目で見た感動をそのまま表現する。OM-3のライブGNDを用いた街風景|写真家・おおたに。

はじめまして。写真家のおおたに。と申します。

「人類が生きた証を残したい」という想いから、過去と現在に繋がりが感じられるような光景を求めて日本全国の写真撮影を行っています。

これまでさまざまな場所で撮影をしてきましたが、その撮影環境は毎回まったく異なります。本来であれば、環境ごとにレンズフィルターを用意したいところですが、高価なものを都度揃えるのはコスト面から現実的ではありません。

そのため、白飛びや黒つぶれが起きそうな場面では、あえて露出を変えて複数枚撮影し、レタッチ時に調整できるようにしています。しかしこのスタイルでは、明暗差が激しい状況では撮影を避けざるを得ず、表現に制限がかかると感じていました。

そんななか、OM SYSTEMのミラーレス一眼カメラ「OM-3」に搭載されたライブGND(ライブグラデーションND)機能を試す機会をいただきました。ライブGND機能とは、カメラ内部でGNDフィルターの効果を再現できる機能のことです。

本記事では、レンズフィルター未所持の僕がライブGND機能を実際に使って感じたことや、街中での風景撮影においてライブGND機能を使用するメリットについてお伝えします。

GNDフィルターとは?

そもそもGNDフィルターとは、レンズに入ってくる光を部分的に抑えるための「グラデーション減光フィルター」のことです。通常のNDフィルターが画面全体を減光してくれるのに対し、GNDフィルターはフィルターの半分が暗く、もう半分が透明になっています。

NDフィルターについて詳しく知りたい方はこちら
>街中撮影の差がつく“減光表現”。OM-3のライブNDを使った撮影テクニック|写真家・品川力

これにより、明るすぎる空の光だけを抑えられるなど、空と地上の明暗差を整えることができます。特に、画角に強い太陽光が入る朝や夕方など、明暗差の激しい場面では大きな効果を発揮します。

以下は、カメラの設定を同一にした状態で、GNDフィルターを使用した場合と、未使用の場合の比較写真です。

(左)GNDなし(右)GNDあり

GNDフィルターを使用することで、地上の黒つぶれを抑えて空と地上の明暗差を整えることができました。このように同じ設定でも、GNDフィルターを使うことで、地上の明るさを損なうことなく空の白飛びを防ぎ、肉眼で見たときに近い露出で撮影できます。

初心者でも安心!OM-3のライブGND機能

このGNDフィルターの効果を、高度なデジタル処理で再現したのがOM SYSTEMのOM-3に搭載された「ライブGND機能」です。

この機能は、フラッグシップ機である「OM-1 Mark II」にも搭載されていますが、OM-3との相性は特に抜群だと感じました。というのも、OM-3はカメラ自体が非常に軽量・コンパクト。そのため、フットワークが重視される街歩きのスナップに最適です。

そのうえで、風景撮影で威力を発揮するGNDフィルターの効果を得られるため、街中で出会う印象的な光景を、逃さず捉えることができます。機動力と表現力を両立した、これ以上ない組み合わせだと感じました。

ライブGND機能の最大の特長は、GNDの段数(3種)とフィルタータイプ(3種)をそれぞれ組み合わせることで、合計9種類の効果をカメラ一台で使い分けられるところ。

そのため、段数やタイプごとにレンズフィルターを用意する必要がなく、コスト面で大きなメリットがあります。さらに、フィルター径に左右されないため、装着が難しい超広角レンズや魚眼レンズでもフィルターの効果を得られます。また物理的にレンズフィルターを何枚も持ち運ばなくていいところも、うれしいポイントです。

減光レベルを調整できる3つのGND段数

ここからは、ライブGND機能の段数とフィルタータイプのそれぞれの表現の違いについて、実際に私が撮影した作例をもとに説明します。

段数は、GND2(1段分)、GND4(2段分)、GND8(3段分)の3種類あり、数字が大きくなるほど減光量が増え、より強く光を抑えることができます。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II 12mm(35mm判換算:24mm)1/25秒 F10 ISO200 ±0.0EV

