”ぼっちゃんに聞くSNS運用法” 結果を信じて撮り続けたのは、古民家で過ごす子どもの日常 #写真家放談

「できるだけ多くの人に作品を広めたい。でも、SNSを通じて届ける方法がわからずに、試行錯誤を重ねてきました」

そう話すのは、平日はサラリーマン、休日はフォトグラファーとして活動し、最近では北欧ブランドのプロモーションに携わるなど活躍の場を広げるぼっちゃんさんです。

築100年の古民家で過ごす子どもたちの姿や、四季折々の美しい庭を見渡せる縁側。ぼっちゃんさんのSNSには、子ども時代を思い出させるような、どこか懐かしい写真たちが並びます。現在、Instagram、Twitterの総フォロワー数は約3万人。しかし、ここまで多くの人にぼっちゃんさんの作品が届くようになったのは、意外にもここ1年ほどのことだと言います。

写真の質を高めるためにいくら努力を重ねても、必ずしも多くの人に届けられるとは限りません。作品を発信し始めた頃のぼっちゃんさんのように、SNSとの向き合い方に悩むフォトグラファーの方たちの悩みを解決するべく、ぼっちゃんさんが心がけているという発信の工夫についてお聞きしました。

“見守る”ような視点でシャッターを切る

——写真を始めたきっかけを教えてください。

仕事に行き詰まり、「自分が本当にやりたいことはなんだろう」と悩んだ時期があったんですね。そこで、当時から好きだった写真に本格的に取り組むことを思いつきました。「自分がそこにいた証が残る」ということもまた、写真を選んだ決め手です。

それから、子どもが保育園に入ると、入園式や運動会などの行事で写真を撮る機会が増えるんです。それまでiPhoneやコンデジで撮影していたんですが、奥さんと相談してデジタル一眼カメラを買うことに決めて。それもまた、写真にのめり込むきっかけとしては大きかったです。

——今でもぼっちゃんさんはお子さんの写真をメインに撮影されているので、当初から方向性は変わっていないんですね。「あえて声をかけず、見守るように撮影する」と伺いましたが、現在の作風が確立されたきっかけを教えてください。

本格的に写真を撮るようになり、多くの人に見てもらいたくてInstagramを始めました。でも、最初はなかなか「いいね」がつかなかったんです。なぜなのかわからず写真に関する本を買ったり、著名なフォトグラファーの作品をたくさん見たりしました。その中であるとき、濱田英明さんの作品と出合いました。

濱田さんの作品は、後ろ姿なのに被写体の感情が伝わってくるような写真が多く、そこに感銘を受けました。それまで子どもの顔をSNSに載せることに抵抗があった私も、こういう写真だったら公開してもいいなと思えて。そこから、今のような構図になっていきました。

——確かにぼっちゃんさんのお写真には、受け手に捉え方を委ねるような余白がありますよね。レタッチにも、Instagram特有の流行りがあると思いますが、どうやって学んだんですか?

最初に学んだのは、『CURBON』の動画の教室『親子と子供の写真 動画講座』です。当時はまだ写真を学べる動画コンテンツが少なかったので、すぐに購入しました。そこで写真の加工・編集が行える「Lightroom」と「VSCO」の存在を知り、試行錯誤しながら今のレタッチに辿り着きました。

——当時から『CURBON』の動画講座を見ていらっしゃったんですね。レタッチのこだわりもお伺いしたいです。

今はひとつのプリセットを設定し、毎回それを使っています。まず、プリセットで一旦加工をかけてから、露出、ハイライト、トーンカーブを調整しています。あとは、明るさと肌色の調整を少しするくらいで、そこまで大きく色味は変えていません。ギャラリーの雰囲気を統一しやすいので、最初に好きなプリセットを見つけて、全体のトーンを揃えるのがおすすめです。

Instagramのギャラリーには、唯一無二の自分の強みを

——本格的に写真を始めた当初は、入園式や運動会など行事の写真がメインでしたが、今はお子さんの「日常」を主に撮影されています。どのように変化していったのでしょうか?

