クリエイターが影響を受けた一枚 vol.13 #花

“編集思考”とアートディレクションを武器に、新たな価値を生み出すデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。

そこで活躍するアートディレクターやデザイナーが、影響を受けた写真家を紹介する連載企画「クリエイターが影響を受けた一枚」。

第十三回は、チーフデザイナー兼光良枝が「花」をテーマにお話します。

株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

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THEME :花

アートとして、記録として。

被写体として選ばれてきた普遍的なモチーフ。

特別ではないからこそ、

フォトグラファーが撮影した動機や表現がとても興味深く、

受け取る側にも、想像の余白を与えている気がします。

WITHERED FLOWERS BLACK /田島一成

今回紹介する写真にはいくつかシリーズがあり、『WITHERED FLOWERS BLACK』は、前作『WITHERED FLOWERS』の展示会場に届いた祝い花を持ち帰り、モチーフにされたそうです。

「今回のモノクロの撮影では入念にライティングを工夫しながら撮影したことでカラーの花の写真に比べてより写真的な表現に、つまり“花”を表現するつもりが、“写真”を表現する作品になったのかもしれない。」と田島氏は語っています。

©️田島一成

ポートレイトのような、人生を彷彿させる花の写真。

硬質なシワ、堂々とした佇まいが美しく、裸眼では見ることができない、写真だからこそ見える美しさがあると気付かされる一枚です。

Flowers/上田義彦

こちらの写真は、部屋に生けていた花と花瓶をご自宅の庭で撮影されています。この撮影を通して、「写真に対して期待する光が漆黒に佇む命を静かに照らす光から、太陽の下に出て命を見たいと願う、そんな光に変化していったきっかけになった。」と上田氏は語っています。

©️上田義彦

イキイキとした色彩がパッと目を引く写真。
光に誇張された色やフォルムが愛らしく、ピカピカと眩しい一枚です。
(写真集もフィルムの枠があしらわれたデザインが素敵です。)

Naked Rose/石内都

こちらの写真は、薔薇の香水の研究書にそえる写真として撮影されました。

「大好きだった薔薇がある日飽きてしまい、買って飾る事も見る事もなくなって久しい頃、薔薇を撮りませんか、と依頼があった。」
しかし、「香水の研究にあまり役に立たず、作品として自立してしまった。」「ここに登場する薔薇達は香り立つ薔薇と違って時間を受け止めた薔薇達だ。」
と石内氏は語っています。

©️石内都

爛漫とした薔薇の姿だけではなく、しぼみかけている様子など、 和やかな雰囲気ながらも、ドキッとするリアルを捉えた写真。 「時間を受け止めた薔薇」という言葉がとても腑に落ちる、 誰の記憶の片隅にも存在しているように感じる一枚です。

粧 Guise/小瀬村真美

オランダの画家、ヤン・ダヴィス・デ・ヘームの花の静物画を実写で再現し、その変わりゆく過程を撮影するという7連の実験的な写真作品です。
絵画では花瓶に溢れかえる花々がいけてありますが、実写にすると、花瓶には絵と同等量の花をいけることが不可能であるなどといった、発見とともに時間経過を捉えた作品で「(絵画と写実の)落差を体感する。」と小瀬村氏は語っています。

(撮影時には花瓶に入りきらない花は背面にオアシスを設置して生けているそう。)

粧 Guise giclee print / 67×47cm (each) / 2018

現実では不可能な構成をキャンバス上で、あたかも真実のように描き出す絵画と合成という技術を使わず、実写で工夫を重ねて写し出す写真。同じモチーフが異なる創造のプロセスで表現されており、心地よい錯覚がある一枚です。


花は普遍的だからこそ、素直に楽しめるモチーフだと思います。

フォトグラファーそれぞれの発見の一端を写真を通して覗かせてもらえることが、面白いと感じました。

枯れゆく花の写真をコラージュ。写真家・田島一成の個展「WITHERED FLOWERS REVERSE」が開催中!

写真家・田島一成の個展「WITHERED FLOWERS REVERSE」が、Akio Nagasawa Gallery Aoyamaにて9⽉2⽇(⼟)まで開催中です。

田島氏は、ファッション写真の第一線で活躍する写真家で、同時に枯れゆく花の写真も撮り続けており、過去2回、それぞれカラーとモノクロでの個展を開催してきました。待望の新作となる今回は、それらの写真をコラージュした新感覚の作品が並ぶ展示です。

writing

兼光良枝 / Yoshie Kanemitsu
Chief Desighner / Dynamite Brothers Syndicate

大学では工芸を専攻し、立体造形を制作。卒業後にアパレルメーカーで販売職を経験後、広告制作会社とデザイン会社でデザイナーに。「機能するデザイン」を日々心がけている。今後の目標はブックデザインを手がけること。

dスタ:https://dstudio-dbs.com/