「shedding the shell」 横家 暉晋

昨年末、6年間住んだ部屋からの引っ越しが急遽決まった。部屋のものがなくなって行くにつれ、増築を繰り返したツーバイフォーの棚や隠れていた空間が剥き出しになり、まるで大きな骨の様で、妙に生き物との別れのような感じがする。私とこの場所との間に念のようなものを残さぬよう、何かしらの儀式的な節目が必要に思い、これをもって手向けとなればと思う。

部屋について。私にとって部屋は、皮膚の一層のような身体の一部であるイメージがある。この部屋を離れるということは、私の一欠片との別れのようであり、生き物との別れのようでもある。引越しが決まってから数日、“帰る場所”である事を強烈に意識するようになった。

人とものについて。人を撮るとき、予め思い入れのあるものや昔からずっと一緒にいるものを持参してもらうよう伝える事がある。本当に大切にされているものからは生き物のような気配を感じるし、それを見せてくれる持ち主は何とも言えない嬉しいような懐かしむような優しい顔をしたりする。私にも昔から一緒に過ごす相棒たちがいる。

この部屋に住んだ6年間、世の中は激動だった。この部屋に守られ癒され、同時に閉じ込められてもいた。その壁を破ろうと外で色々なものを拾ってはこの部屋に持ち帰ったが、今思えば“帰る場所”とは、内と外で起きる出来事の真ん中で均衡を保ち、新たな一層を取り込もうとする過程でとても重要な拠り所になって、目に見えない羊水のように周りを満たしてくれている。私にとってこの部屋はそういう場所だった。

PHOTOGRAPHER PROFILE

横家 暉晋

PHOTOGRAPHER PROFILE

横家 暉晋

1995年岐阜県生まれ。2019年都内スタジオ勤務を経て独立。
ライフワークとして、被写体と所縁ある町、部屋やアトリエなどでのポートレート撮影を行なう。
2025年1月 個展『shedding the shell』を開催、同タイトルのZINEを刊行。
TATTOOアーティストとしても活動。

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