『幻友』発刊記念インタビュー。フォトグラファー興梠真穂とアイナ・ジ・エンドが歩んだ10年間
2024年4月に発刊されたアイナ・ジ・エンド初となる写真集『幻友(げんゆう)』。“友という幻”という温かい響きの言葉には、本書を撮影したフォトグラファーであり親友の興梠真穂との関係を表す“初恋に似た親友”という意味が込められているのだという。
今回はフォトグラファーの興梠真穂氏に、二人の出会いからアイナ氏と共に歩んできた10年間の日々、そして写真集への想いについて伺った。
──アイナ・ジ・エンド(以下アイナ)さんとは10年来の親友とのことですが、お二人が出会ったきっかけから教えてください。
アイナがBiSHに加入する前に入っていたグループのメンバーの子からTwitter(現X)を通して、「アー写を撮って欲しい」というDMが来て、その撮影で会ったのが出会いですね。
私は初対面の人とすぐに仲良くなれるタイプではないのですが、出会った日から向こうが「ご飯行こう!会おう!」みたいな感じで何度も連絡をくれて。最初何回かは断ってたんですけど(笑)。まあでも1回行くかと思ってご飯に行ったら「友達あんまおらんからいっぱい遊ぼう!」と言われて、気も合ったのでそこから毎日のように遊ぶようになったという感じです。
──出会いからずっとアイナさんを撮り続けていたのは、アイナさんと過ごす瞬間を形として残したいといったような想いがあったのでしょうか。
実はそういうことは全く考えていなくて、普通に友達と出かけてプリクラを撮るみたいな感覚で撮っているんですよね。なので、この瞬間を残したいとか作品撮りとかそういった意識は全くなく、なんていうか恋人を撮っているみたいな感じで撮っていました。
撮影しようと言って会った日でも、話に夢中になりすぎて結局何も撮らずに夜になってしまって帰りがけに「まあでもせっかくだし撮るか」とパシャっと撮ったものだったりとか、本当にそんな写真が多いです。
── なるほど。では、アイナさんに限らず友人と遊ぶ際にはよく写真を撮っていたということでしょうか。
……そう言われてみたらアイナだけかもしれないですね。アイナは写真との相性が良かったんだと思います。今まであまり深く考えたことはなかったのですが、普通に可愛いと思ったから撮っていたので「可愛いな、撮りたいな」と無意識に思っていたのかもしれないですね。
── タイトルにもなっている「幻友」は“初恋に似た親友”という意味が込められているということですが、そのような関係性を大人になってからも築けるというのはすごいことですよね。
SNSでも、「私には幻友がいないから2人が羨ましい」とか「いつか娘、息子にも幻友ができたらいいな」といったようなコメントをいただくのですが、人間関係って構築するより長く続ける方が難しいじゃないですか。お互いにしつこく関わりを持とうとしなければ関係性って深いものにはならないんですよね。
お互いへの向き合い方が多分私たちはすごくしつこいんです(笑)。そもそも友達になったのもしつこさから始まってますしね。
私たちも今まで数えきれないくらい喧嘩をしてきて、写真を撮っていない期間もあるし、でも諦めなかったから空白の期間が逆に意味のあるものになってると思うし、喧嘩をしたタイミングとか忙しくなったタイミングでもし諦めてしまったら、幻友とか親友にはなれないと思います。
── 以前からお二人の間でいつか写真展をやりたい、写真集を出したいという話をしていたと拝見したのですが、実際に『幻友』の計画が動き出したのはどういったきっかけだったのでしょうか。
始まりはアイナから写真展をやりたいという話があったことですね。BiSHが解散する少し前くらいに、アイナから話があるから会いたいという連絡が来て、なんとなく直感で写真展かな?と思っていたら、予想通り写真展をやりたいという相談でした。
それとは別にちょうどその頃MOVIE WALKERさんから写真集の話が持ち上がっていたので、それだったら写真展と写真集を連動しようという話になり、結果的にこのような形になりました。
──興梠さんの中で「こんな写真集にしたい」という構想はあったのでしょうか。
そうですね、カップルがたまに写真屋さんで作ったりしている、15ページくらいの薄いフォトアルバムみたいなものあるじゃないですか、その感じがベストだなと。誰に見せるわけでもない、2人だけが知っていて2人だけが持っているものとかそんな感じが理想だなと考えていました。
──写真集の中身についても伺いたいのですが、載っているお写真の中で、特に思い入れのあるものを教えてください。
1番好きなのはカップ麺が出来上がるのを待っている写真です。アイナが顔に怪我をしてしまって自宅待機の時にとりあえず食べられるものをバッと買ってアイナの家まで会いに行ったんですね。写真はその買っていったカップ麺にお湯を入れて、3分待ってるところなんですけど、本当に“無”の顔をしていてめっちゃ面白いんですよね(笑)。愛犬のぞっぴーが一緒に待っているところも好きです。
あとは、ホテルでベッドからベッドに飛び移っている写真もアイナらしくて好きです。普段からあんな感じなので、ありのままの姿というか、私が見ている普段のアイナの姿を一連の写真で見せることができたかなと思っています。
── 興梠さんから見たアイナさんの被写体としての魅力はどのようなところでしょうか?
