【作例レビュー】PENTACON SIX TL|ペンタコンのカメラ|#わたしのカメラ|vol.087
とっておきのカメラに出会うための連載「#わたしのカメラ 」。
そのカメラやレンズを通して見た世界は、どんなふうに映るのか。
また、フォトグラファーがその機材を選んだ理由とは。
今回はペンタコンのフィルムカメラ「PENTACON six TL」とその作例をご紹介します。
Photographer / 八木香保里
1974年 京都府生まれ。写真家。主に自身の生活圏内で撮影することから、実際に暮らす土地や生家のある京都市内を扱う作品を多く制作しています。
Instagram @yagi_kahori
Twitter @etcaetra
PENTACON six TLの作例
わたしがPENTACON six TLで撮る理由
10年近く前のこと。撮影に使っていたARAX60(ウクライナ製の中判フィルムカメラ)が不調になり同じマウントのカメラを探していたところ、通っている写真屋さんにPENTACON six TLが入荷。偶然の出会いでした。
手に入れた当時、ユーザーの友人から大きい、重い、コマがかぶりがち、ファインダーが暗い、視野率が低い、冬に弱い、修理してくれる人が見つからない…と数々の忠告に頭を抱えました。が、いざ使ってみると柔らかく優しい印象でありながら芯をしっかりと捉えた描写に心惹かれ、ウィークポイントと付き合う覚悟で撮影を続けました。現実からはみ出たような、かと言ってまるっきり幻想的でもない曖昧な世界観を撮りたい私とは相性が良かったようです。
他の機種と比べて故障や不調などに気をつかうことは多いですが、それゆえに良いところも駄目なところも全てひっくるめて「写真を楽しむ」ことを撮影を通して教えてもらっています。初心に帰ると思い出す、今でも大好きなカメラです。
使用機材
カメラ
:PENTACON six TL
レンズ
:Carl Zeiss Jena Biometar 2.8/80 MC
フィルム
:FUJIFILM PRO400
information
PENTACON six TLの基本情報
PENTACON six TLは、東ドイツのPentacon社によって1970年代に製造された中判フィルムカメラです。当時、東ドイツは社会主義国家であり、Pentacon社は東ドイツ政府によって国営企業として運営されていました。このカメラは、その当時の技術力とデザインを結集し、高品質なカメラとして世界中で愛用されました。しかし、1989年の東西ドイツ統一後、Pentacon社は困難な経営状況に陥り、1990年代には倒産してしまいました。それでも、このカメラは信頼性が高く、機械式の操作が可能古典的な魅力や美しさを追求する写真愛好家にとって、今でも魅力的なカメラとして珍重されています。
歴史の詰まったカメラは、背景を知るとますます愛着が湧いてくる気がしますね。
幅・高さ・奥行:156㎜×102㎜×124㎜
重量:1,200g