デザイナーの目に留まりやすいポートフォリオサイトとは Part3

DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.08

編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、第一線のフォトグラファーとコンタクトをとっているクリエイティブディレクター、デザイナー、プロジェクトマネージャーが実際に出会い、影響を受けたフォトグラファーとのエピソードを明かします。

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>>>デザイナーの目に留まりやすいポートフォリオサイトとは Part2
DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.07

写真1枚で自己紹介をする難しさ。 

高木:さて、前回の続きで、目に留まるポートフォリオサイトについてです。昔はブック見せっていうのがあって、作品集みたいなものを見せてもらいつつ、その場で写真の話をするって頻繁にあったじゃないですか。
でも今はコロナ禍ってこともあって、ブック見せって減ったと思うんですよ。ある意味、営業が出来ない状況ということになるんですが、だからこそウェブサイトやSNSとかはフォトグラファーにとっては大事な営業ツールになってきているのではと思っています。
昔は雑誌が強かったから、雑誌にクレジットが載ることで仕事が拡がったという面があったと思うけど、今はデジタルの世界でどう世界観を表現するのかが大事。SNSはもちろん、サイトをちゃんと作るってすごく大事なことだと思ってます。

大脇:ブック見せはオンラインに移行しなかったですね。

高木:この前、イラストレーターのエージェンシーからオンラインでの作品紹介みたいな案内が来たよね。エージェンシーに所属していれば、そういう機会があるけど、どこにも所属していないフリーの方がオンラインでっていうのはハードル高そうだよね?

大脇:URL送って、数日後に電話してアポ取ってブック見せに行くっていう人はいましたけどね。まずはURL送ります、が多いですね。URLきたら見ますね。

細野:絶対見る。イラストレーターは、そういうの送ってくれるイメージがある。全然面識ない人からポートフォリオ送られてきたりとかよくあります。何かでうちの会社を知ってくれて、送ってくれたりする。

高木:お手製の絵葉書セットとか送ってくれたりする人もいるよね。イラストレーターの方がそういうのやりやすいのかな?

大脇:写真よりはイラストの方が一枚で世界観を伝えやすいですよね。情報をいくらでも詰め込めるから。たぶん写真一枚でこれが自分の世界観ですって伝えるのは難しいと思います。

細野:確かに。

大脇:だからこそ、写真をどう整理して見せるかが大事ということですよね。

写真の言語化?

高木:僕たちデザイナーは、普段からフォトグラファーを探しているけど、いざ提案しようとなった時には、やはりそのプロジェクトなり、商品なり、コンセプトを表現するにあたってどんな写真が良いかを考える。そこで初めて、普段ストックしていたあのフォトグラファーさんなら、面白くなりそう、表現が飛躍できるかも、とか考えるよね?

細野:ですね。

高木:何が言いたいかというと… 言語化。僕たちデザイナーは、コンセプトを言語化するじゃない? 例えばカロリーメイトなら「熱量」とか。ポカリなら「青春」とか。で、当然、そこに使われる写真には「熱量」とか「青春」を感じさせたい。
だから、写真にも言語化が必要なのかも…と思って。それは写真にタイトルをつけましょうという意味ではなく、受け手に何かしらの言葉を想像させるって事。

細野:つまり、デザイナーの考えたコンセプト(言葉)とフォトグラファーさんの作品からイメージされる言葉が重なれば、お仕事をお願いしたくなるって事?

高木:そうだね。いま、SNSで認知を広めることが命題みたいになっているかもしれないけど、何か次のステージや新しい仕事に繋げるなら、受け手に「〇〇」って言葉を具体的に想像させるんだって意識すると、写真のセレクトとか、フィードの順番とか、ちょっと違ってくるのかもなと思って。

例えば、「ファンタジー」で連想すると、古くは海外の巨匠で言えば、ティムウォーカー。もう少し最近だとライアン・マッギンレー。で、日本なら奥山さん。アナログな質感はもちろんなんだけど、プロップや光の使い方が、いま見るとファンタジーに見えるっていう…。

逆に「リアル」なら、川内倫子さんは優しい雰囲気だけど、実は怖いくらいにリアルを写している印象だし。梅佳代さんも僕の中では超リアルな写真。あくまで、個人の感想ですが。

でも、プロジェクトのコンセプトが「ファンタジー」だったり、クライアントが「とにかくリアルな写真にしたいです」って言われたら、そういうフォトグラファーさんを思い浮かべるし、お願いしたくなるって話です。

自分にキャッチコピーをつける。 

細野:そんな経験あります!! 六本木ヒルズのダイニングフロアのプロジェクトで、フードを撮れるフォトグラファーさんを探していて、伊藤高明さんにお願いしたのですが、伊藤さんのサイトには「シンプルに、力強い、料理写真を撮りたい。」っていうキャッチフレーズというか、自分がどんな写真を撮りたいのかっていう意思表明のようなものがTOPページに書いてあって。

当時、六本木ヒルズって食のイメージがあまりなくて、どちらかというと映画館とかアートとかエンタメ系のイメージが強かったんですよね。そのイメージを変えたいっていうプロジェクトだったので、ヒルズの高級感とか雰囲気を伝えるより、とにかく美味しそうな料理をドンっと力強く撮りたいなって思ってた時に伊藤さんを見つけたんです。だから、すぐにピンと来た。ちなみに実際にお会いして頂いた名刺には「美味しい写真撮ります」って書いてありました(笑)。

全員:なるほど~

細野:やりたいことが明確でいいなと思いました。

高木:写真も素敵だね。自分にキャッチコピーがあるっていいですね。案件にハマれば、楽しんで撮ってくれそうな気がするし、ピッタリって思える。

大脇:写真だけ見ても、その人の気持ちの部分でマッチするかどうかを測るのは難しいですもんね。

高木:「愛のある写真を撮ります」ってもし書いてあったらどう?

細野:愛か~。愛はどうだろうな~。違うかも(笑)。

高木:違うんだ。何て書いてあったらいいの? おしゃれな写真撮りますって書いてあってもちょっと違うでしょ?

細野:そうですね…。

大脇:〇〇が得意です、でもいいかもしれないですね。私の知り合いでENCOUNTER読者でもある若手のフリーランスのフォトグラファーの子は、レタッチが得意ですって書いてます。

高木:レタッチ得意です。はすごくいいよね。なんか安心できる。

大脇:自分が自信のあることでもいいですよね。例えば、「その人の個性を引き出すポートレートを撮ります」とか。でもさりげなく伝えることがポイントかも。前面に主張しすぎているのもちょっと気になってしまう。

高木:確かに、伊藤さんはさらっと書いてあるね。

細野:さりげないのがいいのよ。TOPページを開いて、いきなりどーーんてフレーズがあると、おぉってなっただろうけど、伊藤さんのページは写真が主役っていう、当たり前のことかもしれないけど、それをしっかり押さえてるからね。

大脇:いいエピソードですね。

高木:いろいろ話したけど、いい写真をどう最大限に活かすか。ポートフォリオサイトをどうするかって、なかなか難しいテーマだよね。

細野:自分の写真の魅力にプラスして、もう1つ押せる何か、もしくは見せ方の工夫が必要ですね。

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DESIGNER MEETS PHOTOGRAPHER Vol.09



■SPEAKER

高木 裕次 TAKAGI YUJI
CREATIVE DIRECTOR / ART DIRECTOR

細野 隆博 HOSONO TAKAHIRO
ART DIRECTOR

大脇初枝 OWAKI HATSUE
ART DIRECTOR



株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

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高木 裕次 Twitter : @takagiyuji1