【成人式前撮り】一生に一度の晴れ姿を形に残す成人式前撮りの撮り方
一生に一度、成人した晴れ姿を形に残す成人式の前撮り(後撮り)。
近年では思い出の場所や晴れ着にぴったりなロケーションで行う屋外撮影も人気を集めています。今回は、友人や知人から成人式の前撮りを初めて依頼されたフォトグラファーや、これから成人式前撮りを仕事にしたいと考えている方に向けて、撮影前の打ち合わせから当日の流れ、押さえるべきポイントなどを含めた成人式前撮りのコツを『片倉写真事務所』の片倉玄徳さんに伺いました。
成人式前撮りとは
「成人式前撮り」とは、20歳の記念に残す、ポートレート写真や家族写真のことで、婚礼写真や七五三写真と同様に伝統的な写真撮影の一つです。
従来の成人式写真は、写真館やホテルの写真室での撮影が主流でしたが、現在ではより自由なポートレート撮影への変化が見られ、屋外での撮影も多くみられます。好きな季節、好きな撮影場所を決められる選択の自由度も屋外での前撮りが人気の理由の一つです。
また、SNS時代へ移り、特色のあるフォトスタジオや個人フォトグラファーへ撮影依頼するパターンも急速に増えてきました。
私どものフォトスタジオ「片倉写真事務所」では、婚礼撮影や婚礼ロケーションフォトを主に撮影してきたのですが、ここ2、3年は成人式撮影や七五三撮影の依頼が特に増えてきており、撮影依頼の割合としては、40%成人式写真、30%婚礼写真、25%家族写真(七五三・1歳記念・ペット等)、5%その他と、成人式のロケーション撮影の依頼がもっとも多くなっています。
成人式前撮りは個人のポートレートフォトグラファーにとっても集客をしやすく、写真撮影業のマーケットとしても需要は益々増えていく傾向にあると思われます。
また、撮影にはご家族が同席されることも多く、撮影自体が思い出の1日となります。
「子どもから大人になる大切な節目」を写真に残すお手伝いができることはフォトグラファーにとって大変光栄なことだと思います。
成人式前撮りで求められる写真と注意点
成人式前撮りのほとんどの場合、被写体は撮影に慣れていない19、20歳の女性のため、プロのモデルを撮影するのとは全く違います。
被写体の方が一番可愛く・美しく見える アングル、光、顔の向きを徹底的に探しながらフォトグラファーが誘導し、演出しながら撮影する必要があります。
また、20歳の女性が求める「スタイリッシュな今っぽい写真」と親御様が求める「昔ながらの記念写真」の両方を撮影することが求められます。
具体的には、着物雑誌に見られるような古典的なポージングから、型を付けない自然体なポージングまで両方を撮影しつつ、どちらかに偏りすぎないことが大切です。
撮影中のコミュニケーションを通して、求められる写真を探りながら撮影を行います。型のあるポージングから撮影を始めて、どんどん自由な方向に誘導するとスムースにバランスよく撮影できます。 時には親御様にも撮影やポージングに参加してもらい、 撮影を楽しんでもらうことで 親御様が写真に求めるものが見えてきたりします。
また、お着物での撮影になるため、基本的な着物の知識が必要になります。こだわったお着物での撮影が多いので、お着物の柄行もしっかりと残せるように撮影しましょう。
さらに、ロケーション撮影は移動しながらの撮影となるため着物の着崩れにも注意が必要です。着崩れしやすいポイントや直し方を学んでおくことも重要です。
成人式前撮りのご依頼から撮影の流れ
お客様のご依頼からお写真納品まで
①打ち合わせ(お電話にて撮影のご説明・ご希望のヒアリング)
②撮影日の決定(美容師の手配・ロケ地の手配)
③撮影当日
④データ納品 納期約2ヶ月
⑤ご精算 (撮影納品後)
雨天時の延期等に関しては、前日の天気予報を見て最終判断をしています。
ロケ地はヒアリング後に季節、気候などを考慮し、こちらからご提案をしています。
撮影当日の流れ(一例)
6:00 お客様ご来店、お支度開始
8:00 お支度完了、スタジオ撮影
8:30 ロケ地へ移動
9:00 撮影開始(ロケーション2箇所程度)
12:00 撮影終了
12:30 お着替え、解散
