無垢の報復/花岡春菜

○︎月×日
秋、涼しくなってきた頃
お母さんと川に行った。
バーベキューをするでもなく、
ひんやりとした閑かな場所で、静かに泳いだ。
魚もいた。踏んづけてしまわないか心配だったけど、魚はするりと逃げてった。

○︎月×日
道端の死んだ野良猫を見た。
逃げるように、違う道を歩いた。
あの猫はあの辺りで生きていて、車に轢かれてしまった。
その出来事が、頭の中を行ったり来たりしては、
「可哀想って思っちゃいけないんだよ」
という小さい頃の友達の言葉が、通せんぼしてくる。

 ○︎月×日
この前知った事がある。
私にとっては当たり前の事だったけど、でもみんなは異常だって言うの。
どうして。

○月×日
お母さんは言ってた。
「化け物」だって。
きっとお母さんは寂しかったんだと思う。
化け物の私でも、よかったくらいに。

○月×日
自由になりたい。

○月×日
自由って、不自由の中にあるんだと思う。
だから多分、私は自由になれる。

○月×日
お母さんが泣きながら「死なないで」と言った。
私は黙って聞くだけだったけど、流れてくる涙が返事のような気がした。

○月×日
今日は午後から晴れるらしい。
楽しみな一日。

PROFILE

花岡 春菜

PROFILE

花岡 春菜

1996年生まれ。高校在学中から写真撮影に目覚め、様々なコンテストに応募。結果、優秀賞、特選を始め多数の受賞を果たす。主にポートレートを撮影し、人と向き合い、人と共鳴した時間を切り取る事を信念としている。2023年12月、初の個展をギャラリーメジロで開催予定。写真集『無垢の報復』発売中。

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写真集「無垢の報復」

「無垢の報復」

仕様

B5サイズ
本文72ページ

製本

PUR製本

価格

3,480円 (税込)

販売ページ

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写真展「白日夢の水葬場」

花岡春菜写真展「白日夢の水葬場」

SNSに載せて、流れていっては、写真が積み重なっていくうちにデータとしても完全消失していく写真は、まるで海に葬られた命のようでした。
あの日の大切な気持ちを水葬するつもりで、過去作品の集大成として、開催します。

花岡春菜

白日夢の水葬場

会期

2023年12月16日(土)-12月17日(日)

時間

12月16日(土) 10:00-19:00
12月17日(日) 9:00-18:00

会場

Gallery Mejiro
東京都豊島区目白5-5-1
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