【マタニティフォト】サロン代表に聞いた、マタニティフォトの撮り方
赤ちゃんを授かった喜びや、妊娠中という特別で神秘的な姿を形として残すことのできるマタニティフォト。近年では日本でもマタニティフォト撮影を希望する妊婦さんが増え、浸透しつつあります。そんな、マタニティフォト撮影の基本知識や撮影の流れ、注意すべきポイントについて、マタニティ、ベビー、ファミリーフォトを専門に撮影しているPhoto Salon FRAU(フォトサロンフラウ)の壹岐倫子さんに解説していただきました。
目次
マタニティフォトとは?
マタニティフォトをなぜ撮影するのでしょうか?
私自身、マタニティフォトを撮り始めたきっかけは友人から撮影して欲しいと言われたことでした。それまでマタニティフォトを撮影したことがなかったのですが、ヌードの妊婦さんを目の前にすると、あまりの美しさと力強さ、神秘的な姿に心が震えました。約10か月間、大切に大切にお腹の中で命を育て、体や心の変化に向き合う友人の姿を、なんとしてでも美しく残したい!と強く思いました。そしてきっとその写真が今後も彼女の人生の中で大切な思い出になり、生まれてきた子供が見た時にも力を与えてくれるのではないかと感じました。
依頼主の方々からも今しかないお腹が大きい姿を美しく残したい、いつか子供にも見せたい、妊活を頑張ったご褒美に撮影したい、パートナー様からのプレゼントで撮影したいなど様々なニーズをお聞きします。
マタニティフォトを撮影する時期については、妊娠8ヶ月(28週)〜臨月に入るあたり(36週)の間に撮影することをおすすめしております。なぜお腹が一番大きくなる臨月以降に撮影しないかというと37週から正産期に入り、産まれる可能性が高くなります。そのためできれば臨月までに撮影を済ませると安心かと思います。ただ、体調やお腹の大きさにはかなり個人差があるのでお腹が大きくなるのを待っていたら臨月になってしまった方、体調がずっと悪く臨月に入ってしまったけどどうしても撮影したい方、入院や里帰りのため早く撮影したいなど様々理由がありますので、私のスタジオではどの週数でもお断りすることなくお受けしております。
マタニティフォト撮影の魅力・メリット
マタニティフォトを撮影する魅力やメリットとしては、お腹の中で命が育まれている、本当に貴重な姿を残せるということかと思います。また、一般の方を撮影するジャンルの中では比較的フォトグラファーの世界観を出しやすいのではないかと思います。マタニティフォトではウェディングフォトのような衣装の決まりもないですし、自由にご自身がこだわれるポイントがたくさんあるかと思います。
マタニティフォトの撮影の流れ
基本的な流れは、『依頼→メールでのやりとり→撮影当日打ち合わせ→撮影→写真セレクト→レタッチ→後日納品』となります。
依頼をいただいたら、まずマタニティフォトの撮影詳細(料金、納品方法、レタッチについてや撮影時間、衣装について)などをご説明し日程調整をします。その際に何か疑問や不安なことがないかをお伺いし、しっかり答えることで依頼主様が安心して当日を迎えることができます。
ヒアリング時には、妊娠による肌荒れ、妊娠線、正中線や脇の色素沈着、副乳ができた、毛が濃くなってしまった、太ってしまい顔の肉や背中の肉が気になるなどのお悩みの声をいただきます。これらに対しては肌が美しく見えるライティングを心がけることと、ポーズ付けや衣装による体型カバー、さらに撮影後のレタッチで全て解決できます。
そのことをお伝えするとみなさん安心して撮影に臨むことができるので、喜ばれています。
撮影当日は到着されたら最初にどのようにマタニティフォトを撮影したいかをヒアリングさせてもらい、こちらのサンプル写真を見せたり、依頼主様が持ってきたイメージ画像を元にシチュエーションやポーズ、衣装を選び、撮影の流れを決めていきます。私のスタジオでは特に何着までと制限していませんが、少ない方で1着、平均2着、多い方で3~4着ほど衣装替えする方がいらっしゃいます。
パターンとしては一人の写真、パートナー様との写真、お子様がいる方は家族全員の写真やお子様とママとの写真などを撮影します。ただ、その内容も依頼主様によって様々で、一人の写真だけでいいという方も居れば一人の写真はいらないのでパートナーや家族と一緒の写真だけでいいという方もいらっしゃいます。依頼主様が何を求めているのか、しっかりヒアリングすることを心がけています。また、依頼主様が望むプランだけでなく、フォトグラファーとして撮った方がいい、いい写真が撮れる!と思ったら無理なく自然な形でご提案し、想像を超える体験を提供したいと思っています。
撮影後は依頼主様と一緒にデータを見ながらセレクトしていきます。セレクトのポイントとしては依頼主様がどのような写真を求めているか汲み取り、その中でもより写真的に美しいものを選ぶ手助けをしていきます。依頼主様は写真セレクトに慣れているわけではないので同じような構図を選びがちだったり、一部だけ見ていて全体のバランスを見ていないこともあります。セレクトを共にすることでより満足感とクオリティの高い写真をご納品する手助けができると思っています。
またセレクト中に、写真的には気に入っているのに体や顔の気になる部分があって選びたいけど選べない、というような事をおっしゃることがあります。その場合はレタッチで直せることをお伝えしレタッチ前提でセレクトをすることも多いです。レタッチの度合いは個人の美的感覚により大きく異なるためそのあたりの感覚もセレクトしながらご要望を掴んでいきます。
