中島百依子と是永日和の「好きこそものの上手なれ」|ep.1 初めまして撮影会
日本大学芸術学部のサークルを母体として、2020年に旗揚げされたユニット『ダウ90000』。結成以来、メンバーの中島百依子は、コンパクトフィルムカメラを手に、仲間たちの日常を切り取ってきました。
そんな彼女の胸の内に芽生えた「もっと表現の幅を広げたい」「初対面の人を撮影してみたい」という挑戦心。その想いが実を結び、写真家・是永日和との連載が実現!是永との交流を通じて、メンバー以外との撮影に挑戦しながら、自分らしい撮影スタイルを模索していきます。
第1回目となる今回は「初めまして撮影会」と題し、是永の撮影スタイルが気になって仕方がない中島が、是永の撮影現場に被写体として参加。
お互いを知らないなかで行われた撮影会。そこから中島が感じたものとは?撮影後の二人に話を聞きました。
▼撮影会で撮った写真はこちら
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中島百依子、初のソロ撮影!その感想は…?

ーー中島さん、撮られてみていかがでしたか?
中島:楽しかったです!それに私一人で撮ってもらうこと、たぶん初めてなんです。
是永:あら、そうなんですね。
中島:大学生のときに、写真学科の友達が撮ってくれる…みたいなことはあったんですけど。ダウ90000に入ってからは、そういう機会がなくて。めちゃくちゃ楽しくて、あっという間でした!
是永:ほんとですか!ありがとうございます。
中島:撮るスピード感も、はやくてびっくりしました。「次いきましょう」ってなって、パッて見たら、是永さんがすごく遠くにいて(笑)。ずっと追いかけてました。
是永:ゆっくり歩いていただいて全然よかったのに…!すみません。

ーー撮るのは、はやいタイプですか?
是永:はやいかもしれないです。ダラダラ撮るっていうのが、あまり性に合わなくて。短い時間で、ギュッと詰め込んじゃいます。
中島:じっくり時間をかけて撮っているんだろうなと、勝手に思ってました(笑)。
撮影前に「14時には終わらせます」って言っていたのも印象に残っていて。あれは、このあとに予定があるからではなく、感覚としてですか?
是永:感覚としてですね。撮影のときは、撮ることだけに集中するタイプなんです。だから、撮影前はモデルさんともあまりコミュニケーションをとらないですね。
中島:たしかに。撮ったあとの方が、おしゃべりしてくれました!
ーー撮影前にロケ地を一周していたと思います。あれは、何を確認していたのでしょう?
是永:どこで始まって、どこで終わるかを考えていた感じですね。始まりを撮るならここ、終わりを撮るならここって。
ふだんから、人によって撮る流れを変えていて。今日は、ポージングなしから始めて、徐々にポージングを増やしていく、っていう流れにしました。

逆に、僕の写真を見たことがない人を撮るときは、始めにポージングをしてもらうようにしています。今日の撮影でいうと、木に座って手をパカって広げてもらう写真を始めにもってくるイメージですね。

中島:おもしろい!その方が、モデルさんの緊張がほぐれるからですか?
是永:ほぐれるというか、「今日、こんな流れでいくよ」っていうのが分かって、モデルさんも安心できるかな?と思うので。
ーー今日の撮影で、ポージングなしから始めた理由は?
是永:中島さんには、大人しめな印象を持ったので、最初からグッていきすぎると、引いちゃうかもしれないと思ったんです。撮影だけならまだしも、撮影後にこのインタビューがあったので、何も話せなくなる可能性もあるなと。だから、空気を見ながら徐々にポーズを増やしてみようと思いました。
僕は、わりと頑張って動くぶん、周りがどんな風に感じるかは、ふだんから結構気にしてるかもしれないです。

ーーたしかに。撮影中も、気遣いが細やかでしたよね。中島さんが座るときに、自分のシャツをサッと敷いていたのが印象的でした。
是永:ありがとうございます。モデルさんにいろいろお願いするからには、なるべく楽しんでもらいたいなっていう気持ちがあって。ただ、シャツを敷いたりするのは、配慮をしようっていう感覚ではなく、「ちゃんと挨拶をしよう」みたいな、それぐらい当たり前の感覚でやってます。
ポージングアリでも、その人らしい写真は撮れる?
中島:是永さんのお写真って、綺麗なんですけどカチッとした雰囲気がなくて。だから、ふとした瞬間を撮影しているのかなって思ってたんです。
でも実際は、顔の角度とか縦のラインをしっかりと決めてくださって。それが、すごく意外でした。
是永:たしかに。「こうしてほしい」といった指示は、わりと誰にでもしますね。「自由に動いて」とはあまり言わないです。
特に、撮影に慣れている方だと、ある程度決まったポージングがあるんですけど、それは僕にとっておもしろくないというか(笑)。たとえば、手をパカッて広げるときも、顔に添わせるよりも、ピンと伸ばした方があどけなさが出るよなぁとか。表情よりも、ポーズの形の方が、結構重視してるかもしれないです。

