「質感」をモノクロに落とし込む #写真家放談 新製品・モノクロ専用デジタル一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」特別企画 |小杉 歩
高校二年生でフォトグラファーへの道を志し、数多くの著名アーティスト写真を手がける若手フォトグラファー・小杉歩さん。
普段の撮影からモノクロ表現を取り入れている小杉さんに、2023年4月に発売されたばかりのモノクロ専用デジタル一眼カメラ「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」と1週間、共に過ごしてもらいました。
PHOTOGRAPHER PROFILE
PHOTOGRAPHER PROFILE
小杉 歩
大阪府出身。 1999年生まれ。
高校二年生でフォトグラファーへの道を志し、有名アーティストなどの写真を手がける。現在東京を拠点に活動中。
僕の中には、モノクロ写真を撮る事でしか浄化されない心のわだかまりがある。
モノクロ写真はそれらを浄化すると共に、時に自分を本来の自分へと引き戻してくれたり、時に強く背中を押してくれたりする。
僕は普段の作品撮りにおいて、カラーよりモノクロに仕上げることのほうが圧倒的に多い。
写真に写る被写体の服の色、背景の木々の緑や空の青、テーブルの上の食べ物や飲み物の色…。その全てが白、黒、グレーで表現されるモノクロ写真は「色」という情報量がすごく限られる。
ただ、そのように情報に制限があるおかげで、光と影の入り方、光が当たったときの被写体の質感、輪郭の美しさがより強調されるので、そこがモノクロ写真の強みだと思っている。
僕は、昔から膨らみやへこみ、物の質感などを手で確かめ、気に入った物は触り続けるという癖がある。ぷっくり、ぼこぼこ、つるつる、ふわふわ、もこもこ。指先から繊細に伝わるその感覚をより確かなものにしたいという思いが、僕にモノクロ写真を撮り続けさせているのだろう。
僕にとってモノクロ写真を撮るという事の意味を考えれば考えるほど、意味などはあまりないのだと改めて思った。ただ、代わりが効かない大切な行為であり存在であるのだ。
ふと、今まで大切にしてきた人やモノなどを思い返してみる。
すると、にわかにそれらを大切にすることに意味などはないのだ、とどこからか答えがやってきて、意味がないと大切にできないモノは本当に大切なモノではないのだ、と腹落ちした。