ネットでは見つからない、映像制作の裏側を徹底トーク!CP+2025トークショーレポート【ソニーマーケティング×CURBON「撮りたい映像」を形に vol.4】

2025年2月27日(木)〜3月2日(日)にかけてパシフィコ横浜で開催された、カメラと写真映像のワールドプレミアショー『CP+2025 CAMERA&PHOTO IMAGING SHOW』。今回は、熱狂に包まれた会場内の様子と、『撮りたい映像を形に。ネットでは見つからない、映像制作の裏側を徹底トーク ~ソニー×CURBON~』と題し、映像制作におけるアレコレが第一線で活躍するクリエイターの視点でざっくばらんに語られた対談の内容をレポートする。

来場者を魅了した最新機材での撮影体験

来場者総数55,791人を記録した『CP+2025 CAMERA&PHOTO IMAGING SHOW』。首から愛機を下げた来場者たちが思い思いに各ブースを楽しむ中、ひときわ大きな盛り上がりを見せていたソニーブース。剣道やテコンドーの選手たちによる大迫力の実演撮影体験やα、Cinema Line、VLOGCAMをはじめとしたソニーのラインアップ展示、講師のアドバイスのもと「αcafe表現レシピ」をベースとした撮影を楽しめるコーナーなど、計17のバラエティに富んだコンテンツが登場、注目の新製品を体感できる貴重な機会とあり、撮影体験では機材を手に取り熱心にファインダーを覗く人の姿も多く見られた。

また、ワークショップ&撮影体験コーナーには、タッチ&トライ用機材として、CineAlta BURANOをはじめ、Cinema Line FX6/Cinema Line FX3、そしてCinema Line FX30を配置。ムーディな空間セットと俳優の演技をシネマカメラで撮影することができるという貴重なシチュエーションに客足は絶えず、その高い映像表現力に多くの人々が魅了される様子が窺えた。

今回、展示・撮影体験コンテンツと併せて、ブース内ではワークショップコーナーにおいてクリエイターたちによる映像制作やカメラについてのトークショーも開催。訪れた来場者たちの興味関心を惹いていた。

そして、開催最終日となる3月2日に実施され多くの関心が寄せられた『「撮りたい映像」を形に。ネットでは見つからない、映像制作の裏側を徹底トーク ~ソニー×CURBON~』。D.O.P フォトグラファー・大川原 諒さん、映像ディレクター・Ryo Ichikawaさん、ビジュアルアーティスト/フォトグラファー・霜自由さん、そして司会進行役にカメラマン/モデル/マーケティングプランナーの名取五葉さんの4名が登壇し、それぞれの専門分野の視点から、通常は表に出ない映像制作の段取りや制作体制の実情について率直に語り合った。

まずはおさらいしておきたい映像制作のワークフロー

左から大川原 諒さん・Ryo Ichikawaさん・霜自由さん・名取五葉さん

トークイベントは、普段ディレクションと並行して撮影、プランニング、プロップスタイリング等、制作に幅広く携わるという霜自由さんからの映像制作に関するリアルな疑問に、フォトグラファーからキャリアをスタートしビデオグラファーとしても活躍中の大川原さんとCMやMVなど多岐にわたり作品を手がけるRyo Ichikawaさんの両者がそれぞれのポジションと経験から回答するかたちで進められた。

霜自由:まずひとつ目のお題は、「映像制作におけるワークフロー」について。僕は、ディレクターでスチールも映像も扱うことがあるんです。そういうときに「たくさんの人が関わっているけれど、それぞれの役割とはなんだろう?」って感じることが多いんですよね。

名取:ここで、映像制作のワークフローを図にしたものをご用意しました。併せてこちらをご覧ください。

霜自由:左から右へ、真ん中がワークフローで下半分がタスク、上が関わっている人々ということですね。

Ryo Ichikawa:まず、依頼をくれるのがクライアントですよね。広告の場合は、広告代理店がクライアントの希望を聞いて、そこで咀嚼したものを企画にして発信する媒体を決めます。駅のポスターからYouTubeの6秒動画まで発信する方法はいろいろあるので、どこにどのくらいの分配をするのか考えるのが広告代理店の仕事です。