お支度開始から解散までは6時間ほどはかかります。基本的には屋外での撮影をしておりますが、ご希望によってはお寺や洋館など予め申請をして撮影することもあります。また、桜や紅葉などの行楽シーズンはロケ地での混雑が予想されるので、お客様の入り時間を早めて早朝に撮影することが多いです。
自然光の使い分け
撮影で最も重要なことの一つとして、光の使い分けが挙げられます。
撮影時は主に太陽光で撮ることになりますが季節や天候、時間、被写体に対しての光の向きなど、フォトグラファーが気を配らなければならない点は毎回異なってきます。
具体的に、作例を交えてご紹介します。
1. 半逆光
被写体の斜め後ろから差し込む光で、被写体の輪郭を浮かび上がらせることで引き立たせたり、柔らかな雰囲気で撮影できます。ポートレートの基本的なライティングです。
2. 順光
被写体の正面から当たる光です。太陽の角度によっては顔の凹凸や影を強調することがあるため使いこなすのが難しい光になります。
秋から冬の太陽の位置が日中から低い季節は光が柔らかく順光での写真がきれいに狙え、はっきりと写る被写体や色が写真にインパクトを与えます。
3. 木漏れ日
ニュアンスをつけたい時は、木漏れ日の影を使い被写体を配置します。順光と同様ですが、輝度差が大きい環境ですので、白飛びや黒つぶれに注意する必要があります。
4. 半逆光+地面にバウンスした光
被写体に対して逆光と手前の地面に反射して跳ね返った光を使っています。
地面からの反射の光はレフ版が無い状況でも顔の凹凸(影)を消し、肌をキレイに見せる効果があります。ただし、跳ね返る物によっては色被りが発生する為、注意する必要があります。
5. 逆光(シルエット)
写真のバリエーションを出すために、逆光を利用したシルエット撮影なども入れておくのもおすすめです。
レンズの使い分け
1. 望遠レンズ(85mm)
背景を圧縮して簡単にぼかすことが出来るため、被写体を際立たせての撮影が簡単になります。
2. 広角レンズ(35mm)
周囲を広く写すことができ、ロケーションを印象的に見せることができます。
被写体以外の目につく写り込み(通行人や看板など)に注意する必要があります。
被写体との距離感を変えることにより、同じレンズでも全く違った表現が出来ます
成人式撮影のコツ
最後に、成人式写真を撮影するうえでのコツを4つご紹介します。
1. コミュニケーション
被写体となるお客様は撮られることに慣れていない方が多いです。緊張で笑顔が引きつってしまう方も多く、ポーズもこちらの誘導でしていただくことがほとんどです。
そのため、まずお客様にリラックスしていただくためのコミュニケーションは必須です。
カメラマンがポーズ例を実演したり、家族みんなで走ってもらうことで自然な表情を引き出せたりもします。お客様が思わず笑ってしまう工夫や会話を心がけましょう。
2. ロケーションの場所選び
四季ごとにおすすめできるロケーションを予め探しておきましょう。桜や紅葉など季節の花々の開花状況を抑えておくのも大切です。雨天時でも利用ができるような室内のロケ地(お寺や洋館)なども知っておくと、ご案内できる幅が広がると思います。
母校や生まれ育った町での撮影などお客様の思い入れがある場所での特別なロケ地撮影もおススメです。
3. 小物と衣装もしっかり撮影する
着物の柄行、帯結び、ヘアスタイル、ネイル、草履、鞄など、こだわって選ばれたアイテム類も写真に残す事を心掛けるようにしましょう。
4. 半身と全身をバランスよく撮影
ポートレートは上半身の写真が多くなりがちですが、引いて衣装全体を抑えるカットも重要です。
ポートレートポージングの基本は日常の自然な仕草の中にあります。
型にはまった撮り方を捨てて成人式写真をもっと自由に!その子らしいハタチを撮りましょう。
PHOTOGRAPHER PROFILE
PHOTOGRAPHER PROFILE
片倉玄徳 Katakura Gentoku
1980年三重県伊賀市生まれ
大谷大学卒
日本写真映像専門学校卒
2012年片倉写真事務所設立
京都北山のフォトスタジオ
Katakura photo office
婚礼/成人式/家族写真/ポートレート/商業撮影 を行ってます。