セーデルマルムで出会った静かなカフェ賢者|コーヒールンバ平岡の北欧新婚旅行記 〜カメラとコーヒーと嫁〜 #10

PHOTOGRAPHER PROFILE

コーヒールンバ 平岡佐智男

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コーヒールンバ 平岡佐智男

松竹芸能所属のお笑いコンビ コーヒールンバとして活動。コーヒー芸人としてテレビ・ラジオに出演する傍ら、自身のカフェブランド SACHIOPIA COFFEE (サチオピアコーヒー)」をオープン。現在、猿田彦珈琲の広報として参画。また、 ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」 (バリスタ日本一を決める大会)の司会も務めるなど全身コーヒーまみれの芸人。コーヒー芸人としての出演歴 日本テレビ ヒルナンデス!」 ぐるナイ」、TBS マツコの知らない世界」、MBS 林先生の初耳学」、TBS ラジオ ジューンスー 生活は踊る」 他多数

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松竹芸能のコーヒールンバ平岡佐智男です。

普段は芸人したり、カフェやったり、コーヒー企業の広報やったりしています。2023年6月にフィンランド・スウェーデンで過ごした北欧新婚旅行の様子をフィルムカメラでお届けします。

この文と写真を全国の北欧新婚旅行をされる皆さんへ捧ぎます。

北欧新婚旅行30:美味いもんは必ずある

この日はセーデルマルム島に行った。セーデルマルムは洋服やカフェ、ギャラリーがたくさんあって流行の生まれる街という雰囲気。それでいて落ち着いているので原宿や表参道を思わせるおしゃれな街だった。

朝の10時ごろにセーデルマルム島を一望できる丘に上り、ストックホルムの街を眺めた。この日は買い物デーという感じで各々行きたいところに行くことになっていたので、セーデルマルムについたら一旦解散という流れだった。

セーデルマルム

一旦コーヒー飲みながら計画を立てようと近くにあったJohan & Nyström(ヨハン&ニューストロム)に入った。スウェーデンのスペシャルティコーヒーといえばのショップの一つで行きやすい場所にあってよかった。朝だったがかなり混み合っていた。

Johan & Nyströmの外観

店員さんは2名体制。この旅で初めてのハンドドリップしてくれる風景は新鮮だった。ドリップコーヒーを今まで飲んできたので、ちょっと変化球でいこうと思い、レモンコーヒーを注文した。日本でもレモンを使ったコーヒーは多くなってきたがスウェーデンにもあったのだ。最初に言ってしまうが、今までのレモンドリンクで一番美味かった。純粋にコーヒーとレモンがベストマッチしていたし、相乗効果でドリンクの味わいを引き上げていた。

Johan & Nyströmの店内

美味すぎるこのドリンクに感動して、店員さんにこのコーヒーはなんの豆を使っているか聞いたらコンゴの豆だと言った。珍しい国の豆を使ってるなと思い、帰り際に、「さっき聞いた例のコーヒー豆をください」というとブルンジの豆を持ってきた。確認したらブルンジだったみたいだが、ブルンジも珍しい。隠し味にこれ使ってるな、というアイデアがあったので、この味を参考にした、平岡自身のカフェ「SACHIOPOIA COFFEE」でもレモンコーヒーを販売している。このセーデルマルムのレモンコーヒーのような美味しいドリンクを目指している。

セーデルマルムのレモンコーヒー

北欧新婚旅行31:セーデルマルムの静かなカフェ賢者

お店はとても混んでいて、僕はテラス席に座っていた。突然、細身の男性が相席でいいかと言ってきた。短髪で白髪だが歳は40代後半から50代ぐらいで、痩せていて、よれたTシャツと色の薄いGパンという姿だったが、なんだか品があった。「もちろん」と答えると、斜め前に座り、カフェラテを一口飲んだかと思うと、おもむろに袋からパンを取り出して食べ始めた。パンにはチーズを1枚だけ挟んだものを家から持ってきていたのだ。持ち込みいいんだ、と思ったが、その自然な振る舞いはいい悪いを超越しているように見え、「この人ただ者ではない。」と直感が告げていた。

彼はノートに文章を書き始めた。繊細で整った文字だった。細くて背も鼻も高かった。15年後のジョコビッチみたいだなと思った。

10分ぐらい経った時にペンが止まったので「あなたは小説家ですか?」と聞いてみた。彼は少し笑いながらゆっくりと、「違う。自分の中の言葉を自分のために書いているのさ。日記みたいなものかな」と言った。小説家みたいなこと言うなと思っていたら、「お前も書くのか?」と聞かれたので、「俺はもっぱらこれ(コーヒー)とこれ(カメラ)さ」とウインクした。彼は静かに「OK」と言った。

彼はセーデルマルムの全てを知っているような気がする、そう思い「この辺でおすすめのカフェを知ってるかい?」と聞くと数秒考えて「ここが一番美味いよ」と言った。もしかするとJohan かNyströmの可能性あるな、と思ったが、「旅行できていて色々行ってみたいのさ」というと、おもむろに私のスマホの「Google マップを出せ」といい、「ここは景色がいい」「ここもよく行く」などといいながら10軒ぐらい矢継ぎ早におすすめカフェにお気に入りの印をつけて行った。やばい、止まらない、どうしようと思ったが、もしかすると、セーデルマルムカフェ協会の方かもしれないな(そんなのあるか知らないけど)とも思った。

「俺の名前はサチオ。名前はなんていうの?」と聞くと、「ロッシュ」と答えた。

この辺に住んでるとか、セーデルマルムからはあんま出ないなど世間話を少しして「ありがとうロッシュ、東京に来て困ったら俺を頼ってくれ」と言った。彼は「頼むよ」と言って、連絡先は交換せずに最後に1枚だけ撮って別れた。セーデルマルムの静かなカフェ賢人ロッシュとの大切な出会いだった。

セーデルマルムの静かなカフェ賢人ロッシュ

使用カメラ:CONTAX ARIA
レンズ:Carl Zeiss Planar 50mm F1.4、Carl Zeiss Distagon 25mm F2.8
フィルム:FUJIFILM フジカラー PREMIUM 400、フジカラー SUPERIA X-TRA400、Kodak ULTRAMAX 400

── 続編に続く。