大川原:プランニングですね。

Ryo Ichikawa:そう。たとえば、ソニーの新しいレンズを売り出すための映像を制作するとしたら、「今回は軽さをアピールできるような映像でどうでしょう?」と企画を立てるのも代理店の仕事ですね。流れとしては、「こういうことがしたいです」という依頼を受けて、その映像の何秒から何秒まではこういう画でいきましょうというコンテをつくって、そこから演出を考えていく感じです。ちなみにクリエイティブディレクターは、制作全般に関わる人。アートディレクターは、主にポスターやビジュアルに関わる人のことです。

霜自由:なるほど。

Ryo Ichikawa:そこから絵コンテをもとに製作準備をしていくわけですけど、僕らの仕事でいえば、ロケ地の許可取りからスタジオの予約、どういう技術を入れて、どのカメラマンを呼んでどこから照明さんを連れてくるか、みたいなところをやっています。そこがすべて決まったら、だいたい撮影の前日までにカメラマンと一緒にアングルチェックをしています。

大河原:タレントさんの稼働時間が2時間しかとれませんっていうときもあるので、その場合は事前に同じ背格好の人に代役をお願いして、カメラが移動する位置をマーキングして、本番ですぐ撮影ができるようにリハーサルしています。

多様かつ膨大な映像制作のプロセス

霜自由:次に、撮影した素材を集めて編集するわけですけど、まずオフラインエディターとは?

Ryo Ichikawa:いわゆるカット編集をしてくれる人のことですね。撮った素材を「この尺はこの画をこのくらい使っていきますね」という大枠の流れをつくる人です。最近は、このオフラインで完パケすることも多くなっています。本当にいいものを目指すならここからカラーグレーディングの作業などが必要になるんですけど。

大川原:完パケまでのスピード感が速くなっていますよね。

霜自由:それって、いい色で撮る術があるからですか?

Ryo Ichikawa:というより、色を調整できるオフラインエディターが増えてきたからという印象があります。

大河原:ただ写真と違って、映像の色調整はカラーグレーディングスタジオがあるというくらい特化した分野ではありますよね。すごく細かいことを言うと、映画館で出す形式、DVDで出す形式、テレビで出す形式、それぞれ全部色情報が違うんですよ。

Ryo Ichikawa:スタジオで見たそのままの色でなければいけないから、それぞれのカラースペースと呼ばれる色情報にちゃんと変換しなきゃいけないんですよね。

霜自由:勉強になります。

Ryo Ichikawa:カット編集と色調整が済んだら、次はオンラインエディターの仕事。たとえば、ここに映り込んでいる人やモノを消しましょうという作業をやってもらいます。基本的にはバトンタッチ形式なんですけど、場合によっては撮影が終わった時点で素材を送ってCGをつくってもらうこともあります。

霜自由:音は最後なんですか?

Ryo Ichikawa:最後です。演者がいるときだったら声のバランスをどうするかとか、MA(Multi Audio)のエンジニアさんにお願いします。

霜自由:なるほど!

クリエイティブを底上げするリファレンスとは?

名取:さて、そろそろふたつ目の話題に移りたいと思います。

霜自由:はい。ふたつめの疑問は「どんな発注をされると映像制作者のひとはやりやすい? そして、ハッピーなクリエイティブが生まれる?」です。生意気なこと言いますが、僕はクリエイティブディレクターとして映像制作の相談を受けることもあって。そのとき、発注の仕方にすごく悩むんです。たとえば、「こんな映像がつくりたいんです」とすでに世にあるものを提示されたとき、すごくジレンマを感じませんか? 「それになっちゃうぜ!?」って。それが正解になっちゃったら本末転倒というか。だから、どんな発注をすると映像制作者の人はやりやすいのかなっていう疑問です。