中島:ポーズを決めているのに、なんであんなに自然な写真が撮れるんですか?
是永:これは感覚的な話なんですけど、自分の中にポーズの“型”みたいなものがあって。その型にモデルさんがハマったとき、そこから滲み出てくる個性があると思うんです。それをしっかりと撮ってあげると、その人らしさが滲んだ写真になるのかなと。

中島:なるほど。私、よくメンバーの写真を撮るんですけど、メンバーがキメキメでポーズするのは、あまり好きじゃなくて(笑)。自然じゃないから。でも、そこからもう一歩進んだら、メンバーの“らしさ”が出た写真が撮れるのかな。
是永:そうですね。たとえば、ポーズをとってもらったときに、カメラを下ろして、すぐまた撮るっていう手法を使うと、キメキメな感じは崩れると思います。
中島:たしかに!いつも相手がメンバーだから、「ポーズとらないで」て言いながら、カメラを構えて待っちゃうんですよ(笑)。でも、初対面の方を撮らせてもらう機会がこれからあるから、そういうときはどうしようかなって悩んでて。
是永:言っちゃえばいいんじゃないですか。「それおもしろくないです」って(笑)。
中島:(笑)。でも、これまでずっと、ポーズをとってもらうと自然な写真じゃなくなるって思い込んでいたけど、必ずしもそうじゃないのかなって思いました!
悩まないためにも、事前準備はしっかりと。
ーー是永さんは、理想の写真を撮るために、意識していることはありますか?
是永:僕は、写真がめっちゃうまいわけでもないし、学校で写真を学んだこともないので、「凡」であるという自負があるんです。
だから、とにかく準備をします。その場でポーズを思いつくこともありますけど、基本的に、撮る内容をあらかじめぜんぶ決めてますね。

ーー今日だと、どこまで決めてましたか?
是永:最後の遊具の写真以外は、ぜんぶ決めてました。大体、ノートに何を撮るかっていうのをぜんぶメモしていて。
中島:え、すごい。
是永:撮影前に、ポーズの詳細を書いてロック画面にして、撮影前にチラッと見てみたいな。撮影場所は、当日まで分からないことも多いんで、あくまでもポーズだけを決めている感じです。
中島:なるほど。撮影場所を見ながら、あらかじめ決めたポーズを、はめていくんですね。
是永:そう。悩んじゃうとだれちゃうし、勢いが僕にとっては大事なので。
ーーポーズは、どうやって思いついているんですか?
是永:ゼロからは生み出せないので、いろいろ参考にしてます。写真集とか、Xをよく見ますね。僕、インスタの写真はまったく見ないんですけど、Xのネタ投稿みたいな写真はめっちゃ見ちゃうんです。
中島:インスタの方が、写真が多いイメージでした!
是永:わりと見たものにすぐ影響を受けちゃうタイプなので、いろんな写真が載っている所を見るのはあまりよくないのかなって。
Xで流れてくる投稿を「なにこれ」って見ながら、自然とインスピレーションを受けているぐらいがちょうどいいのかなと思っています。あとは、音楽のライブ映像とかもよく参考にしますね。
中島:撮影中、手で数を数えてたじゃないですか。4秒ぐらいで撮るときもあれば、数えるのに撮らないときもあって。あれ、すごいドキドキしました(笑)。あれも、何かに影響を受けていたりしますか?

是永:あれは、ザ・ハイヴスっていうバンドの「ティック・ティック・ブーン」のライブ映像のから取り入れたやつなんです。これですね。
中島:あ、一緒だ!これはなんで取り入れようと思ったんですか?
是永:ふつうに、かっこいいかなって。
中島:じゃあ、数えてはいないんですか?
是永:一応、数えてはいるんですけど、「これで次の撮影にいこう」っていう、自分の中の区切りみたいな。止まっているのもあれなんで、なんか指動かそうかなって始めたやつです。
1個前のブームだと、「マイクスタンドで歌うのめっちゃかっこいい!」って思って、三脚をマイクスタンドに見立てるみたいなことやってました。結局、三脚の使い方が分かんなくて、撮影では蹴り倒してましたけど。
中島:ストーリーズで見ました!あれ、おもしろかったです。三脚をめちゃくちゃ調整するのに、始まるって瞬間に蹴ってて(笑)。
是永:そうそう。そういうので、緊張感をなくすみたいなことも意識はしてるんですけど、でも特に意味はないです(笑)。

