動画の文化を広げていく。シネマライン『FX30』が広げる可能性【ソニーマーケティング×CURBON「撮りたい映像」を形に vol.11】

近年、動画コンテンツの需要は急速に拡大し、従来スチール撮影を専門としてきたフォトグラファーにも「動画も撮ってほしい」という依頼が増えています。そのような市場の変化を受け、ソニーマーケティングとCURBONの共同企画として、『映像制作を仕事に。基礎から学べる育成プログラム』が実施されました。

3月27日(木)の講評会で全プログラムを修了したこのプロジェクトでは、ソニーのシネマカメラ『FX30』が貸与され、参加者はFX30で作品制作をおこないました。本記事では、ソニーマーケティング担当者・堀 晃洋氏へのインタビューをもとに、シネマカメラ『FX30』を採用した理由やプロジェクトの成果について振り返ります。

『FX30』採用の背景

——まずは本企画においてFX30を採用した背景や決め手などについて教えてください。

堀 晃洋氏(以下堀):今回のプログラムをCURBONさんと一緒にやらせていただきたいと思ったきっかけは、動画市場が広がってきている中で、ソニーマーケティングとしても動画専用機を使ってもらえるユーザーを増やしていきたいという思いがありました。動画をずっとやってきた方々には知ってもらえていますが、写真を撮っているフォトグラファーの方々に対しては、まだ自分たちとしても認知を広げきれていないというか、そこにポテンシャルがあると考えていたので、今回のプログラムを提案させていただきました。

ソニーマーケティング 堀 晃洋氏

ではなぜFX30なのかというと、今ソニーが持っているカメラのシリーズとしてはαシリーズとCinema Line(シネマライン)という大きく2つがあるのですが、そのシネマラインの中で、価格とスペックの部分で比較的手が届きやすいモデルとして発売したのがFX30です。

これから動画を本格的にお仕事としてやっていきたい方に向けた商品としてローンチしたという背景もあったので、フォトグラファーの方々に認知を拡大していきたいというところと、シネマラインの裾野を広げていくというコンセプトがマッチして、今回FX30を実際に使っていただくことになりました。

——他のカメラ、例えばαシリーズではなくFX30を選んだことで、今回の企画にどのようなメリットがあったのでしょうか。

堀:動画専用機という定義をするからには、まず普通の一眼とは運用の仕方が違います。一般的な一眼では撮りきれない部分を、専用機という形でデザインや機能に特別なものを追加しています。もちろんαでも動画は撮れますが、ソニーの思いとしては、動画専用機を使うことで、スチルのお仕事と映像の仕事をしっかりカメラを分けて、それぞれ最適化されたカメラを使うことで、より信頼性のある、安定感のあるお仕事のアウトプットになるというところをイメージしています。そのため、今回あえて専用機を使ってもらおうと思いました。

FX30のコンセプトと開発思想

——続いて、FX30の機材的な面についてお伺いします。どういったコンセプトで開発されたカメラなのでしょうか。

堀:シネマラインシリーズは元々、VENICE(ベニス)というハリウッドなどでも使われるようなシネマカメラの技術を受け継ぎながら、より低価格で手の届きやすいところに広げていこうという考えで開発されました。代表的なカメラだと、フルサイズのFX6やFX3があります。FX30はAPS-Cのセンサーを採用し、筐体はFX3とほぼ変わらないままセンサーだけ小さくすることで、圧倒的なコストパフォーマンスを実現しています。画作りや描写力は高画素でしっかり残せますし、APS-Cにしたことで単にカメラの価格が安くなるだけでなく、レンズ等を含めたシステム全体のコストも抑えられます。

そして最も大きな恩恵はコンパクトさですね。今までのシネマラインはフルサイズでレンズも大きく、重量感もしっかりしていましたが、FX30はAPS-Cになったことで、コンパクトで持ち運びしやすく、長時間の撮影でも疲れにくくなりました。まさに動画の文化を広げていくのにぴったりな商品になったと思います。

他のシネマライン機種との違い

——FX30の主要なターゲットユーザーはどういった方々ですか?

