俳優とフォトグラファー、そのあいだで。古屋呂敏が見つめる“二つの視点”

2026年1月期にドラマ3本に出演。さらに映画『愛のごとく』の主演を務めるなど、いま注目を集めている俳優・古屋呂敏。

モデルとしてキャリアをスタートし、スチール撮影や映像制作など裏方の仕事にも携わってきた彼は、その後ふたたび俳優として表舞台へ。現在は「俳優」と「フォトグラファー」という二つの顔をあわせ持つ、稀有な存在だ。

その二つの視点は、どのような相乗効果を生み、それぞれの活動にどんな広がりをもたらしているのか。唯一無二のポジションを確立する彼に、その現在地について聞いた。

PROFILE

古屋 呂敏

PROFILE

古屋 呂敏

1990年生まれ。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人。 日本の高校を卒業後、ハワイ州立大学、のちにマサチューセッ ツ州立大学アマースト校に進学。 俳優のみならず、フォトグラファー、映像クリエイター「ROBIN FURUYA」としても活動。
2022年には初の写真展「reflection(リフレクション)」、2023年には第2回写真展「Love Wind」、2025年にはTHE GALLERY 企画展「MY FOCAL LENGTH」を開催。

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カメラで魔法をかけたいと、フォトグラファーの世界へ

――俳優・クリエイターの双方で活躍されている古屋さんですが、カメラを手に取ったのは、どんなきっかけだったのでしょうか。

20代でファッションモデルとしての活動をスタートしたんですけど、周りにいるフォトグラファーさんたちに憧れてカメラを触りだしました。

フォトグラファーさんが撮ると、どんなに自信がないときでも自分が綺麗でカッコよく写るんです。それがまるで魔法をかけてもらっているみたいだなと感じて、僕も誰かに同じ経験をしてもらえたらなと思いました。

――そのときから、表舞台と写真の仕事を両立したいと思っていたのでしょうか?

全然そんなことはなかったです(笑)。最初は本当に遊びだったんですけど、自分がやりたいことを続けていくうちに、自然と撮影仕事が増えていって、気づいたら二つの軸で活動していたという。

一つの作品の中で役者と裏方の仕事が入り混じるようになったのも、ここ1~2年あたりだと思います。

――フォトグラファーという、いわゆる裏方の仕事をするようになって、何か気付きはありましたか?

一つの作品を作るうえでどれだけの方が準備に携わっているのか、という部分を知れたのは大きいですね。役者はスケジュールが届いて撮影に入って……という感じなので、制作にどれだけの人、時間、お金がかかっているのかを把握しにくいんです。それを僕は知っているので、やっぱり作品一つひとつに対する想いはより重くなりますね。

共演者ならではの“ズルさ”は、ほしい表情を引き出すための武器

――俳優とフォトグラファーの仕事の両立というと、現在放送中のドラマ『親友の「同棲して」に「うん」て言うまで』では、出演者でありながらキービジュアル撮影も手がけていますよね。撮った写真から主人公の湊と航の距離感が伝わってきます。

ありがとうございます。原作漫画を拝読したときに、二人の友情の延長線上には、恋愛感情が存在すると思ったんですよね。だから、友情の中で生まれる心の揺らめきを表現できたらいいなと思って。それで、「こういう場所でこういうふうに撮りたい」「二人がこんな感じに写ったらどうですか」みたいに提案しました。

キャプション:©ろじ・libre/『親友の「同棲して」に「うん」て言うまで』製作委員会

――キービジュアルの方向性は、古屋さん主導で考えたのでしょうか?

アートディレクターと一緒に作り上げています。プロデューサーやディレクターも含めたみなさんと一緒に、ロケハンもしていて。

僕はクライアントワークが多いタイプのフォトグラファーなので、我を出すというよりは「こういうものがほしい」という要望に対して最適解を出すのが得意なんです。

――表現者でもあると、ご自身の色を出したい気持ちもあるのかなと思ったのですが。

ですよね(笑)。「この人ってこういう写真を撮るよね」というイメージを作ったほうがクリエイターとしてはいいのかもしれないけど、今はそれよりも誰かが喜んでいる姿を見るのが楽しいんです。

だから綺麗なポートレートも撮るけど、尖ったファッション系の写真も求められれば喜んでやるし。自分を出す作品は、個人的なプロジェクトとして表現しようと思っています。

――キービジュアルの撮影にあたり、役者同士だからこそ捉えられたものはありますか?

ドラマの撮影後にキービジュアルを撮ったので、主演の二人は役者としての僕を知ってから、フォトグラファーとしての僕と向き合うことになったんです。

だからたぶん、僕が小さいカメラで撮ると思ってたんでしょうね。長いレンズと大きなカメラを持って、照明を組んで撮影していたら驚かれました。「呂敏さん、そんなガチなの!?」って(笑)。それで空気がほぐれたのは、僕だからできたのかなと思います。

キービジュアルの撮影中

――同じく俳優・フォトグラファーの両面で関わっているのが、『ぜんぶ、あなたのためだから』。本作では劇中に登場する写真を撮影したそうですね。結婚式の前撮り写真の撮影も、共演者ならではの距離感が活かされそうです。

撮影したときは、藤井流星くんと井桁(弘恵)ちゃんがまだ親しくなる前だったんですけど、なるべく幸せな空気感は漂わせたくて。ただ物語の性質上、井桁ちゃんにはそこまで笑顔になってほしくないし、その微妙なラインを考えて撮りました。

