《shanai / #写真家の視る働く空間 》株式会社パーク・コーポレーション 篇
オフィスとは、多様な働き方の最前線。
写真家の目に映るオフィスの魅力とは、どんなものだろう。
オフィスのあり方が問われる今、細部まで工夫を凝らされたオフィス空間を写真家が切り取ることで「これからのオフィス」を考える企画「shanai / 写真家の視る、働く空間」。
今回は、フラワーショップ「青山フラワーマーケット」を運営する株式会社パーク・コーポレーションの外苑前オフィスを訪問。
一般的なオフィスとは、ビル街にあり、広大なフロアにデスクがずらりと並ぶ、都会らしい空間を想像する。
いっぽうで、「青山フラワーマーケット」の姉妹ブランドである人間本来の感性を刺激・デザインを追求する空間デザインブランドparkERs(パーカーズ)がつくるパーク・コーポレーションのオフィスは“未来の公園“を体感できるワーキングプレイス。
人が過ごすオフィスには、自然が不可欠なのかもしれない。
そんなふうに思わせてくれる自然と調和した空間を、写真家とともに見ていきましょう。
Photographer
大林直行 / Naoyuki Obayashi
写真家。山口県出身。2018年、フリーランスとして独立。東京を拠点とし、人物や風景など様々な分野で撮影する。2020年8月に自身初の個展「おひか」を開催。写真集「おひか」を出版。
HP:https://naoyukiobayashi.com
Instagram:@naoyuki_obayashi
水辺には人が集い、コミュニケーションを誘発する。
parkERsが考える“未来の公園“を体感できるワーキングプレイスには中心に池があり、その周りには人が集えるように波紋状にデスクとチェアを配置している。
この水・人の風景を切り取ったエリアは『ウォーターフロント』と呼称され、中心にある池の水面には湧水や波紋、さざ波などの水の現象が発生するように設定されており、立体的な自然を感じられる工夫が施されている。
シンボルツリーが印象的な水辺の打合せスペースに人が集まる。
水面が時間を感じさせ、目を瞑ると水の音がして心地いい。
酒井さん:「オフィスのテーマを未来の公園にした時に、なにが心地いいと感じるのか知るために、チームで代々木公園に行きました。各々が自由に過ごしながら散策して、いろいろな風景を見ていたところ、水辺には人が自然と集まってくるということに気づきました。それがきっかけで、水辺に人が集い、新しくコミュニケーションが生まれるようなエリアをオフィスの中心に置くことを決めました」
「自然が隣にある」と気づきを与える室内照明
波紋がお迎えするエントランスエリア。
オフィスに足を踏み入れる前に、光のゆらぎと水の波紋が波打つ様子を眺めながら、静かな待合の空間でひとときを過ごします。
酒井さん:「植物を置けばいいという話ではなく、実際に体感しなければ、記憶に残らないですよね。電車の車窓からの景色とか、じつは覚えていないじゃないですか。雨粒がポタポタと落ちる波紋をみたり、水の匂いを感じて、『あ、今日は雨なんだな』って気付いて体感する。エントランスでは、公園の情景をイメージしたオリジナルアロマを設置し、緑の香りを感じることができます。見る、嗅ぐ、触る、聞く、そういった刺激で、自然が隣にあると気づきを与えるデザインをしています。」
会社のエントランスに波紋ランプを採用している理由は、来社した方に〝パーク・コーポレーションに来た〟ということを体感してほしいから。お帰りの際も、「本日はようこそおいでくださいました」と感謝の気持ちの演出だという。
出勤すると花が咲く。旬の花を生けるウィークリーフラワー。
在席の合図は週替わりに旬の花を活けた「ウィークリーフラワー」。
社員は出勤したら、座席にウィークリーフラワーを置く。
メンバーの人数や座る座席によって、オフィスのあちらこちらに花が咲く。
出勤することでオフィスが彩られていく空間演出なのだ。
青山フラワーマーケットを展開するパーク・コーポレーションの社員にとって、旬の草花は馴染みがある。
酒井さん:「花がちょっと元気なくなってきたな」とか、「新芽が生えてきたな」と、植物の成長する様子や旬を感じながら、自分たちの企画や職務をおこなってほしい。」
時の移ろいを感じるのも自然を楽しむこと。
在籍の目印としてだけではなく、オフィスに彩りと季節を届けることが狙いだ。
公園の要素が五感を刺激し、アイディアを生む。
床に間伐材が敷き詰められており、ワークチェアはなんとブランコ!
それはふつうのオフィスで味わえない刺激を与えるデザイン。
ブランコに座ると、パソコンを目の前にしていても、足は宙に浮く。
間伐材の上に足をつけても、平面の床とは、足先につたわる感触が違う。
それまでになかった脳への刺激を与えて、アイデアを誘発させることが狙いだ。
屋内で使いやすい、地球にやさしい土を開発
花や植物を使って空間デザインをしているparkERs(パーカーズ)が、「もっと地球に優しい土はないのだろうか」という疑問から開発したのは、オリジナル培養土「parkERs soil(パーカーズソイル)」。
「パーカーズソイル」はココヤシピートを主原料として、コーヒーの豆かす、ヤシの外皮をはじめとする、元々は廃棄されるはずだった資源に加えて、地中で共生する菌根菌をブレンドしているアップサイクルな土。
虫やその卵を含んでいる可能性がある山を掘削した土を含まないので、虫が苦手な人も安心して室内で使える。
オフィスの植え込みや、床材の一部は「parkERs soil」を練り込んでいる。
壁面緑化の究極体。生態系を再現し、循環する壁
壁面緑化と一体化したアクアポニックスの技術を応用した、水槽と一体化した壁面緑化は壁面から植物が濾過した水が水槽に流れ落ち、その水槽ではメダカが暮らし、糞などの有機物をつうじて栄養を蓄えた水がまた壁面の植物を育てる。
そんな自然本来の営みを表現している。
本物の自然のなかで過ごしているようなオフィスである
写真家・大林直行さんの作品の数々から、自然そのものの生命力を感じられたのではないだろうか。
アウトドアパークに入った瞬間に、漂ってくる草木の香り。
フォレストパークで過ごしていると見える、木漏れ日越しの光。
ウォーターフロントで聞こえるゆらぐ川の音、きらめく水面。
取材中、水の流れる音やゆらめく光、水や草花、土の匂いがまざりあって、涼しげな林に居るときのようなさわやかな気分になった。
これからのオフィスには、空間に自然を再現することによって、創造的かつ心地よく働く居場所ができるのかもしれない。
今後も写真家と共に、写真の力を最大限に引き出す企画をお届けしていく。
次回の更新をお楽しみに。