堀:シンプルに言えば「本格的に動画を撮りたい人」ですが、具体的には映像学校に通っている学生さんや、今回のようにフォトグラファーとして活動していて動画の案件もこなしていきたい方、あるいは1台のカメラをマルチに使って案件の幅を広げたい方のサブ機としてなど。最近はサラリーマンなど本業をしながら副業で動画で稼ぐ方もいるので、予算はあまりかけられないけれど、本気で動画をやりたい、仕事としてやりたいという方向けです。

Vlogカメラとしても使えますが、我々のメインターゲットはそこではなく、もう一段上の「仕事としてやりたい」とか「趣味をもっと追求したい」という方々を想定しています。

——参加者の方からは「FX3とFX30のどちらを買うべきでしょうか?」という質問も寄せられました。

堀:正直に言うと、FX30とFX3で迷っているなら、FX3を買った方がいいと思います(笑)。ただ、迷っているポイントがどこかによりますね。予算的な制約があれば、まずはFX30でお仕事をしっかりやれるようになって、そこで稼いだお金でFX3や6を買い、フルサイズのレンズも揃えて、より高品質な動画を撮っていくというルートもあります。

スペック面では、ニッチな部分にはなりますが、FX3だと4Kのスーパー35mm撮影ができないんです。フルサイズは4Kで撮れますが、スーパー35mmはフルHDになってしまいます。FX30ではスーパー35mmで4K撮影ができるので、寄りの画が撮りやすかったり、焦点距離が稼げたりするメリットがあります。また、シネマレンズもスーパー35mm規格のものが昔からたくさんあるので、レンズの選択肢が増えるのもFX30のメリットですね。

でも、「予算は関係なく迷っています」という場合は、思い切ってFX3を買った方が幅という面では広がると思いますね。そこから仕事で元を取り返すこともできますから。

参加者の反応と見えてきた強み

——参加者からのフィードバックで印象的だったことはありましたか?

堀:みなさんのコメントを拝見して、まずは動画専用機の魅力が実際に使ってもらうことでしっかり伝わったなと感じました。冷却ファンがついていて長時間収録でも熱停止しづらいというところだったり、コンパクトで女性の方でも持ち運びしやすいといった点が狙い通りに評価されたのは非常に嬉しく思います。

シネマカメラを初めて触る方がほとんどだったので、最初は「設定などをちゃんと使いこなせるだろうか」と心配していたのですが、映像を見る限り初歩的なミス(シャッタースピードや設定の間違いなど)があまりなく、みなさん制作に没頭できていたようでした。これは想像以上に驚いた部分です。

——確かに。機材の操作に関する質問はきませんでしたし、参加者の作品を見ていても、不自由さを感じている人はほとんどいなかったように思います。

堀:そうですね、比較的自然に撮れていた印象があります。UIも分かりやすいというコメントもあり、そこは良かったと思います。

最終的には、現在動画を仕事にしているわけではないフォトグラファーの方々にも動画専用機の必要性を感じてほしいと思っています。今回参加した方々が動画分野で活躍するようになり、周りのフォトグラファーに対して「このプログラムがきっかけで動画をソニーのカメラで撮り始めて、今は動画の仕事もやっています」と広げていってくれれば嬉しいですね。

今後もユーザーと共に取り組める環境をつくりたい

——最後に、FX30はシネマラインの中で今後どういったポジションを担っていくものだと思われますか?

堀:基本的には今後も同じポジションで進んでいくと思いますが、今特に注目しているのはSNSのショート動画やショートドラマといった新しい分野なんです。最近は短い尺の中に美しい映像とわかりやすいメッセージを詰め込んだ作品が増えてきていますよね。

FX30はコンパクトでファインダーがないデザインなので縦撮りもしやすいです。こういった新しい表現の場でも動画専用機で綺麗に撮りたいという流れができて、そこにちゃんとクライアントさんからも予算がつくような好循環の一部になれたらいいなと思っています。

——FX30を使った今後のプロモーションや新たな取り組みについて計画はありますか?

堀:新しい取り組みはこれから考えていく段階にはなりますが、クリエイターズキャンプのようなイベントは引き続き実施していきたいですね。今回のプログラムのように、実際にメーカーとユーザーが直接コミュニケーションをとりながら動画を制作する環境をこれからも大切にしていきたいと考えています。