Ryo Ichikawa:リファレンスが正解になってしまうのは本末転倒っていうのは、僕もその通りだと思います。『こういうものをつくりたい』といっても、予算感も目的も違っていれば単純にスタート地点も違うのに、ゴールを一緒にしてもしょうがないと思っていて。最初にリファレンスを出さないとイメージが伝わらないという人もいるので、それは仕方ないとは思います。ただ、僕だったらまずは本当の目的と最終的にどうなりたいかっていうことだけ教えてほしいです。

霜自由:なるほど。

Ryo Ichikawa:やりたいことをできるだけ言語化して伝えていただければいいなと思います。たとえば、このマイクをカッコよく見せられるCMをつくりたいという場合に、世の中にはいろんな“カッコ良い”があるじゃないですか。落ち着いた雰囲気のジャジーなカッコ良さなのか、照明バキバキのEDMっぽいカッコ良さなのか。まずどういうカッコよさを思い描いているのかを言語化してもらうんです。そうすると、出来ることがわかってくるし予定も立てやすくなりますね。

霜自由:それって、文字がいいんですかね? 絵でも良かったりしますか?

Ryo Ichikawa:僕の場合、アーティストには「こういう想いで映像をつくっていきますね」っていうことを伝えるために、手紙を書いたり、詩を書いたりすることはあります。物語をつくったこともありますね。

大川原:僕は、音楽が送られてくるのが結構好きですね。こういうテンポ感の映像が撮りたいんだなってイメージしやすくなるので。あと、「こういう色味にしたい」っていうのは、現場が違うから無理なんですよ。でも、「これくらいのフィルム感が理想」とか「これくらいパキッとしてほしい」っていうリファレンスはあると機材選定がしやすくなるので、ありがたいですね。

名取:たしかに、スチールに比べると映像撮影は機材の選択肢が多いですよね。

霜自由:参考になりました。共通しているのは、「まず想いが知りたい」っていうことですね。

Ryo Ichikawa:逆に、こちらからもそれを聞かなければいけないなと思っていて。その中で無理なことは無理ってちゃんと言わなくちゃいけないし、我慢をしながらやっていても自分が苦しくなってきちゃうので。ちゃんと会話して、アイディアを出していく作業は丁寧にやっていかなきゃいけないなと思っています。映像制作に一番大事なのはそこなんじゃないですかね。

名取:最終的にいい映像を作るためには、そこが合致してないとできないですもんね。

これからの映像制作に活きるチカラとは?

名取:そろそろ、最後のまとめに移りたいと思います。今後映像制作を仕事にしたい人へ向けて、ひと言いただけますか?

大川原:映像制作を仕事にするっていうのが意外と難しいことでもあると思っていて。今、最初から最後まで全部自分でやるビデオグラファーもたくさんいますけど、さっき話に出たように写真と違って映像は間口があまりにも広いんですね。その中で、ある程度「自分はこれができる」っていうことを明確にしてあげると入り込めるポジションが違ってくるのかなって思います。

Ryo Ichikawa:要するになにかに特化しようってことですね。僕はこの仕事をするうえで、毎日違う考え方ができるようになるといいんじゃないかなと思っています。毎日のなにかしらに対して違う切り口を見つけ続けるみたいなことでしか面白い発想は多分生まれなくて。「昨日はこう考えていたけど、こう考えてみたらどうだろうか?」みたいなことを、毎日いろんなところから見つけてみると、映像制作にも活きてくるんじゃないかなと思います。

霜自由:これはまた別の話が始まっちゃいますね。いやあ、勉強になりました!
名取:私も、ここ一年間いろんな活動を通して「注目されるべきは技術者なのでは」と思っていて。今回のトークセッションが映像制作に対する視点をちょっと変えてみようかなと思うきっかけになってくれればいいなと思います。今日はとても楽しかったです。ありがとうございました!

大盛況のうちに幕を閉じたCP+2025。カメラ愛に溢れる人々の熱狂と撮影への欲求を刺激する生きたクリエイティブに触れられる祭典の次回開催が早くも待ち遠しい限りだ。

ENCOUNTER MAGAZINEでは、今回のトークセッションと連動したソニーマーケティングとCURBONの合同プログラム『映像制作を仕事に。基礎から始める無料育成プログラム』の続報を今後も発信していくので、どうぞお見逃しなく!