セレクト後は納品方法の確認と精算を行い、基本1週間以内にデータのご納品をしています。他のスタジオと比べると比較的早く納品しているかと思いますが、子供が産まれる前にじっくりと写真を見る時間を持つことで出産への心構えの手助けや応援になれたらとの思いがあります。
マタニティフォト撮影の基本
おすすめの小物
私のスタジオでは常に数種類の布と生花を数本ご用意しています。被写体を引き立てるシンプルな撮影を心がけているので多くの小物は使いませんが、布と生花の有機的な曲線が妊婦さんの体の曲線と合わさることでより美しくドラマチックに仕上げることができます。またご要望があればエコー写真や産まれてくる子供のベビーグッズと撮影することもあります。
おすすめの衣装
個人的には体の曲線が全て出るヌードが一番美しいと思っているので、本当は衣装なしで撮影したいところではありますが、ヌードに抵抗ある方も多いので衣装は色々とご用意しています。
私のスタジオではカジュアルなブラトップに伸縮性のあるニットパンツや透け感のあるシャツを羽織ったり、少しドレスアップしたような神秘的な雰囲気を出したい時はシルクのパネルスカートにベアトップを着用しその上から布を巻いたりしています。ここでポイントはとにかく伸縮性があるものを使用することです。妊婦さんのサイズ感は本当に様々で、幅広く対応するためにもウエストはゴムだったりお客さんのサイズに合わせて巻いて使える布を多用しています。
また、私の撮影の1つのポイントとして、布で衣装を作るということをしています。布をまくだけでドレスのような衣装になります。この方法ですとどんなサイズの妊婦さんにも対応でき、また布を変えれば違った印象も作れるためオススメです。
また、お腹や肌をあまりを出したくないという依頼主様もいらっしゃるので、お腹が見えない衣装も用意しています。
ただ、お腹を見せない衣装はお腹のラインを出すのが難しくなるので伸縮性が高く体のラインが出るワンピースをおすすめしています。ふんわりとした体のラインを出さないワンピースなどを着用する際は手をお腹の上と下に置くことでお腹のラインだけ強調して撮影します。
おすすめの撮影場所や背景
撮影場所に関してはスタジオや依頼主様のお部屋などの室内をおすすめしています。お腹を出したりすることが多いので室内の方が温度調整もできますし妊婦さんの体に負担が少ないかと思います。また、妊娠後期は非常にトイレが近くなるのですぐトイレにも行けるので安心です。
背景に関しては、妊婦さん自身が十分魅力的なのでその存在を引き立てるような必要最低限のシンプルな背景を心がけています。私のスタジオではオフホワイトの布のドレープ背景とバックライトを仕込んだ布背景をご用意しています。バックライトを使った背景はシルエットが出しやすいので妊婦さんの体をより立体的に見せることができます。
マタニティフォトでのおすすめのポーズ
1.横を向いてお腹を見ながら立つ
一番スタンダードでみなさんがよく見るマタニティフォトとして見るポーズかもしれませんが、やはりお腹の膨らんだラインが一番よくわかる横向き、なおかつお腹に目線を落とすことでお腹が主役、赤ちゃんを楽しみに待っている雰囲気がよく伝わります。
2.正面から
正面からの写真は横向きとはまた違った、満月のような丸いお腹を写すことができ、神秘的で柔らかい雰囲気が出せます。
3.お腹のアップ
お腹だけのパーツ写真で、まさにお腹主役、赤ちゃんが主役な写真です、お顔を出すのが恥ずかしい方にも人気のカットです。
4.全身
妊娠することでどれくらい体型の変化があったのかが全身でよくわかり、後から見ても思い出に残るカットになるのではないかと思います。
5.寝転び
今までご紹介したカットより難易度が上がるのですが、寝転んだカットも少し雰囲気が変わり、特別感が出ておすすめです。寝転んだ周りに花や小物を配置しても良いと思います。ただ寝転ぶことで体や顔のラインが重力に負けて崩れるのでポーズ作りや撮る角度を気をつけてください。体の負担を考えて下に柔らかいラグを敷いたり、顔の角度を調整するために小さめの枕を仕込んだりしています。また、寝転ぶ際に妊婦さんの転倒などには十分気をつけて無理をさせないように手助けをお願いします。
安心安全に撮影するポイント
最後に、何よりも大切な安心・安全に撮影するポイントをお伝えします。
- 撮影時期を臨月入る前までに設定する
- 同じポーズを長時間取らせたり立ち時間が長くなったりすると貧血になりやすいので出来るだけ手早く撮影する。
- 貧血になった際にすぐ座れる椅子やお水を用意しておく。
- 妊娠後期はトイレが近いのでトイレにすぐ行ける距離で撮影する。
- 体に負担をかけないよう、室内での撮影し、適温に温度調整する。
以上のことに気をつけて、依頼主様には「体調は大丈夫ですか?」「無理しないように気分が悪くなったらいつでも言ってくださいね!」など声かけしながら進めていただけたら安心かと思います。
PHOTOGRAPHER PROFILE
PHOTOGRAPHER PROFILE
壹岐 倫子
Photo Salon FRAU(フォトサロンフラウ)代表。2011年に友人のマタニティフォトを撮影したことで妊娠した女性の美しさ、神秘性、力強さに感銘を受け、フォトスタジオを立ち上げる。
大学でインテリアデザインを学んだ経験から撮影の空間づくりや、ダンサーとして指導経験もあり、どんな方もできる美しいポーズ作りも得意としている。
2015~2019年にはNYでも活動し、展示やアートコンペの経験も積む。
いつの時代に見ても力をもらえるような、シンプルでタイムレスな写真を心がけている。