コハラタケルさんのインスタライブがきっかけです。ライブでは、コハラさんが視聴者のInstagramを見てアドバイスをしてくれるんです。当時、私はフォロワー数800人ほど。自分の写真がいいのか悪いのかもわかりませんでした。でもコハラさんが「いい写真ですね」と褒めてくれて、それが自信につながりました。

その後、家での日常を撮影した写真を改めてコハラさんに見てもらえる機会があったのですが、「家族写真を撮る人は山ほどいるけど、古民家で撮る人はなかなかいない。そこにこだわって撮り続けたらいいですよ」とアドバイスをいただいたんです。

——「どんな写真を撮る人か」がわかりやすいと、フォローにつながりやすいですよね。それ以来、家の中で過ごす子どもの姿を投稿するようになったんですね。

はい。コハラさんのアドバイスは僕の中では衝撃でした。本当は、春なら桜を、夏なら入道雲を、秋なら紅葉を撮りたかった。でも、色々投稿したい気持ちをこらえて、家の中の写真だけを公開するようにしました。まずはInstagramのギャラリー(プロフィールの下に表示される9枚の最新投稿)を通して私の作風が伝われば、きっとそこからたくさんの人に作品を見てもらえ、フォローにつながるはず。それを信じてずっと撮り続けてきたことが、今につながっていると思います。

投稿は“ひとつの物語”のように。Twitterで訪れた転機

——今はTwitterとInstagramで発信をされていて、総フォロワー数が約3.3万人ほど。当初は伸び悩んだと伺いましたが、どうフォロワー数を伸ばしていったのでしょうか?

きっかけになったのはTwitterでした。「子供だから出来ること」というテーマで投稿したものが、15万いいねまで伸びたんです。


最初の頃は全然フォロワー数が増えず、SNS運用術の記事をたくさん読みました。バズるためには運だけじゃなく「土壌」が必要だと知り、初期の頃はフォロワー数が多いフォトグラファーの方に積極的にいいねをしたり、リプやRTをしたり、関わるように心がけましたね。そのうちに、自分の写真をいいと思ってもらえた方からフォローバックしてもらえたり、リツイートしてもらえたりするのようになり、つながりが少しずつ増えていきました。

——まずは地道に共感者を増やしていったんですね。著名な方とコミュニケーションを取る際に気をつけていたことはありますか?

当たり前のことですが、自分がされて嫌なことはしないように気をつけました。幸い僕が声をかけた方は優しい方ばかりで、DMでSNSの運用について(プロフィールの内容や、写真の構成、Twitterからinstagramへの誘導方法など)質問をしたら丁寧に教えてくれました。タイムラインを見た時に、同じ「写真アカウント」だとわかりやすかったことも大きいと思います。

——Instagramのギャラリーを統一したことが、Twitterでも結果につながったんですね。読み手がコメントしたくなるようなテキストや、写真の並べ方も大切だと思いますが、いかがでしょうか。

共感してもらえるようなテーマを意識して、短めのテキストを考えています。Twitterではテーマに沿ったベストショットを4枚載せた方が「いいね」がつきやすいので、思いついたテーマをその都度メモしておき、過去に撮影した写真の中からテーマに合うものが4枚あれば投稿します。


並べる際にこだわって選ぶのは、1枚目と4枚目です。インパクトがあるものを1枚目に持ってこないと、2、3枚目を見てもらえない。そして4枚目が印象に残ると、結果的にいいねにつながりやすいと思います。物語のように写真の順番も導入と結末が大切です。

地道な工夫でフォロワー数を増やす。Instagramの心がけ

——ギャラリーを統一したことで、Instagramではどんな変化がありましたか?