(友達として見ているので)改めて被写体としての魅力と言われると難しいですね……。あえて言葉にするのであれば、カメラがあるかないかが関係ないところ、かなと思います。
いくら関係性が深いとはいえ、カメラを向けられた状態であそこまで素を出せる人もいないんじゃないかなと思いますね。カメラを向けられている瞬間とそうでない瞬間の境界線を全く感じさせない、そこがアイナの魅力かなと思います。
── 最後にお仕事でも俳優さんなどを撮られる機会が多いかと思いますが、興梠さんが撮影する上で大切にしていることなどはありますか?
“撮影の瞬間を楽しむこと”ですかね。
例えば撮影相手のことをすごく格好良く撮りたいと思っても、本人がその気分じゃない時ってありますよね。前回撮影した時はすごくテンションが高かったけど、今回会ってみたらそんな感じじゃないなとか、逆にすごく真面目な感じに撮りたいけど本人のテンションが高くて落ち着いた撮影をする雰囲気じゃないなとか。
そういった時に、元々の予定だったり自分の撮りたい画を押し通すのではなく、臨機応変に相手に合わせた撮影をすることで「今日の撮影楽しかったな」と思って欲しいなというのは常に考えています。
──きっかけになった出来事などはあったのでしょうか。
お仕事でとある女優さんを撮った時に強く思ったかもしれないですね。会う前、女優としての彼女のイメージではバチバチに格好良く撮ろうと思っていたんですけど、プライベート感の強いInstagramを拝見するとコミカルな感じだったので、撮影に女優として来るのかInstagramの感じで来るのかわからなかったんですよね。テレビで見た印象はワイワイ系でも実際に会ってみたらクールだったというのもよくあるので。
結局、実際にお会いしたらすごくハイテンションだったんですね。一旦は予定通りの影の強い格好良い写真を撮ってはみたのですが全然ハマってないなと。彼女もウズウズしているのを感じました。なので今日はクールな感じの撮影は難しいなと思って切り替えて、ちょっと踊っちゃいましょう!みたいな感じで撮ってみたらすごく楽しそうにしてくれたので、その時にこれは大事だなと思いました。
撮ろうとしているものと本人のテンションにギャップがあると、仕上がった写真もしっくりこなかったりするので、相手の気分に合わせて撮った方が自分としても納得するものが撮れるのかなと。格好つけてくださいって言われても人間だから格好つけたくない気分の時だって当然あるし。
撮影の仕事と言っても結局は人対人なのでそこを大切にしたいですね。
▼information
『幻友』
【著】アイナ・ジ・エンド
【写真】興梠真穂
【アートディレクション&デザイン】大橋 修・森谷崇識(thumb M)
【発売日】2024年4月6日(土)
【定価】¥2,700(税込¥2,970)
【仕様】A4変形版(225×297mm)/カラー128P
【発行】株式会社ムービーウォーカー
【発売】株式会社KADOKAWA
https://goods.moviewalker.jp/items/84723939
© MOVIE WALKER 2024 Printed in Japan
Text:浅井智子