比較画像を見ていただくと分かるとおり、GNDなしの状態では、橋の明るさに露出を合わせているため空が白飛びし、色彩が失われています。ここに、ライブGND機能を使って段数を上げていくと、白く飛んでいた空に朝焼けの階調が徐々に戻ってきているのが分かるかと思います。

境界線のなだらかさをコントロールする3つのフィルタータイプ

グラデーション効果が切り替わる部分のなだらかさを調整できるフィルタータイプには、 Soft(ソフト)、Medium(ミディアム)、Hard(ハード) の3つがあります。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II 40mm(35mm判換算:80mm)1/125秒 F8 ISO200 -1.7EV

タワーから街を見下ろすこのカットでは、空に露出を合わせると、どうしても手前の広大な街並みが暗く沈んでしまいます。このとき、空と地上の境目をどう処理するかが作品の印象を左右します。

写真の黒い部分に注目すると、フィルタータイプごとに以下の違いがあることが分かるかと思います。

Soft:
どこから減光が始まっているか分からないほど、境界線が非常に緩やか。山並みや建物が入りくんだシーンに最適。

Medium:
適度ななだらかさで、今回のような遠景の街並みに最も使いやすいタイプ。

Hard:
境界線がはっきり描写されるため、地平線や真っ直ぐなビルのラインなど、明暗が直線的に分かれている場所におすすめ。

直感的な調整を可能にするライブ操作

ライブGND機能には、もう一つ大きな特長があります。それは、減光効果をモニターやファインダーでリアルタイムに確認しながら調整できる点です。

GND段数やフィルタータイプを切り替えると、画面上の露出がその場で変化します。レンズフィルターを交換する手間なく、仕上がりをイメージできるため、初心者でも迷いのない露出調整が可能です。

さらに、減光する境界線の位置や角度もカメラ内で自由に指定できます。たとえば、山並みやビルの屋根など、明暗の境界が水平ではなく斜めなことも少なくありません。そうした絶妙な角度にも、ライブGND機能なら指先ひとつで自在に対応できます。

物理的なレンズフィルターのように、角度を細かく確認しながら手で回転させる必要はなく、カメラを構えたまま直感的に調整できるのは、機動力が求められる撮影において大きな魅力だと感じました。


また、カメラを横位置から縦位置へ構え直した際には、カメラの向きに合わせてライブGNDの向きが自動で追従。構図を変えるたびに設定をやり直すストレスがないのも、うれしいポイントです。

ライブGND機能で作品はこう変わる!

ここからは、ライブGND機能で作品がどう変わるのか、活用シーンごとに作例を用いて紹介していきます。

①黒つぶれを抑える

(左)M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO(35mm判換算:16mm)1/125秒 F9 ISO200
(右)M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO(35mm判換算:16mm)1/1000秒 F9 ISO200 Live GND(GND 8, Soft)

ライブGND未使用時は、空の綺麗な青色に露出を合わせると手前が暗く沈んでしまっていました。

そこで、手前の被写体に露出を合わせつつも、ライブGNDで空の光を適切に抑えることで、黒つぶれしていた部分のディテールを引き出し、肉眼で見た印象に近い階調を再現することができました。

ちなみに、こうした黒つぶれを補うのに適しているのが、朝焼けや夕焼けなどの空が美しく染まる時間帯。

M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 7mm(35mm判換算:14mm)1/30秒 F9 ISO640 -0.7EV Live GND (GND 4, Soft)
M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 7mm(35mm判換算:14mm)1/40秒 F9 ISO640 -0.7EV Live GND (GND 4, Soft)

このようなシーンでは、空の白飛びを防ぐために露出を抑えて撮影します。しかしその結果、画面下部のシャドウ側(地上側)が暗く沈み、風景本来の広がりが損なわれてしまいます。

そんなときに、地上側に露出を合わせ、空側(ハイライト側)にライブGNDを設定して減光することで、沈みがちな暗部のディテールを保ちながら、夕焼けの繊細なグラデーションも同時に表現することができます。

また、以下のような写真の場合、黒潰れを抑えることで地上に差し込む光を写し、ドラマチックな一枚に仕上げられます。

M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 12mm(35mm判換算:24mm)1/80秒 F8 ISO200 ±0.0EV Live GND (GND 8, Soft)

