クリエイターが影響を受けた一枚 #透明感

編集思考とアートディレクションを武器に、企業やサービスの新たな価値を創出しているデザインコンサルティングファームDynamite Brothers Syndicate。日々、クリエイティブの世界で活躍するアートディレクターやデザイナーが影響を受けた写真家を紹介します。第三回は、アートディレクター・村松哉が「透明感」について考察します。


THEME:透明感

酒井 貴弘(ADDICT_CASE)

酒井 貴弘(ADDICT_CASE)

「気持ちがつながる」

酒井さんの写真には、被写体のストーリーが映し出されているように感じます。人物を包む青と白の世界は清々しく、通り抜ける風でさらに爽やかに演出された情景が写真に透明感を感じさせ、そこに写る人物の内面を見る人に強く感じさせているように思いました。

この写真、実は酒井さんと一緒にお仕事をするきっかけとなった1枚です。酒井さんの写真で、見る人と気持ちがより深く繋がるような表現を追求することが出来ました。

岩倉しおり

「記憶がつながる」

岩倉さんの写真には、記憶に吸い込まれていくようなノスタルジーさがあります。透明感を感じる柔らかな光は、白の階層度が多いため、ゆっくりとした時間の流れを感じます。窓で切り取られた光の形が刺激を与え、ゆったりとした時間が、写真を見る人の記憶とシンクロさせていくようです。

木邑旭宗(きむらかつひこ)

木邑旭宗

「認識がつながる」

砂浜に打ち上げられた冷蔵庫。自然と人工物の相反するものが、青い光の中で一体となり、あたかも最初からそこにあったかのような自然な美しさを感じました。対比が緊張感を生み、見る人をグッと引き付けたかと思えば、青の透明感が対比物を調和させ、見る人の認識も調和させていくような不思議な作用を感じた1枚です。

高橋誠

高橋誠

「網膜がつながる」

この作品では、被写体の透き通った透明感はもちろんのこと、そこに当たる光を分解して、映り込んだり反射する光の色を演出しているように感じられました。その分解されたものがチグハグになるのではなく、透明なフィルターをかけることで、ひとつの完成された世界観が作られています。青く透き通ったガラスと、暖色の光のコントラストがとても美しく、見る人の網膜に作品の映像を焼き付け、被写体をリアルで見たときも作品の美しさが呼び起こされるような、作品と現物をリンクさせるような力があるように感じました。

今回は「透明感」を感じる写真を取り上げ、それぞれの写真と自分がつながるという視点で考えてみました。こうしていくつかの作品で考えてみると、「透明感」があるというのは、単純に技術的な表現の美しさもさることながら、写真の力を高め、その奥のメッセージを増幅して届けているように感じられました。「透明感」が何かというのは見えていないですが、惹きつけられる何かが、確かにそこにあるように感じられます。様々な切り口で考えていくと見えてくるのかもしれません。


村松哉 / Hajime Muramatsu 

Art Director / Dynamite Brothers Syndicate

ビジネス、企業、食、ライフスタイル領域のエディトリアルデザインを基本に、WEBやCIなどコミュニケーション全般のデザインも手掛ける。受け手に想像させられるビジュアルコミュニケーションを目指す。


株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート(DBS)

東京港区にあるデザインコンサルティングファーム。
ブランディング、デザインコンサルティング、ロゴマーク開発など幅広いフィールドで事業展開中。

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