なかなか難しいディレクションですけど、その前から僕は二人と共演してコミュニケーションを取っていたので、指示はしやすかったです。少し恥ずかしいようなシュチュエーションも「え~!」って言いながらやってくれましたし(笑)。

――いい意味で気を遣わずにガツガツいけるのは、俳優同士の強みですよね。

共演者ならではのズルいところではありますよね。でも、二人に気を遣うよりもドラマを見る人がどう思うかのほうが大事だから、ゴリッと行くときはやっぱり行きます。それが作品のためなので。

――素敵な考え方です。また、七五三掛龍也さんが演じるカメラマンの桜庭のアトリエにあるモノクロ写真も古屋さんの作品だとか。

そうなんです。プロデューサーさんが僕のInstagramを見て「呂敏の撮る写真の世界観が好きだから、桜庭のアトリエに飾りたい」と言ってくれて、提供させてもらいました。個人的には、ああいう引き算が多い写真が一番好きなんですよね。

古屋さんが提供したモノクロ写真

求められているものを表現する。演技と撮影に共通するもの

――役者とフォトグラファーの脳を切り替えるために実践していることはありますか?

音楽の存在が大きいかもしれないです。毎回、作品に対して何かしらの曲を当てていて、役に入るときはその音楽が切り替えに役立っています。

『ぜんぶ、あなたのためだから』はサスペンスなので、映画『ジョーカー』のサントラを聴きました。今放送している『教えてください、藤縞さん!』では、韓国の『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』のOST(オリジナルサウンドトラック)を聴いてたかな。

――古屋さんの中で、演じることと写真を撮ることは似ていると思いますか?

最適解を見出すという意味では、近いのかなと思います。

自分がいいと思う芝居なんていくらでもできるけど、それが果たして作品にとっていいのかというと、また別で。特にドラマや映画は、あくまでも監督のものという意識が強いです。

最近でいうと、僕が主演を務めた映画『愛のごとく』では、「監督が思う最適解ってここだよね」というところを探って、僕なりの主人公の表現を見つけていきました。演技のそういう部分は、クライアントに「どんな写真を撮ってほしいですか?」と聞くのに近いのかなって。

――演技の現場で、フォトグラファーの視点が出る瞬間はありますか?例えば、画角や光の回り方がわかるからこそ、撮られるときに立ち位置を変えるとか。

本来であれば、役者としてそれはよくないんですよね。だって、その世界を生きている登場人物は、画角とかそんなことを考えないじゃないですか。考える余裕があるということは、その人になりきれてないということなので。

でも、例えばキスシーンでは女性の顔が大きく映ったほうが綺麗だから首の振り方を変えたり、顔に光が当たるように立ち位置を変えたりしちゃう瞬間はありますね。

――“作品のために”という意識が常にあるがゆえの立ち回りですよね。ちなみにご自身が俳優だからこそ、同じ俳優を撮るときに気が付くことはありますか?

表現者って、みんなクセがあるんですよね。見られることに慣れている子とか、自然体でいるのが得意な子とか。同じ役者でもいろんな性格の方がいるので、そこに合わせてクリエイティブのプロセスは変えます。

例えば、モデル経験が長い方だと、フォトグラファーがほしい顔を簡単にできちゃうんですよ。でも、みんなが見ている顔を撮っても面白くないから、「ちょっと砕けてみる?」と言って、普段と違う表情を引き出してみたりしますね。

また、女性の俳優さんに「彼氏と前日に喧嘩して、朝起きてダルくて、でもLINEするのは面倒で……そういう瞬間の顔できる?」と世界観を提示すると、グッと色っぽくなったりして。そういうコミュニケーションを取りながら撮れるのは、僕が役者をやってるからこそなのかなって思います。

――お話を聞いていると、古屋さんは常に“作品にとっての最適解”を考えている印象があります。今後は監督業なども向いていそうですね。

欲を言ったら、ドラマの企画をして自分が演じるとか、0→1の部分から作品に関わることができたら面白いだろうなって思いますね。

僕はものづくりの根幹に触れたいタイプの人間で、やっぱりクリエイティブが好きなんですよ。だから将来的には、そういうこともキャリアの視野に入れていますね。

――先ほど「自分を出す作品は個人的なプロジェクトで」とおっしゃっていましたが、個人的に撮ってみたいテーマはありますか?

父がハワイ出身で日系アメリカ人なんですけど、ハワイ島に住む日系アメリカ人2世や3世のモノクロのポートレートを撮りたいと思っています。

ハワイの方は日本人に優しいんですけど、それって先人の日系アメリカ人が努力してきたからなんですよね。だからそういった先人に対してリスペクトがあるんです。

でも、先人たちがどんどん亡くなられていて。だから今のうちに、その方々が見た景色や皺として刻まれた功績を、逃さないように撮りたいです。そうやってルーツに向き合うことは、自分のためにもなると思うので。撮りためた写真で、いつか個展もしてみたいですね。

――最後に、表現者としての夢を教えてください。

目の前の仕事を淡々と、大切にこなしていくのが僕らしいかなと思いますね。僕は、地に足ついてるタイプというか、むしろちょっと埋まってるというか。めり込んでる系男子なんです(笑)。だから。あんまり大きい夢とかはいいかな(笑)。

僕は、社会経験もあるし、クリエイターとして他の役者さんよりも多く人と接しているので、それは自分の強みだなと思っていて。表現者としてはそこを活かすと同時に、一人の人間としてちゃんとしていたいという気持ちが強いですね。

Interview&Text:神保未来
Photo:真田英幸
Edit:しばた れいな