②白飛びを防ぐ

(左)M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 7mm(35mm判換算:14mm)1/50秒 F8 ISO200 ±0.0EV
(右)M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 7mm(35mm判換算:14mm)1/50秒 F8 ISO200 ±0.0EV Live GND (GND 8, Soft)

主役となる建物に露出を合わせると、空が眩しすぎて真っ白に飛んでしまっていました。

そこでライブGND機能を活用。被写体に露出を合わせつつ、空の明るさを調整することで白飛びを防ぎ、空の青さや雲の立体感も表現することができました。

ちなみにこの場所は明暗差が激しいため、これまで日中の撮影を避けてきた風景の一つ。しかし、ライブGND機能によって、美しい光を手持ちで捉えることができました。

また、以下のような、建物が立ち並ぶ暗い場所で、被写体に露出を合わせながら空の白飛びを抑えると、空の青さがコントラストを生み、建物の存在感をより強調できます。

M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 7mm(35mm判換算:14mm)1/100秒 F9 ISO200 ±0.0EV Live GND(GND 8, Soft)

③明暗差を強調する(応用)

(左)M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 7mm(35mm判換算:14mm)1/60秒 F10 ISO200
(右)M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 7mm(35mm判換算:14mm)1/80秒 F10 ISO200 -1.0EV Live GND(GND 4, Medium)

ライブGND機能に慣れてきたら、「明暗差を整える」という本来の目的をあえて逆の発想で活用してみると、より幅広い表現が楽しめます。この写真は、建物に斜めにライブGNDをかけ、画面右下の暗い領域をさらに一段暗く落とすことによって、ビルの持つ緊張感や重厚感を意図的に演出しました。

都会のビル群は、シャドウ部分をさらに深く落とし込むことで、その存在感をぐっと際立たせることができます。

M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 7mm(35mm判換算:14mm)1/160秒 F10 ISO200 ±0.0EV Live GND(GND 8, Soft)

また、光や反射を強調したい場面でもこの使い方は効果的です。こちらは、椅子に映り込む名古屋テレビ塔と美しい光を捉えた一枚。

M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO(35mm判換算:16mm)1/500秒 F8 ISO640 ±0.0EV Live GND(GND 4, Soft)

光を受けて輝く水面ではなく、あえて空側にライブGNDを設定し、画面上部の明るさを抑えることで、相対的に椅子への反射光を浮かび上がらせました。
明暗をあえて際立たせることで、写真全体に立体感を生み出し、見る人を引き込む力を持たせられたと感じています。

まとめ

正直に言えば、今のデジタルカメラの性能やレタッチ技術があれば、GNDフィルターがなくても「形」にすることは可能です。私自身、これまでレンズフィルターを持たず、なんとか工夫するスタイルで撮影を続けてきました。


しかし、実際にライブGND機能を使ってみて感じたのは、「カメラ内にフィルター効果を得られる機能があること」が、想像以上に撮影者の心を軽くしてくれるということ。これまで明暗差の激しいシーンを前にすると、無意識にシャッターを切るのを諦めたり、場所を変えたりしていましたが、この機能があることで「どう表現できるだろう」と前向きに向き合えていることに気付きました。

もちろん、高価なレンズフィルターでしか届かない世界もあるでしょう。それでも、OM-3のようなコンパクトな相棒にこうした機能が備わっていることで、これまで難しいと避けていた被写体にも踏み込めるようになる。それによって街スナップの表現の幅もぐんと広がるはずです。

私もこれから、自分のスタイルを大切にしながら、こうした新しい技術も選択肢として取り入れ、まだ見ぬ「人類が生きた証」を求めて旅を続けていこうと思います。皆さんも機会があれば、この新しい撮影体験をぜひ一度試してみてください。

▼Information

OM SYSTEM OM-3

「OM-3」は、フラッグシップモデルである「OM-1 Mark II」とほぼ同等の高画質・高性能を備えながら、500mlのペットボトルよりも軽いコンパクトさを実現した、デイリーユースに最適なカメラです。ライブNDをはじめ、ライブGNDや多重露光撮影といったコンピュテーショナル フォトグラフィ機能を搭載し、これまでにない新しい撮影表現を可能にします。

サイズ:約139.3mm(W)x 88.9mm(H)x 45.8mm(D)
質量:約413g(本体のみ)
WEB:OM-3 商品ページ