最初の半年ほどは、フォロワー数がなかなか増えなかったんです。でも、Twitterで多くの方に見てもらえるようになり、そこから流入する形で徐々にInstagramもフォロワー数が増えていきました。一目見た時にテーマが伝わりやすかったことが効果的だったと感じています。コハラさんのアドバイス通りに続けてよかったと思います。

また、Twitterで話題になったことがきっかけで、Web媒体に作品が掲載される機会も増えて。その際、Instagramのアカウントも必ず紹介してもらうように徹底したんです。すると、多い時で1日1,000人もフォロワーが増えることも。結果として相乗効果が生まれ、どんどんフォロワー数が増えていきました。

——地道な工夫をされたのですね。Instagramでフォロワーを増やすためには、ハッシュタグの選定も重要だと思いますが……。

「自分の写真に合ったもの」「自分の写真に関連するもの」「テーマに沿った写真をキュレーションするインスタメディアが募集しているもの」、この3種類を選定しています。インスタメディアのアカウントでは、特定のハッシュタグを使用すると、自分の作品を取り上げてもらえることもあるので、常にチェックすることをおすすめします。フォトコンテストを定期的に実施しているインスタメディアも多く、Instagramを始めた頃は私も積極的に応募していました。



最近はさらに多くの人に届けるために、海外のインスタメディアに取り上げてもらえるハッシュタグを研究中です。フォロワー数も桁違いなので、今後は海外向けのハッシュタグをうまく組み合わせて使っていきたいと考えています。

フォトグラファーとして、今できることをコツコツと

——SNSのフォロワーが増えるにつれてお仕事の依頼も増えたかと思いますが、いかがですか?

2020年の秋に、フィンランドのテキスタイルメーカー『ラプアン カンクリ』さんから、子ども用ポケットショールを、私のInstagramで投稿してもらえないかとご依頼がきたのはうれしかったですね。


「古民家の中で撮影してほしい」という指定があったので、一番見栄えが良い縁側で撮影しました。服自体の撮影は初めてだったので、InstagramやWebサイトを見てイメージを膨らませました。

——今後の展望についてお聞かせください。

現状、写真の仕事の実績も少ないため、今後は自分の言葉で仕事に対する考えを積極的に発信したいですね。動画にも興味があるので、色々と情報収集しています。Instagramで素敵な動画を撮っている方にDMで聞いてみたり、素材を撮ってみたり、少しずつ準備中です。

——ぼっちゃんさんがつくる動画、とても楽しみです。最後に、これからSNSで活躍したいと考えているフォトグラファーに向けて、アドバイスがあればお伺いしたいです。

写真は正解がないので、常に自問してしまうし、迷ってしまうこともある。もし客観的な意見をもらえる機会があるなら、尊敬できるフォトグラファーの方などに見てもらうことをおすすめします。

そして、1番大切なのは「続ける」ことだと思います。要領がよくて一気に伸びる人もいますが、少なくとも僕はそういうタイプじゃない。泥臭くても、まずはコツコツ撮り続けてみて改善する。これからもそうやって、自分にとってのベストを見つけていきたいですね。

編集後記

ぼっちゃんさんのSNSでのご活躍は一見華やかに見えますが、その裏側では、今できることに地道に取り組み、改善を重ねてきた過去があったことがわかりました。

誰かに意見をもらったとしても、実際にそれをやり続けるのは難しいもの。たとえすぐに結果が出なくても、まずは一度決めたやり方を信じて撮り続けていくーー。ぼっちゃんさんのそんな姿勢がとても印象的でした。

写真のみならず、動画にも積極的にチャレンジしたいと語るぼっちゃんさん。今後の活躍がますます楽しみです。

■Interviewer / Writer

とみこ
ライフスタイルメディア『cocorone』の編集長。うつわブランド『きほんのうつわ』の商品開発などにも携わる。フリーランスでライター、編集者、プロジェクトマネージャーとして活動。うつわ、リノベ、子育てなど、暮らしの記録を発信。

Instagram:@tomiko_tokyo
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■Editor

波多野友子フリーランスの編集者・ライター。4歳の男児を育てています。興味:パートナーシップ、子育て、家族の形、ボディメイク。

Twitter:@ogwtmk3