建築写真 #本当は教えたくないレタッチ|しふぉん

建築写真。それは一般的にクライアント企業が行うプロモーション活動や、個人邸や文化財の保存・アーカイブに使用されることが多く、需要が絶えません。

しかし、建築写真の撮影は想像以上に難しいもの。

「広告で見るような建築写真に仕上がらない」

「窓の外側が白飛びしてしまう」といった経験をお持ちではないでしょうか?

建築写真は被写体を動かすことができないため、レタッチが重要です。では、フォトグラファーは建築写真をどのようにレタッチしているのでしょうか。

今回は、2021年に初の写真集『白日夢』を出版したフリーランスのフォトグラファーしふぉんさんに、”建物の魅力を伝えるためのレタッチのポイント”を教えていただきました。


しふぉん

東京を拠点にフリーランスフォトグラファーとして活動中。
2021年には初の写真集『白日夢』を上梓し、様々なジャンルを撮影する中でも一貫して“誰が見ても気持ちのいい写真“をテーマとして、特に構図や色にこだわりを持っている。また、企業案件や観光PR案件、雑誌やwebサイトへの寄稿など幅広く活動。

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Twitter:@shiifoncake


こんにちは。フリーランスフォトグラファーのしふぉんと申します。

今回は私が趣味で撮影することの多い建築写真で行なっている、”建物の魅力を伝える為のレタッチのポイント”を2つご紹介したいと思います。

私が撮影している建築写真は商用的なものでなく個人的な撮影の為、三脚などを使用せず手持ち撮影しているものが殆どとなるのを前提にお話ししていきます。

1.水平垂直を整える

建築写真でもっとも重要となるのが水平垂直の調整です。撮影時にできるだけ水平垂直を意識して撮影してはいますが、環境によっては正面に立って撮影するのが難しかったり、どれだけ意識していても多少のズレが生じてしまったりする場面が存在します。

特に旅行中やスナップ撮影時に撮影する場合、サッと撮影を済ませてしまうことが多いのではないでしょうか?

しかし、水平垂直の取れていない写真は建物そのものの魅力が伝わりにくくなってしまいます。

建築物は隅々まで計算されて設計されて成り立っています。しかし、水平垂直のとれていない歪んだ写真では建物そのものの形が異なった形で写ってしまっており、魅力が伝わりにくくなってしまいます。

実際にどのように補正していくのか説明していきたいと思います。
今回はLightroomでの補正方法となります。

こちらが撮って出しの写真です。

地上から少し上にあおって撮影しているので、建物が上に向かうにつれ細くなってしまっています。また、正面からの撮影ですが撮影時に正面が取れておらず水平方向も若干の修正が必要です。

今回はLightroomのジオメトリーツールを使用する方法を説明していきます。

補正時には水平垂直の基準となる線を決める必要があります。基準線はなるべく写真中央にある線を選ぶようにしましょう。

というのも、中心から外れてしまうほど最終的な仕上がりにズレが出てきてしまうからです。

最初に水平と垂直どちらから補正を行うかは写真中心部に存在する線で選びましょう。この写真の場合は中央部に分かりやすい縦線が存在しないため、白い壁の1番上を基準として考えます。(赤線)

①水平を補正

最初に基準線が水平となるように角度を補正します。この基準線がこの後の基準となるので慎重に行います。

水平が取れたら、写真内に存在する水平であるべき線が全て水平となるように水平方向を整えましょう。

②あおりを補正

写真内に存在する垂直であるべき線が垂直となるように、垂直方向のスライダーで補正を行います。既に①で水平は取れているので垂直だけを意識して大丈夫です。

③トリミング

最後にトリミングを行います。

主題となる建物が映えるように建物を中心にし、右側にあるマンションなど不要な要素を取り除きます。

今回は水平方向から補正を行いましたが、中心部にある線が縦線の場合には縦線を基準線にし整え、垂直方向の補正→水平方向の補正の順で行いましょう。

ポイント:状況に応じて、水平垂直のどちらから補正するか使い分ける

またこの写真のような正面からではなく斜めから撮影している場合にも、写真中央部の縦線を基準として補正を行います。この場合には画面中央右のコンクリートの左端の線を基準線とし、補正を行っていきます。

最後に右端の建物をトリミングすることで、主題を明確にすることができました。

状況に応じで水平垂直どちらから補正していくのか、使い分けていきましょう。

2.建物の魅力を引き出すレタッチ

続いてはレタッチについてお話ししていきます。

今のカメラは撮って出しでも十分綺麗に写してくれるのですが、より建物の魅力を伝えるためにレタッチを行なっています。

建物によって魅力や見せたい部分は異なるので、異なるレタッチが必要です。

今回は3つの例をご紹介します。

①明暗差が強い場合

ホテルのエントランスで撮影した一枚です。明暗差のある場面で撮影したもので外の風景も白飛びすることなく撮影したかったため、露出を抑えて撮影しています。

内装が見えやすいようにシャドウ部を持ち上げつつ、コントラストは維持し若干の色被りを補正して仕上げています。

②ガラスの写り込みが目立つ場合

撮って出しではガラスの写り込みが目立ち、目線が反射にとられてしまいます。また、建物内が全体的に緑被りを起こしているのが見られます。

ガラスの写り込みを修復ツールで取り除き、緑被りを補正。この建物の魅力であるガラス張りの建物内から見る”朝焼け”を強調するよう仕上げました。

③より建物やオブジェが引き立つ様にレタッチしたい場合

1で整えた外観写真です。これでも十分ではありますが、より建物やオブジェが引き立つ様にレタッチしていきます。

オブジェを強調させるためカラーミキサーを使用し、彩度と色相を調整しています。また、部分補正ができるマスクで空を引き締め、建物と左側の住宅街は彩度を落としています。全体的にはコントラストを上げつつ建物のディテールが出るように意識して仕上げました。

さいごに

今回は私が行なっている建築写真のレタッチをお伝えしました。どのジャンルでも同じですが、見せたいものの魅力を引き出すよう心がけてレタッチしています。

建築写真のレタッチというと難しそうな印象もありますが、この記事をきっかけに、まずは旅先やスナップ中に撮った一枚から気軽にチャレンジして頂けると嬉しいです。


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