ヤングトゥリーラジオ×CURBON RADIO「vol.01 今津聡子」編集者の気持ちとカメラマンの気持ち
CURBON+で連載していた写真家・若木信吾さんと歴代アシスタントたちによる「ヤングトゥリーラジオ×CURBON RADIO」を記事化。若木さんのアシスタントを卒業後、アシスタントたちはどのようにして一人のカメラマンへと成長を遂げたのか、その仕事術は?その対談の一部をお届けします。第1回のゲストは今津聡子さん。
profile
若木信吾 Shingo Wakagi
写真家/映画監督。1971年、静岡県浜松市生まれ。ニューヨークロチェスター工科大学写真学科卒業。
雑誌・広告・音楽媒体など幅広い分野で活動中。浜松市の書店「BOOKS AND PRINTS」のオーナーでもある。映画の撮影、監督作品に「星影のワルツ」「トーテム~song for home~」「白河夜船」(原作:吉本ばなな)などがある。
Instagram:@shingowakagi
今津聡子 Satoko Imazu
フォトグラファー。大阪府生まれ。
都内スタジオ勤務を経て写真家・若木信吾氏に師事、2004年独立後、フリーランスとして主に雑誌・カタログ・広告等で旅やポートレイト撮影で活動中。
Instagram:@satoko_imz
■アシスタント卒業後、売り込みに行ったものの…
若木:アシスタント卒業後、一番最初にしたことは?
今津:旅行に行きました。ニューヨークとニューオーリンズへ。当時ニューヨークに住んでる友達が一時帰国してて、その友達について行きました。ちょうどその頃読んだ「Esquire」っていう雑誌で、ニューオーリンズ特集をやっていて、いいな、と思ってその旅にニューオーリンズもくっつけました。でも、サンクスギビングの真っ最中でお店とか全然空いてなくて、全然楽しめなかったです(笑)。ただ暑いところだなっていう印象…。
若木:夏に行ったの?
今津:いや、11月だったんですけど、暑かったですね。で、そこで作品撮りして。
若木:最初の仕事ってどうやって取りに行ったの?
今津:売り込みに行きましたね。ニューヨークで撮った写真を持って営業に行きました。
若木:(初めての営業の)感触はどうでしたか?
今津:カルチャー誌はすごく興味持ってくれましたね。やはり「若木さんのアシスタント」ということで興味持ってくださる方も多かったので、それはありがたかったです。でも女性誌となると、私のブックはあんまり合わなかったですね。
若木:ファッションのポートレートじゃないもんね。
今津:そうですね。でも、カルチャー誌の方は割とすぐお仕事をいただけましたね。
若木:じゃ、割と順調に?
今津:いや、最初売り込みに行ってから結構掛かった気がしますね。3ヶ月くらいは暇だったような気がします(笑)。
若木:その間はバイトとかしてたの?
今津:バイトしてました!そこから3年くらいはバイトしてましたね。バイトと併用しながら…。
若木:東京で暮らしながらやっていくって大変だもんね。
■一番最初の仕事につなげるまでは?
若木:一番最初にやった仕事って覚えてる?
今津:マガジンハウスの「relax」(現在は休刊)です。若木さんとお付き合いのあった、岡本仁さんを訪ねてマガジンハウスにブックを持っていったんですけど、社内でいろんな雑誌の担当の方に見ていただけたのでよかったですね。それがきっかけでrelaxの担当の方からお仕事もらいましたね。
若木:僕が若手のころも今津のころも、電話かけて、ポートフォリオを持って、営業に行って見てもらって、みたいなことをやるのが普通だったんですけど、今どうなんだろう?
今津:えっ、今は違うんですか?
若木:それがね、分かんない。だからこの先ちょっと最近のアシスタントに聞いてみようかなと。どうやって営業してんのかなって。みんなサイト作ったりとかさ。自分で出力してZINE作ったりとかしてる人多いから…。とはいえみんな電話して、直接会いに行ったりすること多いのかな…。会ってみないと、どんな人かってちょっと分かんないからね。
今津:会うってすごい大事だと思うんですよね。
若木:こういう人がこういう写真撮るんだ、みたいなのは仕事する上ですごい重要だったりするから。
■重要なのは「どれだけ誠実でいられるか」ということ
若木:フォトグラファーの仕事を続けていく上で、大切にしていることは?
今津:人と人との関係じゃないですかね。お仕事する関係の上で、 どれだけ誠実でいられるかが大事だと思います。だから、嫌なことも言うというか。写真を選ぶ時もいいことだけではなくて、あの時どうしてこっちを選んだのかとか、私はこっちがいいと思ったんですけど、とか。結構私は聞いてきたと思います。
若木:そうなんですね。それはちゃんと答えてくれるもんなの?
今津:そうですね。私はその雑誌のそこのページしかやってないけど、編集の方に聞いてみると「その前後や全体を見て、こっちがいいと思ったんだよね」っていう答えをもらうと、納得いくじゃないですか。自分は自分の写真しか見てないから。自分としては、最高にいいものをセレクトしてるつもりなんですけどね。
若木:編集者としては、雑誌の中での見え方を優先してるっていう…。
今津:なんか、コミュニケーション取るのが大事じゃないですか。なんでこの写真になったんだろうって思ったまま「この雑誌、嫌だな」って終わらせるのもありかもしれませんけど、 そうやって自分が踏み込んで質問したことをちゃんと説明してくださると、すごく誠実に対応していただけたなと思うので。
若木:次に仕事の依頼が来たら、それを加味するの?
今津:全然加味しないですね(笑)。
若木:それはそうなんだ(笑)。
今津:やっぱりそれって、セレクト段階での話じゃないですか。撮ってる時って、なんかそうじゃないと思うんです。雑誌のお仕事としてやらせてもらってるっていうだけであって、自分の作品とは別じゃないですか。自分のエゴというものは、作品の方に出せばいいのかなって思うようになるし。いいか悪いかはよくわからないですけど(笑)。
若木:仕事として続けていかなきゃいけないわけだからね。毎回無理してやってるんだったら、ちょっと考えなきゃいけないだろうけど。
今津:そうですね、無理とかはあんまりないんですけれども、「あ、そうやって雑誌って作られてるんだ」って逆に勉強になりますね。編集者の方の考えだったりとか、思惑だったりとか。そういう観点を勉強になることの方が多いので、ちゃんと思ったことは言うっていうのは、大事なのかなとは思いますね。
若木:言葉でのコミュニケーションは大事ですよね。
今津:なんか結構言わない人多いなって思ってて。
若木:それはカメラマン側?編集者側?
今津:カメラマン同士は結構言いたいこと言うじゃないですか。でも、対編集者となるとそれを結局言ってない人の方が多くって。
若木:確かに。
今津:私はそのストレスの方がしんどいから、1度言ってみるんです。もしかしたら、次仕事来ないかもしれないけれども(笑)、そこを頑張って言うっていう。
若木:でも、そこの関係性をうまくクリアしてきたから、今でも続けていられるっていうことだよね。継続して仕事ももらえてるわけだし。そこはやっぱ、やってよかったんだろうね。どんどんやりやすいようになってるよね。
今津:だといいんですけどね。嫌な印象じゃなければいいんですけど…(笑)。
今回は今津聡子さんのラジオ後編をお届け。
前編のアシスタント時代のエピソードはCURBON RADIOにて。
次回は福田喜一さんの回を紹介します。
CURBON RADIO