使い方についてコーポレートリレーショングループの倉橋さんに伺った。
「各会議室、テレワークブースはワークスペースとしてお貸し出しをスタートしましたが、使われ方は本当にさまざま。社会人の方がオンラインのミーティングでお使いになった日があったかと思えば、また別の日には学生さんが企業の面接でお使いになったり、またあるときは若い女性お二人がメイクの練習のためにお使いになったり…。」
「ラウンジスペースは様々なイベント開催でご利用いただいています。セミナーなどのビジネスイベントはもちろん、アイドルのオフ会、テレビ番組の収録やYouTuberさんが動画の収録でお使いになることも。人手が足りない土日もスムーズに対応できるよう、スマートロックや監視カメラなどでセキュリティを強化しています。」
「同じ釜の飯」でみんな笑顔に。
取材中、どこからか「シャカシャカシャカ…」と卵をかき混ぜるような音が聞こえてきた。音のする方へ目をやると、キッチンスペースで昼食を作る社員の姿が。
倉橋さん「実は移転前のオフィスにもキッチンがあったんです。その頃からお昼をオフィスのキッチンで作って食べる、という流れがありましたね。今の場所でもその文化は引き継がれていて、よくお昼頃にご飯が炊き上がるようセットするんです。そろそろお腹が空いてきたな、というときにちょうどご飯が炊き上がる音が執務室まで響いてきて『お昼だー!』ってみんな一気にテンションが上がります。夕方ちょっと小腹が空いてきたな、というときにも『チャーハン食べたいなぁ』とぼそっとつぶやくと誰かが作ってくれる、なんてことも(笑)。今日はオムライスを作ってるみたいですね。」
おいしそうな匂いに後ろ髪を引かれながら、執務スペースへと進んでいく。週1、または2回出社がルールで、出勤する人は1日平均20名ほどということもあり、オフィスに人はまばら。社員70名に対し、座席は30席ほどに絞っている。完全フリーデスク制であるため、その日の気分で働く場所を自由に選ぶことができる。人気エリアは光が差し込む窓際の席なのだそう。
スペースマーケットの男女比は6:4。平均年齢は31歳前後。メンバーは中途社員が中心で、経歴はさまざまだがそんな社員たちをつなぐのは、自社のタグラインでもある「場所のチカラで あなたにエール」という言葉。世の人々の“やってみたい”という思いに場所でエールを送れたなら、スペースの有効活用で“できること”が増えたなら——。そんな思いに共感するメンバーが集まった。
渋谷のシェアオフィスの一室で生まれた「場所の時間貸し」というビジネス。2014年に産声をあげるとその後は破竹の勢いで業績を伸ばし、2019年には東京証券取引所マザーズ市場へ上場するなど、ベンチャーらしい急成長ぶりを見せた。しかしその翌年、日本中で「誰もどこにも出かけない」という事態が起きると…?
倉橋さん「コロナが広まった直後はスペースの利用はピタッと止まりましたね。やはりそのころは“集まる”ということへの抵抗が大きかったので…。」
「ですが、スペースマーケットに掲載されているスペースは用途も場所も幅広い。そのため、すぐに新しい生活様式に、適応していきました。例えば『オンラインミーティングやテレワークの場所が欲しい』とか『不特定多数が集まる飲食店ではなく身内だけで食事会がしたい』など。在宅の時間が増加したことでYouTuberやTikTokerも増え、撮影スペースとしてのご利用も増えましたね。」
スペースマーケットが考えるオフィスとは?
世界を震撼させた流行り病は、「皆が集い、皆で創造する」という当たり前の社会活動を「スペース」が支えていたことを顕在化させた。何をするにも場所が必要で、場所があるからこそ可能性が広がる。それを体現しようと、混乱の真っ只中でいち早く“名刺”をグレードアップさせる重要性に気付いたスペースマーケットの先読み力にただただ圧倒されてしまった。スペースマーケットにとってオフィスとは、ブランドそのものを形にした場所なのだ、と腹落ちしながら帰路に着いた。
今回は“次世代”な、ちょっと変わったオフィスを探訪した。
今後も写真家と共に、写真の力を最大限に引き出す企画をお届けしていく。
次回の更新をお楽しみに。