撮影で明るく振る舞うべき?それとも素の自分でいくべき?
中島:私、めっちゃ人見知りなんですけど。初対面の人を撮るときがきたら、どんなテンションでいけばいいか迷っていて。是永さん、撮影中ジャンプされていたじゃないですか。あれは、自分をアゲるためですか?
是永:そうですね。あれで、オフからオンの状態に持っていっています。

中島:私の人見知りの種類なんですけど、バランスをとっちゃうタイプなんですよ。相手が静かだとめっちゃしゃべるし、相手が明るいといつもの感じで大人しくしてる。今日の撮影は、是永さんのテンションが高かったから、本来の自分のまま撮影に臨めたんですけど。
でも、私が撮る側になったら、私が雰囲気をつくらなきゃいけないじゃないですか。そのときに、テンションを上げた状態でいくのか、相手の性格に合わせるのか、どっちがいいんだろうって思って。オンの状態に持っていくなら、明るい感じの方がいいんですかね。

是永:あー、これはめっちゃ難しい!(笑)。僕は、他の撮影現場を見たことがなくて、ずっと一人でやってきたので、あの方法にたどり着いたわけなんですけど。僕のあのスタイルによって撮れなかった表情も、確実にあると思うんですよ。
結局、その場の空気を汲んで対応するっていうのが一番いいと思うんですけど、でもそれ、結構難しいじゃないですか。だから、やっぱり準備をしていくことが大切かなって思います。
自分のテンションは変わってもいいですけど、不安や緊張感とか出さないようにする。「どうしよう」って迷ってたら、相手も「大丈夫かな」って不安になっちゃうので。
中島:たしかに。今日の撮影も、是永さんがポーズをしっかりと指示してくれて、「信じていれば、素敵な写真になるんだろうなって」と思ったから、安心できました。

是永:ありがとうございます。僕は人見知りじゃないけど、あがり症っていうのもあって、ああやってポーズを事前にノートに書いていたりするわけなんですけど。
だから、不安さえ出さなければ、そのままの中島さんでいいと思います!静かめな方がいらっしゃったら、めっちゃしゃべりかけるのもいいと思いますし、話すのが好きな方がいらっしゃったらその方に任せたりとか。そういうのってやっぱ役割分担だと思うんで。
ーー中島さん、是永さんとお話をしてみていかがでしたか?
中島:マインド面で、参考にさせてもらえそうな部分がたくさんあるなと感じました。こういう話、ずっと聞いてみたかったんです……!
特に、ポーズをぜんぶ決めてきているっていうのは結構驚きでした。ポンって出てくるタイプの方かなと思っていたので、おこがましいかもしれないですけど、親近感が湧いたっていうか、私も頑張ってみようって勇気をもらいました!
それに、是永さんと話したことで、気付いたことがあるんです。私はずっと、自然体な写真を撮りたいと思っていたけど、本当はその人らしい写真を撮りたかったんだって。
自分では、その人らしさを出せないから、撮影する相手の自然体な姿を撮っていただけで、自分でその人らしさを引き出せるようになったら、もっと撮影の幅が広がる気がしました。
これから是永さんと一緒に、いろんな撮影ができるのが楽しみです。今後ともよろしくお願いします!
是永:ちゃんとお話できたのかな?って不安ですが、僕もすごく楽しかったです!この仕事で、同世代ってなかなか会わないですし(笑)。こちらこそ今後ともよろしくお願いします!


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次回は、中島百依子が是永日和と力を合わせて、ダウ90000のメンバー以外の撮影に挑戦!ぜひお楽しみに。
PROFILE

PROFILE
中島 百依子
1999/8/21生まれ。福岡県出身。日本大学芸術学部映画学科演技コース卒業。
2024年7月期の話題作テレビ東京「夫の家庭を壊すまで」では、主人公惑わす新入社員松崎和歌子役を好演。普段の活動の傍ら、メンバーの日常や風景などをフィルムカメラで切り取っている。
・J-WAVE「GURUGURU!」毎週火曜22:00〜24:00
・ダウ90000第7回演劇公演「ロマンス」5/14(水)〜 ※4都市開催
PROFILE

PROFILE
是永 日和
2000年愛知県出身。立命館大学産業社会学部卒業。2022年10月に個展『日日是好日』。
@hiyori_korenaga @hiyorikorenaga https://korenagahiyori.com