クリエイターが影響を受けた一枚 vol.11 #点、線、面で捉える

“編集思考”とアートディレクションを武器に、新たな価値を生み出すデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。

そこで活躍するアートディレクターやデザイナーが、影響を受けた写真家を紹介する連載企画「クリエイターが影響を受けた一枚」。

第十一回は、チーフデザイナー本名静菜が「点、線、面で捉える」をテーマにお話します。

株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

URLリンクのアイコン https://d-b-s.co.jp 別のタブで開く

THEME :点、線、面で捉える

クリエイティブに関わっている人であれば知らない人はいないであろうデザインの基本的構成要素である「点、線、面」。

無意識下で認知している概念であるため、いざそれらがどのように構成されているか?どのように人間に作用するか?と聞かれると、回答に困るところがある。

デザイン業界に入って5年目。なんとなく節目だと思い、基本に返って写真を捉えてみようと思う。

点:

北岡稔章

©️北岡稔章

それは、現実世界ではそこまで感じないけれど、

写真というフレームで捉えるからこそ感じる動き。

下へ向かう点。

お互いが反発し合う点。

それぞれが四方八方へ動く点。

中野道

©️中野道

逆らって留まる。

フレームによって、日常では感じない重力を目の当たりにする。

線:

北岡稔章

©️北岡稔章

下から上へ伸びていく枝。

遠くに点在する蕾は、写真のなかで漂っている様を知覚させる。

©️北岡稔章

一方は左へ、もう一方は上へ。

花自体が能動的に、自由に動いている。

中野道

©️中野道

普段はそこまで気を止めることのない日常の風景も、フレームで捉えると見え方が異なる。

異質な存在を放つ、上へ上へ伸びているかのようなポール。

面:

北岡稔章

©️北岡稔章

花が背景に溶け込んでいるのか、

花それ自体も背景なのか。

それでも、それが花であることを知覚できているのは、

私の頭の中でイメージする花が、写真に映し出された色や姿、形が合致しているからだろうか。

コムラマイ

©️コムラマイ

全体が見えずとも、トマトであることが理解できる。

それも、太陽をサンサンと浴びて、のびのびと成長したであろうトマトを。

対象をクローズアップして面で捉えると、

口の中で皮がはじけて広がる、あのトマトの甘酸っぱさまで伝わる。

中野道

©️中野道

停止した世界で捉える、質量と重量。

たしかに水は下へ落ちていくものだけれど、

下へ落ちている水だと認識できるのは、無意識の認識か、

上から下へ変化している密度のグラデーションからか。


点、線、面の視点から写真を見るというのは、実は初めての試みだったのだが、非常に面白いことに気がついた。

私は、抽象的な「これは何だろう?」「なぜこのように切り取ったのだろう?」と考えさせられる写真や絵画が元々好きなのだが、思考の軸を平面デザインの基本的構成要素に置くことで、停止した世界から動き、重さ、力を知覚することができた。

さらに深く考えていくと、化学や哲学などの領域にまで及びそうになるのだけれど、それはまたの機会にコーヒーでも飲みながら、自身の中だけでたっぷりと問答してみたい。

writing

本名静菜 / Seina Honna
Chief Designer / Dynamite Brothers Syndicate